ブリング・ミー・ザ・ホライズン(BMTH)が、10月30日に新作EP「POST HUMAN: SURVIVAL HORROR | ポスト・ヒューマン:サバイバル・ホラー』を配信リリース。全9曲のEPには先行で配信された「パラサイト・イヴ」「オベイ feat. ヤングブラッド」「ルーデンス」のほか、BABYMETALとの念願の初コラボ曲「キングスレイヤー」を収録。
また、エヴァネッセンスのヴォーカル=エイミー・リーと、UK出身の女性ロック・デュオ=ノヴァ・ツインズも参加している。今回、バンドのフロントマンであるオリヴァー・サイクス(Vo)の独占インタビューが実現。取材はオンラインで実施された。聞き手は米LA在住のライター宮原亜矢。

COVID-19によって世界中のミュージシャンや音楽関係者がコンサートというファンとの交流の場でありライブパフォーマンスという作品に息吹を吹き込むチャンスを奪われてから半年以上が過ぎた。欧米でも徐々に制限が解除され、無観客ライブやミュージックビデオの制作なども出来るようにはなってきてはいるものの、まだまだエンターテイメントシーンにおける制約は厳しい。
そんななかでも2度のグラミー賞ノミネート、ブリット・アワードのノミネート、2019年リリースのアルバム『amo|アモ』全英1位など、キャリアのハイライトを年々更新し、評価と進化を止めないBMTHの勢いは、まるでその苦難すらバネに使うように制作を継続している。

完全リモートで作られた第1弾のシングル「パラサイト・イヴ」は6月27日に配信が開始されるや、初動としてはバンド史上最高数を記録やミュージックビデオ再生回数最高初動(9月2日現在約1100万回再生)など躍進を続けているし、9月2日に公開された新曲「オベイ with ヤングブラッド」のミュージックビデオはゲストのヤングブラッドとオリヴァーが日本のレトロな特撮系をオマージュしたロボットをそれぞれが操縦し、激闘からのまさかの和解&ダンスシーンが盛り込まれたユニークな作品で話題を集めた。

【動画】日本の特撮ロボにオマージュを捧げた「オベイ with ヤングブラッド」のミュージックビデオ

そんなシングルをコンパイルしたEP『POST HUMAN: SURVIVAL HORROR | ポスト・ヒューマン:サバイバル・ホラー』。今後『ポスト・ヒューマン』シリーズと題されたEPの複数リリースを予定しているそうで、2021年にかけてのBMTHの動きにも注目したい。

意外にも朝型だというオリヴァーに合わせて英国時間朝9時に行ったZOOMインタビューは、話題の楽曲たちに対する思慮深さや作品に込めたこだわり、アルバムではなく敢えてシングルとEPをリリースすることにした理由などについて、自宅でリラックスしながらも饒舌に語るオリーの姿が印象的だった。

コロナ禍でもポジティブでいられた理由

—コロナ禍で不便な状況下にありながら、素晴らしいEPとミュージックビデオをクリエイトしてくれてありがとうございます。
イギリスにおけるロックダウンの状況はいかがですか?
 
今はもっとリラックスしている感じだよ。外出も許可されているし、レストランもリオープンしてる。実は今度の金曜(8月28日)、ここシェフィールドに僕のレストランをリオープンするんだ。もちろんまだすべてのことが変な感じだし、出掛けるのにマスクを着用しなければならない。外出が許可されているといっても自宅にいることは推奨されているし誰にでも会えるわけじゃない。お店も様々なルールに従っている。
ヨーロッパの多くの場所と同じだね。感染者数のスパイクが緩やかに始まっていて人々がまた心配し始めてはいるけどね。

—シェフィールドであなたのレストランがオープンするんですか?

約1年以上前(2018年7月オープンの「Church: Temple of Fun」というヴィーガン・バー)からあって、クローズダウンしなければならなかったんだけど、ロックダウン後初めてオープンさせるんだ。とても楽しみだよ。

—リオープンおめでとうございます。どんなレストランなのかもう少し詳しく伺ってもいいですか?

ヴィーガン・レストラン兼バーで、沢山のアーケードゲーム機やゲームがあって、とってもクールな場所だよ。


—素晴らしいですね! ところで、ご家族ご友人など皆さんご無事ですか?

あぁ僕らは大丈夫だよ。僕の知る限りでは(COVID-19に)かかった人はいないね。友達の友達が感染したり、人々は大切な誰かを亡くしたりはしているけれども、両親や本当に近しい人達に関してそんなに悪いことは起こっていないよ。

—何度も聞かれてることかもしれませんが、パンデミックが発生したときの心境を教えてください。

恐らく他の人達が感じていたのと同様に、最初の頃はこれほどまでの事態になるとは思っていなかったしそんなに心配もしていなかった。この最中でも一緒に音楽を作ってコンサートもやってみようとトライした。
でも「何か悪いことが起きそうだ」って思いが脳裏をよぎったんだ……分からないんだけど僕って常にそういう悪い予感を察知することがあるんだよね。僕らは次の2週間で英国のリアクションに何が起こるのか見守っていたら、良くないことが起こっていると感じた。現実を拒絶したい思いがあったから最初の頃は2週間くらいでまた元の生活に戻るんだって思っていたんだけどね。

その後僕らはどうやってこの状況に適応してサヴァイブすべきかを考えなければならなかった。この状況を対処するには……そうだね、ポジティブでいることだったり、僕らが手にしているものに対して感謝することだった。多くの人が健康状態や生活において苦労を強いられている……例えば狭いアパートの中で病に苦しんでいたり大切な人を失っている人々もいるなかで、僕は自分の家という滞在できる場所があって、この状況下でも曲を書ける環境下で暮らせている。
すぐには収束しないことに対しては少し心配していたけれど、僕が手にしているものに対して感謝することでポジティブになれたよ。

パンデミック前に書かれた「パラサイト・イヴ」の制作秘話

—そんな最中に発表した「パラサイト・イヴ」には怒りや苛立ちなどの感情にあふれていますが、それと同時にポジティブなパワーも込められていて、まさにいま我々が置かれている状況にフィットしています。ただ、この曲はコロナ禍の前に書かれたものなんですよね。

この曲を送り出せたのはとてもエキサイティングなことだったよ。歌詞を書き始めたのは昨年でCOVID-19のことは含まれていないけど、それと同じような感情で僕の心の中を占めていたのは、去年は気候変動に関する動きや人々が直面した感情などについてだった。僕は人生の半分以上をヴィーガンやベジタリアンとして過ごしてきた。僕は常に生物に対して平等意識をもっているから肉を食べない。あらゆる動物虐待に関するドキュメンタリーを僕は見る必要がなければ、そこで言われていることが本当に正しいものなのかどうかを確かめることも必要ない。僕にとってはすでに分かり切ったことだから。僕は地球に対しても同様のアプローチを取っているんだ。地球に対してダメージを与えるような行動は取らなかったし、自然を敬い、愛している。でも僕が地球に対してエコフレンドリーで、消費活動や日々の生活においても心がけていたことが実は間違っていて、変化が必要だと感じたんだ。はじめは様々な情報を受け入れなければならなくて圧倒されたよ。ライフスタイルなどにも変化を必要とした。いかに世界が本当に危機に瀕しているかということに向き合わなければならなかったからね。

「ルーデンス」や「パラサイト・イヴ」は日本のスーパーバグ(抗生物質への耐性を持つ細菌)が気候変動によって耐熱性を持ってしまったことについてのストーリーからインスピレーションを受けた曲なんだ。ドクターが開発したワクチンやあらゆるものも効き目がなく人々を殺して……って、COVID-19ほどの規模は想定していなかったけれど、医師や科学が開発したワクチンが、気候変動が原因でまったく効果を発揮しないという状況、つまり科学によって開発されたものがことごとく役に立たない状況というのはとても恐ろしいことで……僕は科学者じゃないから何と説明していいのか分からないけれど。気候変動や地球温暖化によって気温が上昇して氷が溶けて、やがて地球がより力を持って僕らを苦しめることになるかもと考えた時、たぶん次の戦争は人類間のものではなく、バクテリアや真菌、環境との争いになるのではないかと思った。COVID-19が発生した時にまさにそんな懸念が現実のものとなって、オーマイゴッド! まさにこの曲で歌ったことだって驚いたよ。

でも世の中に発表することには懸念があった。この曲を人々は攻撃的だと思うかもしれないと感じたんだ。(COVID-19によって)亡くなった人もいるわけだし、みんなそのことについてあまり語りたくなかったと思う。むしろCOVID-19に関して考えることから隔離して努めて健康的にと考えているような時だったし。でも、この問題について語り合い、不安な気持ちを表現するプロセスを試みるべきだと思い始めて、僕の中でマインドセットが変わった。この曲を送り出さなければいけないってね。

オリヴァーにとっての「ヘヴィ・ミュージック」とは?

—タイトルを「パラサイト・イヴ」にした理由を聞かせてもらえますか。

ビデオゲームのタイトルが由来なんだ。古い、PlayStation1®のゲームだよ。クールな名前だなっていつも思っていたんだ。このEPに対して深い意識を持っていたわけではないんだけど、「ルーデンス」はゲーム(PlayStation4®『DEATH STRANDING(デス・ストランディング)』)にちなんで書いた曲だしね。

—今回のEPで久しぶりにあなた方らしいヘヴィネスを再び持ち込んだように感じますが、アルバム『amo|アモ』からの橋渡しとして機能しているように思いました。

テンションにおいてということでなければ間違いなくそれは同感だね。『amo|アモ』からこのEPに一部のファンを誘う役割を果たしていると思う。僕らはアルバム制作の経験を重ねてきたけれども、その都度僕らは自分たちが作りたいと思うサウンドの音楽を作ろうと心がけてきたんだ。それってみんなにとってもエキサイティングなことだよね。世間から「もうヘヴィじゃなくなったね」って不満を言われることにかつてはムカついてたけど。次の作品がヘヴィかつアグレッシブで駆り立てられるようなものであったとしても僕らは進化の過程でポップな感性を加えられるようになってうれしいんだ。だって僕らはもっともキャッチーでもっともヘヴィなバンドを目指しているからね。EP全体が「パラサイト・イヴ」のようなヘヴィな曲ばかりだと誰より僕自身が飽きちゃうんだよ。コントラストが必要だし違ったテイストが欲しい。

僕にとってヘヴィ・ミュージックっていうのはただ単にヘヴィなだけじゃなくヘヴィに何かが合わさったもの。世間の人がEPを聴いて「パラサイト・イヴ」のようなブレイクダウンが入っている曲ばかりが入っていたとしたら興味を失っちゃうよね。ローラーコースターのようなものだよ。アップとダウンが必要だ。もし回転ばかりが続いたらグッタリしちゃうし興奮しなくなる。だから僕らの作品の中には常にポップな曲が入っている。僕にとってこの作品は全体的にアグレッシブでかつとても深い感情表現、『amo|アモ』よりもダークな感情が詰まっている。なぜならそれが特にダークな心境にある沢山の若い人達を助けることに繋がると思うから。あくまで僕自身が感じていることだけど、『amo|アモ』にはもう少しドライな感情やより健全な感情が詰まっていたのに対して、この作品には頭の中にある思い、平常心を保とう努めているけれども気が狂いそうになるとか、恐れや怒りなどについて歌っているものが多いと思う。

ヤングブラッドとの共演について

—そして「オベイ with ヤングブラッド」ですが、ヤングブラッドとの共演にファンからも大きな期待が寄せられましたね。共演に至る経緯を教えてください。

僕らはずっと連絡を取り合っていたんだ。僕は彼のヴァイブのすべてが大好きで、彼の自己表現が大好き。彼は100%ニュータイプのロックスターさ。世界が求めていた、あるべきロックスターの具現化だし、彼は自分らしくあることを恐れない。音楽スタイルが類似している訳ではないけどコネクトしたいと思っていて、一度会ってみたいなって思っていたんだ。ある曲を書いていた時にジョーダン(・フィッシュ/Key)と、彼をこの曲に迎えたらクールなんじゃないかって最初はただのアイデア程度で話していて、連絡してみようってことになり、2日間制作に費やした程度で未完の状態だったけど彼に「ちょっとチェックしてみて。で、気に入ったら連絡して」って音源を送ったらそれこそ5秒位で「今すぐチェックする!」って返事が来て。まだ完成してないって言ったのにも関わらず彼はその日の内にスタジオへ行ってボーカルトラックを録音して返してくれた。クレイジーだよね。70%くらいしか曲がコンプリートしていなかったのにだよ? でも素晴らしかったのは彼のエネルギーがみなぎっていて、僕らの持つエネルギーと融合できたのは本当に良かったよ。

—この曲のミュージックビデオも制作したそうですね(取材時は公開前)。

とても良い仕上がりだよ。このビデオのコンセプトは曲に込められたメッセージとは異なるものになるんだよね。曲自体は支配されることや洗脳されることだったり受動的に今起こっていることを受け止めている感じなんだけど、ビデオはそういったものをトランジションしたものではなくて、ヤングブラッドと一緒に撮影することに対するエキサイトメントを投影したもので、僕らがコントロールするロボット……実は日本のカルチャーからかなりインスパイアされたものなんだ、ウルトラマンやゴジラとかのね。ロボットに入った僕らが街中を動き回って、最後には一緒にダンスするシーンもあってっていう純粋に楽しいものにしたんだ。僕の頭の中でこのアイデアが浮かんだんだ。「パラサイト・イヴ」の後だからなおのことシリアスじゃなくて、すごくいいんじゃないかって。

【動画】日本の特撮ロボにオマージュを捧げた「オベイ with ヤングブラッド」のミュージックビデオ

—伺ったところによるとこのEPは来年にかけて同じタイトル 『ポスト・ヒューマン』で複数リリースされる予定だそうですね。

(すべての完成までには)恐らく長い時間を必要とすると思う。今作でも時間がかかったから。でも今はコンサートも出来ないから曲を書く時間があるし、曲作りは好きだから大丈夫。それぞれのEPは異なるものになる予定だよ。今回はとてもヘヴィだけど次は全く異なるサウンドスケープになるだろうし。どうなるかは僕ら自身でも分からないけれどもとてもエキサイティングなチャレンジになると思う。4枚の作品にそれぞれ異なるサウンドを詰めるんだけど、ひとつの共通したアイデア=『ポスト・ヒューマン』で繋がるっていう。今作は怒りやフラストレーションといったその時の空気を詰め込んでいたけれども、次のEPではどんな風に自分自身をケアして互いに思いやっていけるかといった感情のリフレクションを伝えるものになるかもしれないし、アグレッシブな音楽のリフレクションだったりするかもしれない。その次の作品はもっとディープでエモーショナルなものになるかもしれないね。

—つまりしばらくはアルバムを作る予定はないということでしょうか?

アルバムを作るための15曲が出来るまでに1年とか2年かけたくないんだ。それよりも少ない楽曲に対してしっかりした時間をかけて間違いのないように確認した上でリリースしたい。そうして出来た曲を、即時にファンに届けることが出来るスタイルを気に入っているんだ。そのほうが今の消費スタイルに合っていると思うし。NETFLIXとかと同じだよ。TVドラマのシーズン全部のエピソードを一度にアップするからすぐ見ることができるよね。で、次の楽しみに繋がる。だから曲を早いタームでリリースして、人々を次の作品への興味へ繋ぐことが出来るんだ。かつてはアルバムをリリースしてそこから4~5曲のミュージックビデオを制作して数年保たせていたけれども、そのスタイルはもう成立しないよね。人々は曲単位で聴いていてアルバムを買う必要がなくなっているし、フレッシュなものを求めている。多くの人を惹き付け続けるためにはこれまでのルールを破って、特にロックミュージック、音楽業界ですら今も誰もが倣っている一定の方法では、僕には有効とは思えない。僕は変化に対して常にオープンなんだ。

【画像】BABYMETAL、ブリング・ミー・ザ・ホライズンと繰り広げた「奇跡の共演」(写真9点)

BABYMETALとのコラボも実現、ブリング・ミー・ザ・ホライズンが語る「進化するヘヴィ・ミュージック」


<INFORMATION>

BABYMETALとのコラボも実現、ブリング・ミー・ザ・ホライズンが語る「進化するヘヴィ・ミュージック」


EP
「POST HUMAN: SURVIVAL HORROR | ポスト・ヒューマン:サバイバル・ホラー』
Bring Me The Horizon | ブリング・ミー・ザ・ホライズン
ソニーミュージック・インターナショナル

●配信
2020年10月30日配信リリース
iTunes予約注文リンク:
https://SonyMusicJapan.lnk.to/BMTH_PostHumanRS

●CD
輸入盤:2021年1月22日(金)発売予定
国内盤:2021年1月27日(水)発売予定
国内盤詳細は後日発表予定

収録内容:
 Dear Diary | ディア・ダイアリー
 Parasite Eve | パラサイト・イヴ
 Teardrops | ティアードロップス
 Obey with YUNGBLUD | オベイ with ヤングブラッド
 Itch For The Cure (When Will We Be Free?) | イッチ・フォー・ザ・キュアー(ホウェン・ウィル・ウィー・ビー・フリー?)
 Kingslayer ft. BABYMETAL | キングスレイヤー feat. BABYMETAL
 1x1 ft. Nova Twins | 1 x 1 feat. ノヴァ・ツインズ
 Ludens | ルーデンス
 One Day The Only Butterflies Left Will Be In Your Chest As You March Towards Your Death ft. Amy Lee | ワン・デイ・ジ・オンリー・バタフライズ・レフト・ウィル・ビー・イン・ユア・チェスト・アズ・ユー・マーチ・トワーズ・ユア・デス feat. エイミー・リー

【関連サイト】
●海外オフィシャル・サイト:
http://www.bmthofficial.com   
●日本オフィシャル・サイト: 
http://www.sonymusic.co.jp/artist/bringmethehorizon