HUMAN MADE®️ デザイナーでKENZOのアーティスティック ディレクターも務めるNIGO®️ を中心に、RIP SLYMEのILMARI、RYO-Z、m-floのVERBAL、WISEからなるTERIYAKI BOYZⓇが、LAでまさかの復活。アメリカを拠点に世界的に人気の88risingが主催するフェス『The 2022 Head in the Clouds Festival』で約10年ぶりのライブを行った。
2006年にリリースした「TOKYO DRIFT」が全世界で数10億回再生とも言われるヒットを続け、年々高まる注目のなか、豪華ラッパーが参加したNIGOⓇのアルバム『I Know NIGO!』にファレル・ウィリアムズがプロデュースの新曲「Morë Tonight」収録され活動再開が注目されていたが、その復活を見届けるためにLAへと飛んだ。

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8月21日フェス2日目。セカンドステージのトリとして登場。Daft Punkが手掛けた「HeartBreaker」からスタートし、観衆が待ち望んでいた「TOKYO DRIFT」を3曲目に早くもドロップ、前半のヤマを作る。中盤をドープなトラックとラップスキルでヒップホップユニットとしての力をアメリカのオーディエンスに伝えることに成功した。終盤、佳境を告げるRYO-ZのコミカルなMCが会場を爆笑の渦へ、何でもありのクレイジーなダンス・パーティ状態へ。
ラストは、DJシャドウがトラックメイクを手掛け、TERIYAKI BOYZⓇ結成のきっかけともなったハードなラップ・チューン「KAMIKAZE 108」で締めくくった。約35分のセットを見事な盛り上がりで終えた後、メインステージのフィナーレへ移動。2日目のオールスターがリレーする大団円の中、88risingの代表的なラッパー、リッチ・ブライアンと「TOKYO DRIFT」を披露、フェスのクライマックスを飾り、興奮の中、テリヤキ復活の1日は終わった。

TERIYAKI BOYZⓇが語る、復活ライブの舞台裏、世界の「TERIYAKI」ブランド

Photo by ALIVECOVERAGE

約10年ぶりのライブ、しかも海外、初のLA、注目の88risingのフェスという彼ららしい、グローバルで規格外の復活ライブを終えたばかりの”伝説の4人”にインタビューを行った。
 
ー『HEAD IN THE CLOUDS 2022』お疲れ様でした。  最初に皆さんから感想をお願いします。


RYO-Z:僕はもう単純に楽しかったですね。僕、初ロスでしたし、いろいろこう、どうなんだろう?みたいなワクワクもあり。まあ、終わってみたらただ楽しかったなあっていうような。

WISE:出演直前、舞台袖からずっと覗いてたんですが、全然お客さんいなくて。逆に楽しもう!位の感じで出たんですけど、出た瞬間から本当にみるみる人が溢れだして。で、とにかく客の反応のすごさに圧倒されましたね。
こんなに盛り上がってくれるんだみたいな。最高すぎるの一言ですね、楽しかった。

ILMARI:「TOKYO DRIFT」は知ってくれてることは何となく分かってはいたんですけど、最後メインステージで出た時もすごい反応で。みんな知ってくれてるんだなって言うのはすごく分かりました。コロナ禍にYouTubeだったりであのトラックを使ってみんながラップしてくれたのも多分さらに広がった要因。若い人にまで広がったんだなって。
それも肌で感じた。

VERBAL:お客さんのエネルギーがすごい。投げると、もう十倍ぐらいで返ってきたような感じがして、それに乗せられて僕たちもやっぱり燃えました。一方で客観的にも見てて。 あ、この人、このポイントでモテるんだとか(笑)。WISEがラップする前なのに、みんな「来たぞ来たぞ!」みたいな感じとか、イルマリ君が何かした時のお客さんの反応とか。
で、RYO-ZくんのMCでドカーンと来たのとか。あくまでもその想定で行ったんですけど、それがなんか、ややヒット率高かった。策を打ってリハーサルして挑んで。ライブしながら自分でTERIYAKI BOYZ®のライブ見てる感じも楽しかったですね。  

10年ぶりのステージ

ー今回のステージに向けて、セットリストや演出、MCなど、どんな狙いで準備されていましたか?

 VERBAL:昔もリハーサルはしてたけど、そんなにはしてなかった。今回は久しぶりだし、ちょっと念入りに行こうってことで、東京で2回、こっちに来て1回スタジオでやって。
当日も、結構早めに会場入りして。午前に会場来て夜7時半本番なのかとか言いながら、サウンドチェックレベルですけど現地でもリハやって。その助走期間はやっぱり凄い良かったなあと思いました。

RYO-Z:それこそ10年前とか、こういうことやってた?って思う感じなんだけど。セットリストを決めるためだけに集まって、本当なら、その日にさあどうする、何する、どうやって作るっていうふうにフィジカル動かしながらやるんだけど。そうじゃなくて、ただ黙々とそのセットリストを作るためだけの日があったんです。俺は本当にみんなのこと、真面目だなあって(笑)でも、あれやってよかった。あれがよかった。

ILMARI:昔のトラックがどうなっているかの確認もあったからね。10年経ってたからどんなトラックあるっけ?みたいな。

RYO-Z:そうね、そうそう、忘れてるからね。 今回のセットでは複雑にカットインしたりする曲とかもあったんで。ロスについてからスタジオでしっかりリハ出来て良かったと思いました。リハーサルできなかったら、もうちょっとボロボロってなる。こっちでNOAHのLA店のスタジオに入ってですね、、

ーNOAHですか?

WISE:ないない(笑)。

RYO-Z:無いですね(笑)。LAでみんなでセッション一回できたんで、完全に確認取れた上で当日いけた。問題ねえって思えて。で、すごく楽しい、最高なショウになった。個人的には、俺はもうかみまくってたんで(笑)。雰囲気で流しましたね。ちょっと舞い上がってました(笑) 。

VERBAL:セットづくりの面で、これはさすがだなと思ったのが、イルマリくんの直感だっだと思うんですけど、「TOKYO DRIFT」を早いタイミングでやったんです(3曲目)。僕的には美味しいの最後もってくるでしょうって思ってたんですけど、いや、ちょっと早めに行っとかないとじゃない?て。スタジオでやっていくうちに、あ、これだなってなってた。本番で、それが当たって、もう後半何でもありになった。直感素晴らしいなあと思って。

WISE:あそこで最大級に掴んだよね。

ー新曲「Morë Tonight」のライブ初披露はいかがでしたか?

RYO-Z:セットリスト上、「Morë Tonight」と「超LARGE」があるあのパートが一番のいわゆるドープなパートになっていたんだけど、まあ多分アメリカの方たちは全然ついてこれる空気とは思ったんだけど。あそこでクイックに「超LARGE」がカットインしてくるのは、セットリスト上すごく気持ちのいいところだなと思ってました。なんか聞き飽きさせない感じに。

ーセット後半のRYO-ZさんのMCもすごいウケましたね。「テリヤキボーイズ イズ ジャパニーズバックストリートボーイズ」「テリヤキボーイズ イズ ジャパニーズBTS」。

RYO-Z:いいパスがくるんですよ、VERBALさんから。スタジオで冗談で言ってて。それやったらいいねってなり、実際やったらうまくいった。

ILMARI:そう。あのMCが更につかんだから、その後も何やってもウケた。

ー皆さんのダンスに合わせて。お客さんもすごく踊ってました。

ILMARI:昼間、新しい学校のリーダーズのステージ見てて。すげえ、キレキレのダンスしてる。俺らとかダンス踊って大丈夫かな(笑)って不安になったけど。いや、俺らは俺らの表現で多分大丈夫と思ってはいたんだけど。。

ーMCでドッてなって、何やってもいいタイム入りましたよね?

RYO-Z:この人たち変なことする人なんだね、てわかったんじゃないですか?(笑) 。でも実は俺は左膝がすげー痛かった(笑)。でもそれはみんなに何も言わなかった。痛みを伏せて挑んだダンス。

ーかっこいい(笑) 。

RYO-Z:一個だけ、心残りがあって(笑)。これはちょっと早すぎるっていうふうに思って、みんなで出し惜しんでやめたセクシーな演出があったんですよ。(笑)

ーセクシーな演出?

RYO-Z:言えないんですけど。スタジオでは僕らみんな凄い面白かったんだけど、それは、ちょっと今回やめておこうと。 まだ、ちょっと早い、となった。

VERBAL:10年先ぐらい早い(笑)。

ILMARI:やったら絶対面白かったと思ってるけどね(笑)。いろんな形で残っちゃうしね。

VERBAL:すでに完璧なセットメニューがあるのに、最後に、どんぶりが来るみたいな、お腹いっぱい過ぎる。次まで取っておこうと。  

ILMARI:あれは、やらなくてよかった(笑)  

ーめっちゃ気になります(笑)

全員:(笑) 。

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Photo by WAKITA

「TOKYO DRIFT」秘話

ー「TOKYO DRIFT」もともとこの曲ができた当時の経緯やエピソードを話してもらっていいですか?
 
WISE:最初は『ワイルドスピード』(Fast and Furious)の主題歌にTERIYAKI BOYZ ®どう?っていうのをファレルがNIGO®さんに聞いたところから。NIGO®さんからどうですか?っておりてきたのが確か最初です。
 
ILMARI:NIGO®さんから聞いたのが、ファレルがあのトラック作っててTERIYAKIのラップ入れようって急に思いついたらしいような。

ーあの映画については当時ご存知でした?

RYO-Z:『ワイルドスピード』自体は知ってました。
 
WISE:リリック作る前は何も観てない。こういうスタイルの映画なんだってのは知ってたけど、それを日本で撮るっていう情報だけで、何にも映像とかは見てなかったですね。
 
RYO-Z:もしトレーラーとか見てたりしたら、もっと走り屋の曲みたいになってたと思うんです。でも全然関係ないこと言ってるから(笑)。東京の遊園地感じゃないけど、東京面白いよみたいな感じになったのがよかった。
 
ILMARI:結構急に決まって急に締め切りが来たんだよね。2日か3日とか、ほんとそういう感じで。
 
RYO-Z:スタジオでマットさん(ディレクター?)に、3日間で返せれば参加できるけど、返せるよなって言われて。あ、がんばります、みたいな感じだったのを覚えてる。
 
ILMARI:いきなりきて、いきなりな締め切りだったんで。みんなでスタジオでああでもない、こうでもないって感じだった。エイミーに喋ってもらうところとか、「私はあなたの車素敵」とか、もしかしたらヒップホップ好き、古くから知ってる人とか「私はトキオ好き」とかフレーズ知ってるかな?みたいなので入れたんだよね。
 
RYO-Z:逆輸入的なフレーズだよね。Funky Four Plus Oneのアルバムの最後の方に入ってた。それを僕らのヒップホップの先輩であるキミドリさんが逆輸入してやったりして、いいよね、この感じ。俺たちに合うよねって。最初のころに使いだした。
 
WISE:エイミーは元々、風の人という、うちらのクルーにいた女の子で。今カナダ住んでるんですけど。キャラが良いから、ちょっとココで喋ってよって。しかもすごくアジア人っぽくて。今だと良くないのかもしれないですけど。でもすげーキャラになりきって言ってくれて、それがバチハマりしたっていう感じ。
 
ILMARI:NIGO®さんがなんでこの車持っているか、そんなことは気にしなくていい、Lets GOみたいな感じでしょ?ひどいなあと思うけど、 そんぐらいやっぱ、この四人が集まると、たぶん普通にストレートにただかっこいいことだけっていうんじゃなく、なんかちょっと違う角度で表現したいっていうね、うん。普段それぞれ全然違うノリでやってたりするかもしれないですけど、でも、なんか4人でスタジオ入ると。このヴァイブスになるから。

ー「TOKYO DRIFT」が、世界で有名な曲になっていく、この10年~15年ぐらいをどういう風に感じていました? Spotifyの「世界で再生された日本の曲ランキング」を毎年TOP10に入り続けてます。

VERBAL:サントラに乗る曲の凄くいい例というか。タイアップって、そのためにやるじゃないですか。たまたまいい例に我々も乗せて頂いたって思ってます。 これよく冗談で言う話なんですけど。ワイルドスピードのサントラに、友人のFAR EAST MOVEMENTも参加してたんですね。彼らが「Like a G6」で全米1位になる前なんですけど。メンバーと仲いいから今だから言えるけど、当時TERIYAKI BOYZ ®と間違えられてブッキングされてから「あれ? 今日TOKYO DRIFTやらないの?」。あ、そうなんだよ、ごめんって言いながら、ごまかしながら営業めちゃめちゃもらってた、っていう話をされるぐらいアメリカとかオーストラリアとかではすごい流行ってたという(笑)。そこから、アジアに流れて、日本に来た頃にはちょっと若干時差あったかな。

WISE:当時、YouTubeが始まったぐらいで、いろんな人が真似してアップしてくれた。うちらの言葉に口パクやってる4人のロシア人とかが歌ってる動画を見て、カニエ・ウェストとやった「I still love H.E.R feat.KANYE WEST」のMVであれを逆真似したんだよね。

ILMARI:今のTikTokみたいなことYouTube使ってやってた感じ?

WISE:そうそう。うわー。すげーって。じゃ、これを逆に今度「I still love H.E.R」でうちらが真似しようつってビデオにした。

ILMARI:日本ではそんなヒットしたっていう感覚なくて。東京の友達とかに言われたこと一回もない(笑)。たまたま旅行でハワイ行ったときに、ちょっとお店出て車待ってたりしてると、そこのセキュリティが持ってる携帯の着メロみたいなのが「TOKYO DRIFT」だったり。こういうところで浸透してるんだなあって思った。

RYO-Z:バーのカウンターで一緒になった日本語もほとんどしゃべれないみたいな観光客に、実は俺TERIYAKI BOYZ®なんだ、と言ったけど全然信じてもらえない(笑)。「またまた~」みたいに(笑)

ILMARI:あとね5、6年前マドンナが来日して、さいたまスーパーアリーナ行ったら1時間以上出てこなかったときがあったんだけど。前座DJみたいのがいて、多分アメリカのDJだったんですけど「これだろうお前ら。これだろー」ってノリで「TOKYO DRIFT」かけてんだけど。みんな全然わかってなかった(笑)

WISE:俺はちょうど去年の8月にコロナかかって家から10日ぐらいに出れなかったんですよ。その時ちょうどオリンピックやってて、めちゃくちゃ盛り上がって一人で見てたんですよ。NHKでイタリアの新体操の女子選手がめちゃくちゃくるくる回ってる流れの中にいきなりTERIYAKI BOYZ®がかかって。一人で見てたんでウワーっとなってすぐ携帯で撮ったんですけど、NHKのアナウンサーの女の人が「あ、なんか日本語の曲を使われてますね。」って、全然認知度がないっていう(笑)

ILMARI:海外との落差があるよね。母親フィンランド人だからヨーロッパとか行ったりするじゃないですか。みんな知ってるんですよ。

RYO-Z:シンクロのオーストラリアチームも使ってたね。

ーみんな東京でのオリンピックだから、って思って日本の曲探して使ってたんでしょうね。

ILMARI:リリースしてから今まで結構時間あるじゃないですか? そんな中、そのコロナの時にTOKYO DRIFT STYLEが流行って。リッチ・ブライアンがやってくれたり、重盛さと美さんのアレンジで日本の人も知ってくれた気がする。TERIYAKI BOYZ®の曲だと思ってない人もいっぱいいます。重盛さんの曲だと思っている人が絶対いると思う(笑) 。

ー私が見た今回のHEAD IN THE CLOUDSでは、メインステージでDabinやリッチ・ブライアンも自分のセットの中で「TOKYO DRIFT」やってました。

TERIYAKI BOYZⓇが語る、復活ライブの舞台裏、世界の「TERIYAKI」ブランド

左から、RYO-Z、ILMARI、WISE、VERBAL(Photo by NAGARE)

新曲制作、ファレルとのやり取り

ー最新曲の「Morë Tonight」(「モレトゥナイト」NIGO®のアルバム『I know NIGO!』収録)について話してもらえますか?

ILMARI:レコーディングする一年ぐらい前からそういう話あったんです。NIGO®さんから、またTERIYAKIで曲やりませんか?みたいな連絡が来てて。で、そこから、春になっても、夏になっても音沙汰なしだったから、なくなったのかな、ないかもしれないって。こっちからなんかNIGO®さんどうやるんですか?みたいに聞くのもあれだから、まあいいかと思ってたら、急にトラックが送られてきた(笑)。

VERBAL:朝6時に突然ファレル(・ウィリアムズ)から電話かかってきて。例の曲だけど、これからマイクってエンジニアがセッションファイル送るからよろしく、と。え、まだ生きてんだこの話って(笑)。僕も「どういうこと?」っていうのもなんなんで。「あ、うん、わかった、みんなとちょっと話してみる」と。ちなみに、どんな感じにしようと思ってるの?聞いたら、ガイドあるからそれに日本語のリリックつけてほしい、それで交互にやりとりして……という話をした。で、その電話切った2分後ぐらいにマイクからセッションデータがiMessageで届いてるみたいな(笑) 。

ILMARI:それもまた締め切りが……みたいな感じで(笑)

VERBAL:「TOKYO DRIFT」の時の「3日」ってのに近くて。本当になんかね……。

RYO-Z:フラッシュバック。「TOKYO DRIFT」と一緒(笑)  

VERBAL:そこからNIGO®さんに投げるじゃないですか。「じゃあそれでスティーブン・ビクターと話しといて」って。で、ビクターと話したら、もう納期が迫っていると。そこから皆さんお忙しいところ集まって。この歳で2日間連続徹夜でスタジオ(笑)。ちょっと新鮮でした。

RYO-Z:一番最初にまあ、とにかくそのトラックが届いて、緊急に対応していかないとだし、まあやるやらないも含めてのリモートミーティング。4人でみんな多分自宅だったと思うんですけど。その4人のおじさんの絵面がね。「盛れてねえ」って(笑)。

ーあー! それで「盛れてない」→「Morë Tonight」

ILMARI:はい。だって家でさ、みんな寝起きみたいな感じとかね。確かに盛れてなかった(笑) 。

ー最高です。

ILMARI:10年以上経ってるから、年齢もきてるし、なんか生活のなんかリズムもみんなと違うじゃないですか。夜、徹夜まじきつかった(笑)。まあ、RYO-Zくんはすぐ帰っちゃったけども(笑)。飲みに行っちゃうけど。それはRYO-Zくんだな。とわかってるから(笑) 。

RYO-Z:俺の仕事、今日もう終わりだな、と思ったからさ(笑) 。

ーさすがです(笑) 。

WISE:ちなみに、もう一個付け足すと、朝7時締め切りって言われてて、3~4時ぐらいに徐々にRecが終わっていくんですけど、俺ずっとできなくて……。なんとかもうあと何時間か待ってくださいみたいな感じで、朝たぶん9時ぐらいにVERBALのとこで、レコーディングを終わらせて。聴いて、超いいじゃん。TERIYAKIっぽいなって送ったらファレルから全ダメ出しで。あの乗せたメロディ通りにはめてくれつって。また振り出しに戻る。

RYO-Z:ラップのフロウみたいなのが乗っかってたから、ここにラップしろという意味かと思ったら、その通りラップしろ、だった。やり直しじゃんみたいな。

VERBAL:ファレルにしても珍しくて、以前そんな細かい指示そこまでなかった。ある程度やって骨子があればいいよって感じだったんだけど、俺メロディなぞるように言っただろうって言われて。「え!」って(笑) 。

RYO-Z:そんな細かいの??って。うそー、ここにラップしておけってだけじゃないんだ。また、このテイクが結構よくできてたんだよね。これがね。

WISE:TERIYAKIっぽくてよかったなと思ったんだけどね。

RYO-Z:俺ももうその時点で。あーできたできたと思って。 そう。NIGO®さんも最初のバージョンを聞いてめちゃくちゃいいですねみたいな感じで返ってきてたから。終わった~って感じになってたよね。

VERBAL:ファレルは我々のラップに対して、ビジョンがあったんだよね。 NIGO®さんは日本語が分かるから面白いじゃんって思ったんですけど、ファレルはたぶん音感で、もっとこの、こういうグルーヴとかメロディアスな感じにっていう、そっちだろうね、そうそう。

WISE:うん、そうだよね、うん。

ILAMRI:でもやっぱこっちに来て、さっきの「TOKYO DRIFT」がこっちで流行ってるっていう話じゃないけど。アメリカいるとああいうトラックが受け入れられるんだなと。ずっと単調な感じがしちゃうんだけど。 「超LARGE」とかすごい重たい曲じゃないですか。ああいうのもなんかこっちだと、まあオッケーっていうさあ、なんかライブやっててもそんなんだから。ファレルの感覚的にはもうずっとああいう単調な感じだけど、そのグルーヴで行けっていうのは理解できる。こっち来るととくに。

ーああ、なるほど。

ILMARI:今回「Morë Tonight」のイントロの「Oh Baby あんたなの」っていうのをファレルにやってほしいって思ってたけど、それは時間的に叶わなかったんだよね。いままでの「 Zock On! Feat. Pharrell And Busta Rhymes 」「WORK THAT feat. PHARREL & CHRIS BROWN」とかでもファレルがサビを歌ってくれてたから。”ゾッコン”って言葉、すごく日本でも死語だったじゃないですか。あとファレルに「ギガントギガント」とか言ってもらって。あの当時はね、しょこたんが言ってた。あれをファレルが言ってるっていう遊びで。でも、あのカニエにも「I still love H.E.R ホントEラップ」って言ってもらったり……、普通に考えて一般に「ホントEラップ」とか言ってたらめちゃくちゃダサい。(笑)

VERBAL:音楽好きはCommonのあの「I used to love H.E.R」の「HER」= Hip-Hop in its Essence is Real の略から来てるのわかるから、うちらは「ホントEラップ」にして、なんかちょっとふざけてるけど、Commonへのオマージュってことで、深いと言えば深い、な感じじゃないですか。

RYO-Z:まあ、ヒップホップ好きな人にとって、ああ、なるほどねのところがあるかもしれない。とはいえ「ホントEラップ」にはしねえだろうって(笑) 。

ILMARI:そういうバランス、さっきのライブの話と一緒で。なんか俺等すげえかっこいいだろうみたいなのを最初から最後までやるのはちょっとなんか……なので、キャラクターをサビとかにも入れてるのは、今回の「Morë Tonight」も同じ手法だね。
 
RYO-Z:うん。モテてモテてしょうがねえみたいな感じじゃないもんね。いきなりデビューから「HeartBreaker」。いきなり振られてるし(笑)

ILMARI:こういうの日本人ぽさなんなんだろうね、なんかアジア人的な。

RYO-Z:奥ゆかしさ。

TERIYAKI BOYZⓇが語る、復活ライブの舞台裏、世界の「TERIYAKI」ブランド

Photo by NAGARE

88risingへの共感

ー88risingやHEAD INTHE CLOUDSにも共感したところはありますか? リッチ・ブライアンだったり、ほかのアーティスト、それこそショーン(・ミヤシロ/88risingの創設者)だったり、スタッフから受けた印象お聞かせください。

RYO-Z :俺、共演したリッチ・プライアンも最近知ったぐらい全然勉強できてなくて、YouTube見て聴いたりするようになったんですけど、ラップうめえなあ、スゲーいいなー、スキル高いな。それを一緒のトラックでセッションするとすごい楽しい。それから、こういうのがかっこいいよねっていう感性としてもなんか繋がってるように感じる。だからこそ彼も「TOKYO DRIFT」かましたんだろうし。それがなんか良かったなって。で、そんな彼と時を超えて、HEAD IN THE CLOUDSのメインのフィナーレで一緒になったっていう。

ーすばらしいですね。

RYO-Z:ちょっと悔やまれるのはたった8小節の俺のラップの半分ぐらい間違いっていう、それだけ(笑) 。

ILMARI:会場でTERIYAKIのTシャツ途中から着てたんですけど、ちょっとトイレ行ったりすると、いろんな人に英語で話しかけられて。なんかあれ着てんの嫌だなって(笑)。TERIYAKI BOYZ?みたいな感じで言ってくれるのは嬉しい。ただ、トイレ行きづらい。(笑)。プルコギとか取り行きたいなあとか思って(笑) 。88って、アジアの人たちが中心じゃないですか? なんかそこもちょっと仲間感出る。多分普通の音楽フェスだったら、あんまり人種のこというのもあれだけど、歩いててももっといろんな人いそうだけど、今回違うところに来た感じがしないっていうか……アメリカ人かもしれないけど、アジア系の人たちの仲間感はすごいなあと。ショーンさんとか、そういう人たちがずっとそういうコミュニティを作ってたんですよね。こっちはね、それがすごいなと思って。うん。たぶん「TOKYO DRIFT」出した頃にはこういう88とかみたいなものはなかった。

VERBAL:あのリッチ・ブライアンももともとは11、12歳ぐらいの時YouTubeとかVineで、なんかコメディみたいなチャンネルやってて、なんか面白いじゃんと世の中的になっていて。その当時ショーン・ミヤシロも確かレーベルのA&R辞めて、88Rising始めた時期で、そんな時にブライアンにラップしてみたら? って言ったらしい。Rich Chigga(YouTube時代のリッチ・ブライアンの芸名)は、もう完全にちょっとスレスレな感じの名前で。ギャグで超短い短パンになんかウエストポーチしてダサい格好でラップしてて。でもそれがドカーンといって、しかもラップがまあ、かっこいいじゃんと流行っちゃって。じゃあもっとラップしようかってなっていくうちに、88risingてミュージックビデオ制作する会社みたいなのが、一人歩きして噂が広まって。当時Joji君も元々お笑いみたいなのをYouTubeにあげて”ピンクガイ”っていう下ネタばっかり言うキャラクターとかやってたんだよね。彼は大阪のインターナショナルスクール行ってて。めちゃめちゃふざけてるインターノリのギャグ性がある。

ILMARI:TERIYAKIと重なるしょうもないセンス

VERBAL:ラップの曲の内容もやっぱり人種によって文脈があって、黒人文化、アフリカ系アメリカ人の人たちはやっぱりその歴史的に強くないと、という側面から見せるのに対して、アジア系アメリカ人はちょっと一回恐縮するようなところがあるよね。それがリリックにも出てて、Joji君のヒット曲でも、いや、俺よりあいつといる方がいいよ、お似合いだよ、とか歌ってて、ウチらに近い。

ILAMRI:似てるね! うちらもいきなり「HeartBreaker」で出たのと同じようだね。
 
VERBAL:そういうところがあるから、ショーンも、その全体的な空気感としてシンパシーを感じてくれた部分はあるのかもしれないです。
 
ーすごいわかります。宇多田さんがアジア系のR&Bのレジェンドだったように、TERIYAKIは、88が今やってるラップをすでにやっている先輩みたいな、ニュアンスもあるのかなって思いました。
 
ILMARI:腑に落ちる。もうなんかすごいあの居心地の良さは? たぶん、そういうセンスっていうかなんかだろうね。
 
VERBAL:親切な感じもそうですね。コロナ明けに色々なフェス行ってますけど、オペレーションが適当なイベントも多々あります。なんならアーティストの楽屋の前まで行けるチケット売ってたりして、この人大丈夫?っていう人いたり(笑)。なんかもうキャピタリズムの象徴みたいな感じなんですけど。でも今回は楽屋村もピースでしたね。優しい感じ。
 
ー会場全体もピースでした。今回感じたことを受けて、今後どうされていくっていうか、こうなったら楽しそうだなあって思ったこととかありますか?
 
WISE:リッチ・ブライアンと一緒に曲やりたいですね。
 
ILMARI:うん。まさかまたTERIYAKIやると思ってないところもあったし(笑)、ちょっとこれからのことっていうとね、どうなるんだろうと思うけど。 こういう経験、今回出来たこともすごい良かったし、いろんなアーティスト見てたらみんな良くて。例えば、唯一日本から来てた、新しい学校のリーダーズ。ちゃんと初めてライブ見たけど、すごい良かったから、新しい学校のリーダーズとTERIYAKIで曲作るのは、やったら面白いんじゃないかなみたいのは思いました。来年とか再来年とかまたずっと88のフェスが続いていくんだったら、あそこに出たら盛り上がるだろうな、面白いだろうな、とか、そういうのは考えちゃいますね。
 
RYO-G:まず逆立ちから練習してね。
 
ILMARI:ええ! ダンスを? 俺最後あの肩車で出てくるの? 無理だよ!(笑) 。

WISE:昨日パーティでかかってた「CHICKEN TERIYAKI」のROSALIAとか一緒にやりたいな。

ーラテン系スペイン語圏のアーティストともコラボしてほしいですね。向こうで日本流行っているんで。世界のいろんな人たちとコラボしてほしいですし、日本の音楽がどんどん世界に出ていく道を切り開く活動してもらいたいです。この瞬間にもSpotifyとかYouTubeでTERIYAKIの再生数は伸び続けるわけじゃないですか。でまたワイルド・スピードのシリーズも完結に向けて盛り上がっていく、そこの中で面白いことやってもらうのを期待してます。あと、NIGO®さんとの絡みも見たいです。

RYO-G:『I Know NIGO!』がイギリスやアメリカのチャートに入ってるNIGO®さん(笑)

VERBAL:NIGO®さんはプロデューサーでデザイナー、DJもされてて、我々が暴れてやりすぎたらリミッターかけてくれる(笑)。 今回を機にアイディア出しをどんどんしていけたらいいよね。今回やらなかったあのネタは多分リミッターかけられるかな?(笑) 。

RYO-Z:まだね。まだちょっと早かったからね。

VERBAL:いくらFuturistic TeennagerのHUMAN MADEと言ってもfutureすぎるって言われるとかね(笑)。 でも、このウチらのギャグセンを絶対面白がってくれる。で、口出しはしない。それで『I Know NIGO!』に出ているようなプッシャ・Tとか絡めたりしてね(笑)とにかく絶対うまく調理してくれる。

ILMARI:僕らみたいなキャラの若い子いたらいいなってちょっと今話しながら思ったんだけど。凄い上手くてかっこ良い子めちゃくちゃいる。さっきも話したリッチ・ブライアンとかJojiさんとかみたいな何かおもしろいことやってる子たち、どっかいっぱい居るはずなんで、その人たちちょっと見つけてみたいなと。そのまま88risingに入ってもおかしくないような。新しい学校のリーダーズがそんな感じじゃないですか? 制服着てあのパフォーマンス、こっちですごいウケますよね。多分、そういう子たちがまだまだいると思う。

ー期待してます!

TERIYAKI BOYZⓇが語る、復活ライブの舞台裏、世界の「TERIYAKI」ブランド

左から、著者の脇田敬、RYO-Z、ILMARI、WISE、VERBAL(Photo by NAGARE)

アジア系レーベル/メディアとして前人未到の活躍を続ける88risingのフェス『HEAD IN THE CLOUDS』にTERIYAKI BOYZⓇが出演すると聞き、参加させて頂き、インタビュー、フェスの取材もさせて頂いた。まず、「TOKYO DRIFT」という日本音楽史上、稀な世界で愛されたヒット曲についてのストーリー。『ワイルド・スピード』シリーズがモンスターシリーズ化したこと、YouTubeやサブスクの時代、UGC時代と見事に重なったことは会場で見、接したアメリカの若者たちから、実感として理解できた。

そして、ショーン・ミヤシロやリッチ・ブライアンなど88risingメンバーやアメリカ~アジアの音楽シーンの最前線に立つクリエイターやビジネスマンたちはどう考えているのか、想像してみた。YouTubeやInstagram、SpotifyからTikTok、更にその先のWEB3、メタバース、NFTの時代へ。TERIYAKI BOYZⓇやNIGO®が成し遂げた、時代を先取ったHIP HOPとファッション、ユーモアが織りなすカルチャーが、次の時代を見据える彼らに今最も新しく刺激的に見えているのではないだろうか。

今やLVMHグループからオファーを受け世界のファッション界に名を轟かす存在となったNIGO®が、超豪華メンツでリリースしたラップ・アルバム『I know NIGO』のリリース。音楽×ファッションの新しい時代、アフター・コロナ、WEB3の時代に何を起こしていくのか。そして、「日本発」を背負いそれを体現できるTERIYAKIの4人、ILMARI、RYO-Z、VERBAL、WISE。この4人が生み出すラップ、ユーモア、センス。これこそが、ファレルやカニエ、ダフトパンクら錚々たる世界の音楽シーンの中心メンバーの目と耳、心に叶う稀有なチームであること。直に体験し、感じることが出来た。

<著者プロフィール>

脇田敬 Wakita Takashi
音楽プロデューサー、マネージャー。大阪音楽大学ミュージックビジネス専攻教授。経済産業省監修デジタルコンテンツ白書編集委員。ニューミドルマン・コミュニティ、音楽デジタルマーケティング講座運営。

著書「ミュージシャンが知っておくべきマネジメントの実務」(リットーミュージック)
https://lit.link/wakita

物袋正雄 Motte Masao
現役大学生ミュージシャン。東京大学建築学科に在籍しながら、マルチリンガル(日本語、英語、中国語)を活かして、音楽業界の表・裏を問わず、活動中。
https://lit.link/lieus