FLO(フロー)がサマーソニックで来日する! デビューシングル「Cardboard Box」は、浮気したダメ男を突き放す堂々としたリリックを抜群のハーモニーと90年代~2000年代のR&Bテイストでまとめあげ、多くのリスナーを虜にした。今年に入っても勢いはさらに加速し、数々の新人賞にも選出。
ノリにノリまくっているロンドン発3人組、ステラ・クアレスマ、レネー・ダウナー、ジョルジャ・ダグラス(都合により終盤から参加)の等身大の魅力が詰まったインタビューをお届けする。

※編注:本記事のインタビューは今年5月に実施、FLOは7月に最新EP『3 of Us』をリリース

UK R&Bの新たな潮流とルーツ

ー遅ればせながら、BBC Sound of 2023、そしてブリット・アワード受賞の快挙、おめでとうございます。以前からあなたたちを応援していたので、とても嬉しかったです。受賞後、皆さん自身は注目度の高まりを実感していますか?

ステラ:それまでは新人アーティストとして自分たちを確立するのにすごく頑張らないといけなかった。あれをきっかけに応援してくれる人も増えて、より多くのリスナーに私たちの存在を届けることができたと思う。ツアーもとても盛り上がったし、注目度が高まっているのを実感しているのは確か。


ー国内のみならず、海外からも注目されているという実感はありますか?

ステラ:もちろん!

ーBBC Soundのコメントで、昨年受賞したピンクパンサレスへのリスペクトを語っていました。彼女のどのような点を尊敬していますか?

ステラ:彼女は自分をありのままに表現するし、既存のものに縛られない。サウンドもビジュアルも、独自のものを持っている。イギリス人だってこともクールだと思う。彼女が成功しているのはとても良いことだよね。

ーイギリスでは久しくガールズグループへの注目が低下していたように思います。
近年の状況を、あなたたちはどのように感じていましたか?

レネー:ビッグなガールズグループがいないのは確かで、だからみんなが自分たちの個性を活かして頑張っている。最近はまたどんどん新たなグループが出てきているよね。すごくワクワクする状況だよ。ほら、私たちが子どもの頃はいろんな個性をもったガールズ・グループがいたから。TLC、デスティニーズ・チャイルド、スパイス・ガールズ……彼女たちはポップカルチャーの中でとても大きな位置を占めていた。だから、自分たちもそれを継承できて嬉しい。


ーその一方で、近年のイギリスにおけるR&B/ソウルミュージックについてはどのように感じていますか? エラ・メイやジョルジャ・スミス、クレオ・ソル、ジャズ・カリスなど優れたシンガーが多いように思います。

ステラ:R&Bの復活は、確かに感じてる。消えていたわけではないけど、最近は好きな人が増えて聴く人も増えた。アメリカでも通用する実力のあるアーティストもいるから、R&Bにとってとても良い状況だと思う。

レネー:私も同じことを言おうと思っていた。イギリスには才能のある人たちがたくさんいる。
R&Bをやっている人たちはみんな、メインストリームにしたいという使命感を持ってやっている。私たちもまさにそう。R&Bが既に広く受け入れられているアメリカに活動の場を置くだけじゃなくて、イギリスにもその場所を作って、多くの人が受け入れてくれるようになればいいなと思ってる。

ー自分たちと同世代のミュージシャンで、ジャンル関係なく共感する人はいますか?

レネー:ブリ―・ランウェイは大好き。BellahやJVCK JAMES、Ambréも好き。ちなみに全員イギリスのR&Bアーティストで、みんな最高。
私たちの周りにはR&Bを作っている人たちがたくさんいて、本当に刺激を受けている。みんなでトップに行けたらいいなと思っているんだよね。彼らがトップになるのを見てみたいし。

ー同世代で切磋琢磨して、新しいムーブメントを作っているという実感はありますか?

レネー:そうだったらいいけどね。特にイギリスではR&Bは相手にされないところがあって、そんな状況が続いてほしくないから。R&Bというジャンルを確立したいし、ポップと一緒くたにされたくない。
一つのジャンルとして受け入れられることを願っている。現状がまだムーブメントとは言えないのであれば、これからもっと大きなものになってほしい。

リアーナやミッシー・エリオットへの共感

ーFLOは90年代~2000年代のガールズグループやR&Bのフィーリングがとても素敵です。あなたたちが、当時のアーティストで最も好きだったのは誰でしょう?

レネー:私が一番好きだったのはシアラとリアーナだね。

ステラ:私はリアーナ、ビヨンセとブランディ。

ー2人ともリアーナをあげましたが、どのような点に惹かれていましたか?

ステラ:彼女はとにかくカッコよかった!

レネー:マジでヤバかった! 子どもの私にすごく自信をくれた。彼女からは、やりたいことがあるんだったら信じてやり続ければ叶うっていう刺激をもらったんだよね。リアーナはとにかくカリスマ。たくさんの人たちに影響を与えたと思う。

ステラ:彼女は音楽的にも唯一無二だった。聴くと、自分が強くなった気持ちになる。しかも今の彼女はビューティやファッションの世界でも活躍していて、自分の帝国を築いた。すごく憧れる。

ーお2人も、将来は彼女のように別分野にも活躍の場を広げたいと思っていますか?

レネー:もちろん。

ステラ:100%そう。

レネー:ステラは自分のミネラルウォーターのブランドを持って、ジョルジャは自分の犬のブランドを持って、私は何がいいかな。ファッションとか、ヘアメイク商品の店を持つとか。みんなでいろんなことに挑戦したい。絶対に面白いと思う。

ー先ほどはソロアーティストの名前が挙がりましたが、グループでは誰か好きな人たちはいましたか? 学校で友達と真似した人たちとか。

レネー:それだったらプッシーキャット・ドールズ。しょっちゅう歌ったし、最高だったよ。

ステラ:そうね。プッシーキャット・ドールズもだし、もちろんデスティニー・チャイルドやTLCも。

レネー:みんなとにかく最高だった。ガールズグループってなんてカッコいいんだろう!って思わせてくれたよね。

FLO作成、お気に入りR&Bソングをまとめたプレイリスト

ー当時の音楽と比べて、FLOの現代的な点はどういったところにあると思いますか?

ステラ:私たちの世代ならではの抱えているものがあって、当時とは全然違う新しいバージョンって感じ。それに音楽シーンもあの時と比べて進化していて、新しい音楽からもたくさん影響を受けている。さらに、私たちは自分たちがやることにちゃんと深く関わっているんだよね。ガールズグループというと、周りに全部お膳立てしてもらって「これをやれ」って指示されてると思っている人もいるかもしれないけど、私たちは自分たちが何をしたいのか明確なビジョンを持ってる。

ーということは、コラボレーションなどもあなたたちの発案なのでしょうか?「Fly Girl」でミッシー・エリオットとコラボすることになった経緯を知りたいです。

レネー:”fly girl”と歌うサビのパートは当然ミッシーの「Work It」からのサンプリングなわけで、歌を入れた時に、私たちはミッシーに参加してもらいたいって思ったの。コラボするなら絶対にミッシーじゃなきゃだめだって。だからスタッフに頼み込んでなんとか連絡をとってもらって、彼女に参加してもらえたってわけ。グループとして、キャリアのこんなに早い段階でミッシーとのコラボが実現できたのは本当に嬉しかった。彼女はカリスマの中でも特にすごい人だから、それが実現したっていうのは私たちにとってこれまでで一番大きな達成感を感じたし、永遠に誇れることだと思う。

ーあなたたちがリスナーとして聴いてきた中で、ミッシーに関するどのようなエピソードを覚えていますか?

レネー:彼女のビデオが大好きだったのを覚えてる。

ステラ:私もそう。彼女のビデオと着ている衣装。

レネー:彼女にしかない独自の個性を持っていた。誰もやっていないことをやっていたよね。だから私たちも、いつだって型にハマらないことが大事だって思ってる。既成概念にとらわれず、私たちが何をしたいのか、何に一番しっくりくるのか、それをどうやって表現すればいいのか常に考えるようにしてる。

創作面とファッションのこだわり

ーFLOの楽曲制作のアプローチについても教えてください。MNEK(エメニケ)をはじめ、偉大なプロデューサーたちといつもどのように作業を進めているのでしょうか。

ステラ:MNEKは私たちのエグゼクティブ・プロデューサーのような立場で、全てに渡って見てくれている。つい先日もLAで1週間スタジオ・セッションがあったんだけど、まずプロデューサーが用意したいろんなビートを聴かせてもらうんだよね。あるいは、どんな曲を作りたいかみんなで話をする。その後メロディのアイデアをいろいろ歌ってみて、聴き返して良いと思ったのを選んで、メロディに合う歌詞を書いていく……という感じ。

ーあなたたちもかなりクリエイティブに関与しているんですね!

レネー:もちろん。それが私たちの強みだと思ってる。他にも得意なことはあるけど、核になるのは音楽を作っていくクリエイティブの部分。だから、音楽に関してはできるだけ全部に関わりたいと思ってるんだよね。

ーそういう姿勢は、どうやって芽生えたのでしょうか。ミッシーやビヨンセのような人たちがいたから、自然と?

ステラ:そうだね。それに他の人に書いてもらった場合、やっぱりどうしてもピンとこない部分があって。自分たちが何を感じているか、そして何を伝えたいかが分かるのは自分たちだけだから。

レネー:あとは、誰とやるか。これまで密接に仕事をしてきて、私たちのことをよくわかっている人たちとはやっぱりすごくやりやすい。

ーFLOの魅力の一つに、3人の高低差のある声を活かしたハーモニーもあると思います。素晴らしいハーモニーを聴かせるために、工夫していることはありますか?

レネー:私たちがグループを結成した一年後くらいのかなり早い段階から関わってくれているJoshua Alamuというボーカル・コーチがいるんだけど、彼が最高で。声の出し方や歌い方を指導してくれる他にも、ボーカルのアレンジもアドバイスをくれる。あと、私たちは調和を大事にしていて、三人の異なる声をどうやって一体化させるかを一番重要視してるんだよね。そのためには、お互いの声をちゃんと聴くことが大事。

ーちなみに、3人の間で音楽的な役割分担はあるんですか?

レネー:役割分担は特になくて、曲ごとに変わるかな。曲を作る時は、それぞれがまず何をしたいかという話をみんなでする。そうすると、どういうわけか大抵の場合、みんなの意見が大体一致するんだよね。例えば「私はサビ前のパートを歌いたい」と誰かが言ったら、もう一人が「いいんじゃない? 私はサビ前じゃなくてヴァースを歌いたいから、サビ前はあなたが歌ったら?」という具合に。すごくいい感じだよ。

ー「Cardboard Box」を筆頭に、FLOは歌詞の内容についても大きな支持を得ています。どういった点が共感を集めていると思いますか?

ステラ:それは、まず私たち自身が共感できる歌詞だからだと思う。私たちもリスナーと同じような世代で、毎日を生きていて直面するリアルなことを歌詞にしているからね。

ー歌詞はどうやって書くんですか?

レネー:歌詞を書くのは大好き。一番好きなのは、あるシチュエーションや気持ちをもとに、一つの作品に変えてしまうこと。最初のきっかけはただの会話だったり一つの単語だったりするかもしれないけど、それがきめ細かい物語の歌に生まれ変わる。ソングライティングはとてもパワフルで、美しくて、素敵。

ー歌詞も、みんなで意見を出し合って作ることが多いのでしょうか。

レネー:そう。FLOは一体感を大切にしているグループだから、歌う内容についてみんなが納得しないといけない。もし誰かが気になることがあったら、ちゃんと話し合うようにしてる。共通認識を持って、同じ視点を共有しながら書くようにしているよ。

ー自分たちが書いてきた中で、特にこれは気に入っているという歌詞はありますか?

レネー:「Fly Girl」の中で一番気に入っている歌詞は、”Why we gotem so pressed?”(彼らはなんでそんなに怒ってるの?)(笑)。なぜなら、これまでの曲ではここまで強気だったことがないから。男性だけに向けているわけじゃないところもすごく気に入ってる。ステラのお気に入りは?

ステラ:う~ん……悩むね。「Cardboard Box」のブリッジはけっこう好き。

FLOが語るサマーソニック、R&B新時代を切り拓く3人のハーモニー

Photo by Conor Cunningham

ーあなたたちのY2Kファッションがとても素敵です。ネイルもとても派手で可愛いですよね。ステージやMVでのスタイリングは、どういった人に影響を受けているのでしょうか?

レネー:ファッションもリアーナからかなり影響を受けていると思う。彼女はファッションの女王だから。

ステラ:その通りだね。

レネー:私たちはどのプロジェクトでも、毎回ビデオを参考にしたりPintrestを使って自分たちの求めるイメージを探したりする。その後にスタイリストにブランドを提案することもあるし、彼女から提案をもらうこともある。そうやってみんなで話し合いながら決めていく。

ー特に好きなスタイルなどはありますか?

レネー:特にあるわけじゃないんだよね。Y2Kファッションだけが好きなわけでもない。それだと一つの型にはまってしまうから。私たちはまだまだ成長過程にあるので、もっともっといろんなものを試してみたいし冒険もしたい。

三者三様の個性、サマソニに向けて

ー3人のパーソナルな個性についてもっと知りたいので、それぞれからメンバーを紹介してもらえますか?

ステラ:レネーは、一番年下なのにきちんとしているからグループの母親的存在になる時がある。私たちが時間を守っているか、やるべきことをやっているか、っていうのをちゃんと見ていてくれているよね。でも、私たちの可愛い妹になる時もあって(笑)。思いやりがあって優しいし、面白い人。

レネー:ステラはクレイジーだよね。みんな彼女のことをのんびりしていて大らかだと思っているけど、本当の彼女を知ると、実はめちゃくちゃなところもあってワイルド(笑)。人に対してすごく優しいし、心が広い人よね。

ーワイルドなのって、例えばどういう時ですか?

レネー:(笑)。バレエダンサーになったつもりで、いきなり上下に跳んだりするの。何をしでかすかわからない。予想不可能なところがあって、そこが大好き。元気をくれる。

ージョルジャについては?

レネー:ジョルジャは、姉御肌ですごく頼れる存在。自分が何を求めているかちゃんと分かっていて、それを声に出して言うことも厭わない。そういうところはとても尊敬してる。黙って周りに流されるのは簡単だけど、彼女はその真逆だから。

ステラ:彼女はユーモアのセンスもあるよね。

FLOが語るサマーソニック、R&B新時代を切り拓く3人のハーモニー

2023年3月撮影。左からステラ・クアレスマ、ジョルジャ・ダグラス、レネー・ダウナー(Photo by Joseph Okpako/WireImage)

(※ここでジョルジャが遅れて参加)

ジョルジャ:お待たせして本当にごめんなさい!

ー3人の個性をもっと知りたくて、ちょうどジョルジャのことをメンバーに紹介してもらっていました。ジョルジャから見て、レネーとステラはどういう人ですか?

ジョルジャ:レネーは几帳面だと思う。あと、賢くてとても知性的。ステラは面白くて………他になんて言えばいいかな(笑)。すぐには出てこないけど、2人とも大好き。

ー先ほどレネーとステラにも訊いたのですが、青春時代に好きだったアーティストは誰でしょう?

ジョルジャ:子どもの頃は母が90年代~00年代のR&Bをたくさん家でかけていたから、ホイットニー・ヒューストン、ビヨンセ、マライア・キャリー、フェイス・エヴァンス、メアリー・J・ブライジといったいわゆるディーヴァ系をたくさん聴いて育った。もちろんデスティニーズ・チャイルドも。それがきっかけでガールズグループが大好きになって、自分からもっと音楽を聴くようになった。そのおかげで、ガールズグループで歌うようにもなったんだと思う。

ーありがとうございます。ちなみに、今後フルアルバムの制作予定はありますか? この先のプランについて聞かせてください。

ステラ:EP(昨年7月リリースの『The Lead』)を出してから、目まぐるしい1年だった。いろんな経験をしたし、変化もあった。たくさんのアイデアが出ているし、試したいこともたくさんある。つい先日もLAで曲作りのセッションを1週間してきて、すごく充実した内容だった。これまでとは違うテーマを取り上げたり、歌う内容の幅も広がった。EPから成長した私たちを見せたいと思ってるし、自分たちも楽しみ。

ー日本のファンが、サマーソニックでの来日を待ち焦がれています。どのようなステージにしたいですか?

ジョルジャ:みんなをくぎ付けにするようなパフォーマンスを届けたい。今からすごく楽しみ。イギリスと北米以外では初めてのショーになるから、とてもワクワクしているよ。パワフルなステージにしたいし、観客と一緒になって盛り上げるつもり。

レネー:ジョルジャの言う通り。観客もたくさん参加できる、すごく楽しいライブになるはず。

ー日本でやりたいことはありますか?

ステラ:日本は食べ物がすごく美味しそうだよね。クールな場所がいっぱいありそうだから、いろいろ探検したいと思ってる。

ジョルジャ:アメリカに行った時は、ホテルに缶詰になっていてほとんど外を探索できなかった。日本に行った時は、絶対に外に出ていろんな場所を見てみたい。どこかおすすめの場所があったらぜひ教えてほしいな。

ー来日を心待ちにしています。今日はありがとうございました!

3人:サンキュー!

FLOが語るサマーソニック、R&B新時代を切り拓く3人のハーモニー

FLO
『3 of Us』
再生・購入:https://umj.lnk.to/FLO_3OfUs

SUMMER SONIC 2023
2023年8月19日(土)、20日(日)
千葉 ZOZOマリンスタジアム&幕張メッセ / 大阪 舞洲SONIC PARK(舞洲スポーツアイランド)
※FLOは8月19日(土)大阪会場、20日(日)東京会場に出演
公式サイト:https://www.summersonic.com/