今回のアジアツアー中、最大規模のヘッドライナー公演となった初日の東京・豊洲PIT公演には、3000人が集まり大熱狂。翌日の大阪・GORILLA HALL OSAKA公演も、規模こそ東京には及ばないものの満員御礼。思っていた以上に若い20代のファンが多く、男女比はほぼ半々。昨年彼が初出演したフジロックとはかなり異なる客層で、それだけに単独でのライブの意義も改めて感じさせられた。
筆者が足を運んだ大阪公演では、開演までの待ち時間にWATARUが、東京公演ではVREASEがゲストDJとして登場。どちらもジョナス・ブルーの来日公演でサポートを務めるなど、洋楽/EDM界隈のファンにお馴染みの顔ぶれだ。クラビングなムードを盛り立てメインアクトへと繋げてくれた。
19時ジャストに会場が暗転すると”Pulse”(音波)を想起させるサウンドと映像をバックにグリフィンがステージに登場……するや否や激しいダブステップへと切り替わり、スモークが焚かれ、レーザーが飛び交い、目まぐるしく変化する映像が洪水のように押し寄せる。一気に非日常的な世界に放り込まれた格好だ。「Bye Bye」「Just For A Moment」といったお馴染みのナンバーが続くと大合唱が沸き起こり、この時点で既にオーディエンスは飛び跳ねながら大興奮。

Photo by Yoshika Horita

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スーパーモードの「Tell Me Why(Meduza Remix)」に自身の「Remember」を絡めた巧みなマッシュアップ、心に沁み入る歌メロからギターソロへと畳み掛けた「All You Need To Know」など次々とハイライトが待ち受ける。デビッド・ゲッタ&シーアの「Titanium」やゼッドの「Clarity」(feat. Foxes)などの定番EDMチューンには、イントロが鳴った瞬間ワッと歓声が巻き起こり、大合唱へと雪崩れ込む。来たるニューアルバム『Pulse』からも「Where Are You Tonight」(w/ZOHARA)をはじめ、多数の未発表曲が披露されるが、オーディエンスから大歓迎で迎えられていた。すぐさま飲み込めてしまうのも彼のサウンドの特長だ。しかもライブでは緩急をつけて豪快に疾走。一瞬たりともその手綱を緩めない。例えば「Body Back(w/ Maia Wright)」から「Whole Heart」(w/ Bipolar Sunshine)へと続いた際には、美メロでうっとり酔わせた直後に激しいダブステップを投下し、更にそこから次第にスピードアップ。一旦ピークに達してからは、一転してピースフルなムードで包み込み、皆でハートマークを作って愛を共有する。
中盤以降には、そんな極上メロディのボーカルチューンが立て続けに放たれた。「Nobody Compares To You」(feat. Katie Pearlman)、カイゴ&カラム・スコットとの共演曲「Woke Up In Love」などでは、じっくりとボーカルをフィーチャー。当然ながら大合唱が巻き起こる。かと思えば「Magic」やアーミン・ヴァン・ブーレンとのコラボ曲「What Took You So Long」では、テクノ寄りの新局面も窺える。だが、どこを取っても開放感と高揚感が特筆ものだ。そのダイナミックなサウンドを支える形で、赤や青、ピンクを基調としたライティング、吸い込まれていくような映像や宇宙を思わせる映像がいっそうトリップ感を増強する。時折、挟まれるディズニーアニメを思わせるメルヘンチックな映像も、ダンス系には珍しく思われたが、意外とハマっていた。

Photo by Yoshika Horita

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終盤は「Forever」「After You」「Feel Good」といったお馴染みの代表曲でダメ押し。
美しい歌メロとギターメロでうっとり夢見心地にさせてくれた90分。しかも一辺倒ではなく、さまざまな手法を用いて、異なるアングルから切り込み、楽しませてくれた彼には、DJのみならずパフォーマーとしての魅力も大いに備わっていた。ロン毛を振り乱しつつ、その見え方をちゃんと計算していたり、ギターを弾くことでライブ感を倍増させるなど、新たな形のライブショーを開拓したいという意気込みも伝えてくれた。帰り道「楽しかったよね!」という声があちこちで飛び交っていたのも納得のエンタメライブだった。
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