aespa、LE SSERAFIM、ENHYPEN、SixTONES、BE:FIRST、MAZZELなど、日本・韓国のトップアーティストたちの楽曲を手がける音楽プロデューサー・ALYSAが、クリエイティブレーベル「O21」を設立した。9月10日には、クリエイティブガールグループ・EttoneがO21よりデビューする。


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Ettoneがデビューするまでの道のりを描くドキュメンタリー作品が、毎週金曜日にEttone Official YouTubeにて公開されている。しかし、まだドキュメンタリーでは描かれていないことがある。それは、7人のメンバーがいかにして集まったのかということだ。このインタビューでは、まずそれについて話してもらった。

「クリエイティブファースト」を掲げるO21からデビューするEttoneが9月10日に発表する3曲入りの1stシングルの内、2曲にはメンバーが作詞に参加、そしてもう1曲はSIRUPが作詞を担当。ALYSAは「ガールグループ戦国時代」において世界に通ずる日本のガールグループが取り組むべき音楽性を模索し、それに「LOOSE POPS」と名付けた。参考にしたのは藤井 風やKing Gnuなどだという。LOOSE POPSとは何か――US・韓国・日本を繋いできたALYSAが今目を付けた音楽性について詳しく聞いた。

―音楽プロデューサーとして第一線で活躍しているALYSAさんが、なぜ今、自分のレーベルを立ち上げようと思ったのかを聞かせていただけますか。

ALYSA:「アーティストやタレントがアーティストをプロデュースする」という動きが活発になってきたと思うんですけど、カナダにいてK-POPからキャリアを積み始めた私からすると、その動きはけっこう珍しいんですよね。K-POPや北米ではどちらかというとクリエイターがアーティストをプロデュースする動きが主で、私が通っていたカナダの学校でも、まずアーティストの卵を見つけてきて、そこに対してプロデューサー側がどうプロデュースできるかという授業がしっかり組み込まれていました。なので、クリエイターがアーティストと対になって活動する動きが日本で起きてもいいんじゃないかなと思ったのがまず1つです。


―確かに、ここ数年日本では、アーティストが楽曲単位ではなくアーティスト単位でプロデュースを手がけるケースが増えてきましたね。

ALYSA:もう1つは、私はピッチングシステム(レコード会社が複数のクリエイターから楽曲を募集し、その中から採用する楽曲を選ぶシステム)の中で生きてきた人間で、これはなかなか難しいなと思っていたんですよね。というのも、やっぱりアーティストとプロデューサーが一緒になって、何に悩んでいるのか、どこを目指しているのか、それから私自身がどういう音を目指したいのかまでを共有して曲を作っていかないと、なかなかヒットは生まれないかもなということを長く思っていたんです。それにグループでやっていく若い子は「基本的に曲を書くのはあなたの役割じゃないですよ」とされていることが多いと思っていたんですけど、その子たちも才能やセンスがあるはずで、それを打ち出せる仕組みを作りたいなとも思いました。それができる場所と言ったら……もう、自分でやるしかないんですよね。

―昨今は「楽曲単位でバズってもファンが増えない」という課題にぶち当たっているケースが業界内でよくありますけど、それを打破するには、本人の人間性やアーティストストーリーがしっかり伝わる曲をヒットさせることが必要不可欠であるということを改めて思うんですよね。曲を書くクリエイターが常に本人たちの隣にいて、本人のこともグループのストーリーもすべて知った上で曲を書くことで、表現の強度が変わるだろうなと思います。

ALYSA:作家側からすると、「とにかくバズる曲を書け」ってひたすら言われるんですけどね。でもアーティスト側からすると、その1曲だけバズったとて深掘ってくれる人がどれくらいいるのかという逆の悩みもあったりするのでしょうね。確かにその課題の解決策にはなりそうかなと、今話を聞いていて思いました。

―今話してくださった2つ以外に、自身でレーベルを立ち上げようと思った要因はありますか?

ALYSA:O21のビジョンは一貫していて「クリエイティブファースト」。最近のアイドル業界では「契約中の数年間をどう切り取っていくか」ということに焦点が当たりがちだなと思っていて、そこに全力投球することも1つの正解だとは思いますが、その先の人生はどうなるのだろうと思っていて。
自分と一緒にいてもらう期間だけ咲いて、そのあとは散っていくようなリスクを負わせるのではなく、ここで活動したあとにも繋がるものであってほしい。業界でどう生き残っていくかをちゃんと考えられるレーベルにしたいと思っていました。そういうレーベルや場所が日本では希少な存在になり得るかなと思ったので、自分でやろうと思ったという経緯ですね。

―ソングライターとしてK-POPやJ-POPシーンから引っ張りだこ状態だったと思うんですけど、今は他の仕事をセーブして、Ettoneに時間をかけている状況ですか?

ALYSA:その通りです。セーブどころじゃない! 業界から忘れられるんじゃないかと思うくらい、他の案件に割ける時間が減りました(笑)。過去に仕事を受けた曲がこれから出ていくこともあるし、頼まれたらやることもあるんですけど、前みたいに1日に何曲も書くというのはもうできないですね。Ettoneと一緒に曲を書いてくれるアーティストやプロデューサー、作家をひたすら探しては声かけて、「LOOSE POPSとは」のすり合わせの作業に時間を使っています。Ettoneのメンバーもチームも人生を賭けているのにレーベルヘッドの私が賭けてないと説得力もないだろうし、いつでも駆けつけられるようにしておきたいなと思うと、こうなっちゃうのは仕方ないですね。

Ettoneのメンバーを選ぶにあたって

―YouTubeにはEttoneのデビューまでの道のりを描くドキュメンタリー映像が毎週アップされていますが、そもそもどうやってこの7人が選ばれたのかをみんな気になっているんじゃないかなと思っていて。Ettoneのメンバーはどういうふうに集まったんですか?

ALYSA:去年の春先に募集をかけて、そこから数ヶ月間一緒に過ごさせてもらう中で、その子が持っているものがプロジェクトチームの目指すLOOSE POPSのビジョンに一致するかどうかを確かめたり、「デビューすべきタイミングは今ではないな」と思った子には他の道を紹介させてもらったりして、去年の夏にはこの7人にまで絞っていました。そこからプロデューサーとしての視点は、誰を落とすのかではなく、この7人で何を作れるかという側面にフォーカスした方がいいと思ったんですよね。いかにこの7人でバランスがいいものを作れるかを模索する作業をひたすらやっていましたね。


―7人を選ぶときに、一番大事にしていた基準はどういうところですか? O21やLOOSE POPSのビジョンに合うとは、言葉にしていただくと具体的にどういうことでしょう。

ALYSA:まず、ビジュアルでは選ばなかったです。本人たちがどうしようもないことを基準にはしたくなかったんですよね。結果的に「かわいいな、素敵だな」と思うメンバーが集まったんですけど、そこに一切フォーカスはしなかったです。一番大事だと思っていたのは人間性、人間力ですね。O21の理念は2つあって、1つ目は健康にアーティスト活動をまっとうすること、2つ目は周りのスタッフさんに必ず敬意を払うこと、無下にしないこと。この2つをちゃんと大事にできるかどうか。クリエイティブも大事だけど、その前にこの2つがないと成り立たない職業だと思うんです。

―O21は「アーティストファーストでも、ビジネスファーストでもない。私たちらしく、聞き手に寄り添った”クリエイティブファースト”」と掲げていますけど、まずは「人間力ファースト」だったとも言えるくらいですか?

ALYSA:そんな気がしますね。そこを大事にしているから、何を表現するかを考えるときも自分1人が目立とうとするのではなく、7人が輝けるクリエイティブを常に模索するようになっているんですよね。なのでそこを妥協しなくてよかったなと思います。
選考の際、最終的に何が一番大事だったかというと、団結力だったんですよ。初冬に最終選考を行ったんですけど、7人それぞれと面談したら、表現の仕方は違えど全員が「この7人でデビューしたい」って言うんです。それが私の心にすごく刺さって。そのあとスタッフのみんなとも話し合って、とにかくこの7人のバランスと団結力がベストだという判断に至って、今のメンバーを選ばせてもらいました。

―オーディション番組がブームである時代に、今話してくださったような選考過程にカメラを入れず、7人が決定したあとからデビューまでをドキュメンタリー映像として届けるという判断をしたのは、どういう想いからですか?

ALYSA:カメラが入ると、自分のいいところだけを見せたくなると思うんですよ。一度でも世間に出てしまうわけですから、「いい姿を見せたい」「受かりたい」という気持ちも絶対に強くなっちゃうじゃないですか。だから何かしら取り繕ってしまうところが出るだろうなと思っていたんですよね。レッスン中も、後々ドキュメンタリーにすることを考えてカメラを入れたりはせずに、化粧がぐちゃぐちゃになっても、髪の毛がぼっさぼさになってもいいから、もう振り切ってできることを全部やってみようという話を本人たちにさせてもらったんですね。そういうシーンは確かにデビュー時に見せたら感動的に映ると思うんですけど、本人たちはとにかく必死だから見られたくないんじゃないかなと思ったんです。だからカメラを入れ始めたのはメンバーが決まってからで、映像素材は少ないんですけど、私たちの中にはストーリーも思い出もいっぱいあります。

LOOSE POPS」というテーマの意味

―改めて、「LOOSE POPS」というテーマの意味と、それがどの段階で出てきたものなのかを聞かせていただけますか。

ALYSA:去年の春先に募集をかけ始めたときからLOOSE POPSという言葉はあったんですけど、マインドセットは全く違うものでした。
「適当に見えて、かっこいい人」「もっともっと気楽に、適度な適当とオン/オフを持って生きられる人への肯定」というのが今のZ世代にあるんじゃないかというところから、「あなたはあなたの、ルースでグッドな生き方を」みたいなことがLOOSE POPSの起源でした。そこから変わったのは、メンバーがめちゃくちゃ頑張るから。人のためにも頑張るし、自分の価値観と人の価値観が混ざる点を見つけることに対してもすごく努力するんですよね。なので、マインドセットを変えた方がいいんじゃないかなと思っていたら、最終選考のあと、まだ結果もわかっていないときに、anriが6人と私に手紙を送ってくれて。そこに「幸せはシンプルなところから来る」「みんなと過ごせた時間が私にとって幸せだった」ということが書いてあったんです。それを見たときに、これがみんなが今まで感じてきたことの根源にあるもので、LOOSE POPSにマッチするマインドセットだと思って、そこからそれを軸に音楽性を模索していきました。

―ALYSAさんがプロデュースするグループとなると、やはり世間的に一番注目されるのは「どういう音楽を出してくるのだろう」というところで、その期待のハードルも高いと思うんです。

ALYSA:そうだと思います。チームにも初っ端から「とにかく音楽がよくないとダメかもね」「音楽がよければ勝てます」みたいなことをずっと言われていて(笑)。

―ステートメントで「クリエイティブファースト」「クリエイティブで扉を開く」ともおっしゃっていますし。ハードルが上がりっぱなし(笑)。

ALYSA:そうなんですよね(笑)。
今はガールグループ戦国時代なので、どういう音楽だったら差別化できるかを探す冒険に出ていくようでした。最初に「どんな音楽をやったらレッドオーシャンに飛び込んでしまうのか」ということをひたすら洗い出す作業をしたんですね。どこが一番穴が空いているかを考えたときに、「K-POP」や「ガールクラッシュ」ではないし、「原宿系」でもない。ここだったらいけるかもと思ったのが、アーリーアダプター層が好きな音楽でした。藤井 風さん、King Gnuさんとか、ああいう音楽って、最近は聖水を歩いている韓国の方とかも聴きますよね。「ここだったらまだガールグループが挑戦してないよな」と思ったところから着想を得て、チームで話し合いながら作っていった音に「LOOSE POPS」という名前を付けられるんじゃないか、というふうにたどり着いていきました。

―カナダを拠点にK-POPの楽曲を書かれていたALYSAさんから見て、藤井 風さんやKing Gnuなどの「アーリーアダプター層が聴く」とおっしゃった音楽の、世界から見てユニークとされるポイントや、聖水を歩いている人たちからも愛される理由って、どの辺にあると思いますか?

ALYSA:全員そうだという話ではないんですけど、コード進行とメロディがめちゃくちゃマッチしているところだと思います。コード進行でストーリーを描く中で、メロディと歌詞もマッチさせてストーリー性にさらなる説得力を持たせることにすごくこだわっている印象があります。特にK-POPで顕著になっているのは、ダンスミュージックで、4つのコードや、もはやコードにもなってないものがループしていく中でどうダイナミックスをつけるかが勝負、という傾向があると思っていて。私が参考にさせていただいている日本のアーティストの方々は、たとえ4つのコードのループだとしても、そこにストーリーを持たせるんですよね。そこへのこだわりがすごいなと思います。

―それはO21というレーベル名の「逆さに呼んで”糸(ITO)”」「現在まで音楽業界が紡いでくれた歴史をたぐり寄せる」という由来に通ずる話ですね。J-POPの歴史をつないでいくという。

ALYSA:そうですね。歌謡曲、合唱曲、校歌とかも、ストーリー性にこだわったコード進行になっていますよね。それがEttoneのシグネチャにもなるかもって思うくらいにはこだわっていますし、もしかしたら今後もブレない部分かもしれないなと思います。

―Ettoneは「クリエイティブガールグループ」と掲げていて、ここまで話してくださったように「クリエイティブ」を大事にしているプロジェクトだからこそ、1stシングルのタイトル曲「U+U」の作詞作曲クレジットにメンバーが入っていないとはいえ、ドキュメンタリー映像に映っているように歌詞についてSIRUPさんととことんディスカッションした上で出来上がっているというのが大事なところですよね。

ALYSA:そうですね。すごく大事だと思ったのは、その分野にいるシンガーソングライターやアーティストは自分で曲を書いて発信もする人たちで、ちゃんと自分のビジョンがあるんですよね。伝えたいことがあるし、考えていることがとっても深い。なので、私やメンバーが手放しの状態で「何でもいいのでいい曲をください」というやり方をしても、絶対にそういう方たちと同じものは作れないなと思っていました。SIRUPには自分のビジョンやマインドを話して、本人たちともたくさんディスカッションしてくれて、その上で言葉(歌詞)にしてくれたという流れでした。トラックに関しても、まず本人たちと構想を練って、それを音にする作業を私とJacob(Aaron)でやらせてもらったんですね。コレオはプロのコレオグラファーにフォローしていただきつつも、メンバー自身が作ります。今後も音楽、コレオ、アートワークとか、必ず自分たちで責任を持って担うパートがあるようにしたいと思っています。

―「U+U」のトラックを作る前段階で、本人たちからどんな構想があがってきたんですか?

ALYSA:「時間」「時計」というワードが本人たちから出てきたんですよね。この子たちは挫折をしたり、悔しい経験があったり、色々あるんですけど、本人たちが一番言ってくれたのは「今この瞬間にこのチームで活動できていることが幸せ」「過去を消化できる今がある」ということだったんです。なので、真ん中に置きたかったワードが「時間」とか、それをアイテムにすると「時計」とか、最終的に歌詞には落とし込まなかったんですけど「自分たちの映画を見ているようなもの」ということでした。「デビューできました、イェーイ!」というテンションではなくて、この子たちは今まで積み重ねてきたものをここでどう出せるかを見据えているんだなということを一番に思ったんですよね。

―この記事が出る頃はリリースイベントで全国を回っている最中で、9月30日にはデビューショーケースの開催も発表されています。Ettoneのライブはどういうものにしたいと考えていますか?

ALYSA:ライブは、めちゃくちゃ音にこだわっています。生バンドを入れる方向で動いていますね。スタッフから「予算が……」みたいな顔をされたんですけど、「いや何とかしましょう」と言って(笑)。今までのガールグループと違うパフォーマンスの仕方ができる子たちで、しかもLOOSE POPSをやるには生演奏だけは譲れないなと思ったので、今全部のライブアレンジを作っています。「クリエイティブファーストと言っているんだからこれくらいはやりたい」という想いで準備しているので、ぜひ来ていただきたいです。

ALYSAが語る「LOOSE POPS」の本質 ガールグループ戦国時代に風穴を

Ettone
自分らしくありたい、に寄り添う音楽ジャンル ”LOOSE POPS”
クリエイティブガールグループ「Ettone(エトネ)」
anri, chiharu, koyuki, mirano, pia, shion, yuzuki

2025.09.10 debut
Ettone 1st Single『U+U』Release!!

Package
https://lnk.to/Ettone_PKG

Ettone Debut Showcase 2025.09.30 開催!!
https://www.sonymusicshop.jp/m/arti/artiItm.php?site=S&ima=4916&cd=77717687

1st Single『U+U』リリースイベント開催中!!
https://ettone.o21-label.com/news_detail.html?index=7082
8/24(日)アクロスモール春日(福岡県)
8/30(土)アリオ川口(埼玉県)

Official Site: https://ettone.o21-label.com/

O21
Instagram:  https://www.instagram.com/o21.official.ig
X: https://x.com/o21_official
Official Site: https://o21-label.com
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