2000年生まれのシンガーソングライター・sanetii(サネッティ)。彼にとって初のワンマンツアー「sanetii 1st One Man Tour『UNREAL』」が、凄まじい熱気の中で大団円を迎えた。
渋谷WWW、また、彼の地元・神戸の太陽と虎の2会場を周った今回のツアー。2公演の即完を受け、梅田Shangri-La、渋谷WWW Xにて追加公演が行われることが発表され、この2公演も見事にソールドアウト。筆者は、昨年から東京でライブがあるたびに欠かさず足を運び続けているが、彼が誇るポテンシャルの大きさに、やっと状況が追いついてきたように思う。今回は、8月15日、渋谷WWW Xで敢行された追加公演の模様をレポートしていく。

【ライブ写真ギャラリー】sanetii 1st One Man Tour『UNREAL』

幕開けを飾ったナンバーは、「大団円」。なんて大胆不敵なのだろう。sanetiiは、超満員のフロアに向けて「いこうぜ、東京!」「全員跳べ!」と高らかに呼びかけ、観客は何度も一斉ジャンプを繰り返しながら彼の想いに応えてみせる。彼は続けて、ステージのフチへと繰り出し「全員歌える?」と問いかけ、観客は懸命に歌声を重ねていく。その熱烈で美しい光景を前に、sanetiiは「合格です。」と一言。サングラスをかけているため、その奥の表情をはっきり見ることはできないが、口元から笑顔であることが伝わってくる。間奏前には激烈なシャウトをきめ、展開が重なるたびにフロアがさらなる熱気で満たされていく。文字通り大団円のような盛り上がりだ。
「さぁ、始まっちまったよ、東京!」「全員、後悔のないように。俺も後悔のないように。」そう告げたsanetiiは、立て続けに「Game」「Gunjo!」を、そしてギターを担ぎ「MARSHAL DOG」を披露していく。4公演目ということもあり、バンドメンバーとの息もぴったり。活動形態としてはソロのシンガーソングライターだが、信頼するバンドメンバーと共に放たれる彼の数々のナンバーは、まさにロックバンドとしての表現そのもの。狂おしいほどに熱く、それぞれのメンバーの人間味を感じられるほどに生々しく、最高にエモーショナルだ。続けて、「今から、氷点下マイナス1,000°!」という言葉を添えて「アイスベースガール」へ。sanetiiは、「せっかくのワンマンライブなのに、恥ずかしがってる奴がまだ20人いるぞ!」と容赦なくフロアを煽り倒していく。もちろん、観客も負けていない。「リスミーリスミー」のイントロが流れ、「さぁ、タイトルコールできる人!」とsanetiiが呼びかけると、観客が特大コールをばっちりきめる。その後も、「東京、歌え!」という呼びかけに応えて大合唱が巻き起こる。さらなる激烈な展開を見せた「君と悪魔」も壮絶だった。

sanetii、初のワンマンツアーで体感したロックアンセムの進化と解放

Photo by 武井勇紀

MCパートでは、あまりにも感極まってしまったが故に、これまでの3公演と比べて今回が一番歌詞を間違えてしまっていると振り返りつつ、「一番幸せな気分です。」「最高ですね。」と告げる。
感極まっているものの、いわく「心臓さわってほしいくらい」緊張していないという。こうしたリラックスした心持ちでライブができているのは初めてとのこと。ライブアーティストとしての大きな成長が窺える。ここからライブは中盤戦へ。イントロから観客の一斉ジャンプが何度も巻き起こった「寵愛族」。そして、会場のあまりの熱さを受けて観客の体調を気遣いつつ、「絶対倒れないように生きて帰れよ!」と叫び上げ、「ミカクニンハスキー」へ。フロアの一人ひとりの〈君〉を指差しながら歌った2番Bメロの一幕が特に忘れられない。続けて披露された「シーズインラヴ」によって、これまで沸々と熱し切っていた会場の空気が変わる。凛とした歌心を丁寧に届けてみせた、あまりにも美しい名演だった。彼のシンガーとしてのポテンシャルを堂々と示す展開はまだまだ続く。ここで一度バンドメンバーが退場。「シンガーソングライターっぽいとこ、みせよか。」と言いながらアコースティックギターを手にして、RADWIMPSの「セプテンバーさん」を弾き語りでカバー。
地声とファルセットの中間を縫うようなシルキーな歌声、その温かな響きが、いつものバンドセットの時以上に鮮やかに際立っていた。続けて、弾き語りで「maybe life」を披露。すぐ隣で優しく語りかけてくれるような、また、みんなではなく自分だけに胸の内の心境の全てを吐露してくれるような、あまりにも親密なパフォーマンスだった。

sanetii、初のワンマンツアーで体感したロックアンセムの進化と解放

Photo by 武井勇紀

再びバンドメンバーがステージイン。いよいよライブは終盤戦へ。スタジアムロック級の壮大なスケール感が立ち上がる「レイリー」は、イラストレーターの生活が手掛けたイラストを大々的にフィーチャーした映像演出と相まって、間違いなくこの日の公演の最大のハイライトの一つになったと思う。切実にして勇壮な響きを放つ「ハローニューエンド」のギターロックアンセムとしての覇気にも痺れた。ここから、全世界へ向けたライブ配信がスタート。「皆さんの魂が世界のネットワークとぶつかる。どっちが勝つか勝負しよか。」フロアから湧き上がる怒涛の大歓声。「ハッコツ」「宇陀噺」が立て続けに披露されるたびに会場全体の高揚感が際限なく増していき、「サンダーボルト」では、「跳べ!」「最大の声で。」というsanetiiの呼びかけに、観客が全身全霊で応えきってみせる。本編ラストは、渾身の代表曲「フォーエバートゥエンティーンズ」。
イントロから観客が懸命にタオルを回し、フロアが鮮やかに彩られる。その美しい光景を前に、彼は「一生忘れねえよ!」と叫んだ。そして2番サビの直前、〈最高に思う瞬間を今〉の後の歌詞を替える形で「ここでつくるぜ!」と力強く宣誓。そして「最後、全員で歌おうぜ。絶対後悔すんなよ!」という呼びかけを合図に、ラストのサビへ。一人ひとりの切実で懸命な想いが一つに重なり合うシンガロングパートがあまりに美しく、この曲が誇るロックアンセムとしてのポテンシャルの大きさを改めて実感した。

アンコールでは、まず「デッドエンド」「アメイジンググレイス」を披露。本編を超越していくような熱気が満たすフロアの光景を前に、sanetiiは、「こんな幸せな空間、見たことないぞ!」「お前ら、大好きだ!」と猛烈に叫び上げる。残すところ1曲。いつも支えてくれる人たちにとって、お守り、道標になるような曲と紹介されたのは、この日がライブ初披露となった最新曲「プロメテ」だった。美麗なストリングス、壮大なコーラスパートが光る勇壮なロックナンバーで、切なくて、美しくて、蒼い炎が燃えたぎるように熱い。そして、ロックアンセムとしての堂々たる風格もある。
今後、「フォーエバートゥエンティーンズ」と並ぶような代表曲になっていくと思う。「絶対幸せになれよ!」「俺も頑張るぜ!」エモーショナルに歌い上げながら、一人ひとりの観客に向けて真摯に語りかけるsanetiiの懸命な姿が深く胸を打つ。「またどっかでお会いしましょう、さよなら!」という晴れやかな別れの言葉をもって、この日のライブおよび彼にとって初となるワンマンツアーは終幕を迎えた。ライブの最後には、2026年3月から東名阪のクアトロツアー「sanetii 2nd One Man Tour『ANIMUS HAVEN』の開催が発表された。きっとその頃には、今回のツアーの時よりもさらに何段階もパワーアップしているはず。期待して待ちたい。

sanetii、初のワンマンツアーで体感したロックアンセムの進化と解放

Photo by 武井勇紀

セットリスト

1. 大団円
2. Game
3. Gunjo!
4. MARSHAL DOG
5. アイスベースガール
6. リスミーリスミー
7. 君と悪魔
8. 寵愛族
9. ミカクニンハスキー
10. シーズインラヴ
11. セプテンバーさん/RADWIMPS(弾き語りcover)
12. maybe life
13. レイリー
14. ハローニューエンド
15. ハッコツ
16. 宇陀噺
17. サンダーボルト
18. フォーエバートゥエンティーンズ
EN1. デッドエンド
EN2. アメイジンググレイス
EN3. プロメテ
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