9月28日、東京・LIQUIDROOM全館にてサーキットイベント「SHIBUYA SOUND RIVERSE」(SSR2025)が開催される。主催者のFRIENDSHIP.は、日本を代表する音楽デジタルディストリビューションサービスのひとつで、エッジの効いた多くのアーティストから支持を集めている。
2022年、2023年に続いて開催される今年も、コアな音楽ファンには垂涎モノのラインナップが注目をかっさらっている。そこで今回、そんな出演者の中から、YAJICO GIRLが新たな表現を目指して始動させたプロジェクトYJC LAB.から武志綜真(Ba)と古谷駿(Perc/VJ)、双子の兄souta(Vo/Gt)と弟rent(Dr/Cho)によるドラムンベース/ジャングルをベースにしたミクスチャーロック・デュオTyrkouazにご登場願い、対談を敢行。お互いに対する印象や、SSR2025へ向けた意気込みなどについて語ってもらった。

―みなさんの初対面は、今年7月に行われたイベント「燃点領域 vol.1」だったそうですね。

souta はい。でも、YAJICO GIRLの音源はすでに聴かせていただいてたので、自分としては安心して臨めました。その日の前後にあったのが、HIPHOPユニットとのツーマンだったり、ハードコアなメンツの中にぶち込まれてたりしてたので、この日は意外とホーム感がありましたね。

rent 普段からどこと対バンしても浮くバンドなんですけど、この日は親和性がある感じがしたんですよね。

武志 あの日、僕はTyrkouazのライブをリハから見させてもらってたんですけど、2人編成なのに、シーケンスとかいろいろと音を鳴らしながらパフォーマンスしているところにすごくシンパシーを感じました。特に、ギターを鳴らしながらドラムンベース的なところに落とし込んでいるのを見て、ちょうど僕たちも自分たちの曲をリミックスしてたところだったので、似た視点を持ってるのかなって。

―お互いのライブはどんな印象でしたか。

rent 一体何が行われているのか、ずっと手元を見てました(笑)。


souta 衝撃的でしたね。

―YJC LAB.みたいなスタイルはあまり見ないですもんね。

souta そうですね。DJ的な要素に楽器がうまく乗っていて、ちょうど自分たちが目指しているダンスミュージックとロック的要素が混ざってる感じだったのですごく参考になったし、勉強になりました。

―古谷さん的にはどうでした?

古谷 Tyrkouazのライブを観るのは初めてだったんですけど、シンプルに音がめっちゃデカくて、「かっけぇ!」と思いました。それは音量的なことだけじゃなくて、シーケンスと楽器がひとつにまとまってズドンときたんですよね。

―Tyrkouazは2023年4月結成、YJC LAB.は今年に入ってから、基本的には4人体制のプロジェクトとしてスタートしたということで、2組とも自分たちの形を追求している真っ最中だと思うんですけど、音楽的な現状はいかがですか。

武志 今、曲のリミックスを新たに進めているところで、音がパツパツし過ぎない方向というか、ノンコンプで落ち着きがあるけどダンスミュージックっぽさは保ってる、みたいな感じを目指してます。

古谷 「実験」というテーマを掲げているので、これから先もずっと悩みながらやるような気がしてます。

―「やりたいと思ったことは全部やってみよう」というモード?

武志 そうですね。難しそうでもまずはやってみようと。5人でやってるときに比べて、今はひとりひとりの意見が尊重されやすいというか。


古谷 ボーカルがいないから、「頑張らないと!」っていう気持ちに駆られてる感じもあって(笑)、それがうまく作用してるところもあると思います。

rent 僕たちは最近、DJを始めたり、クラブミュージック的なアプローチをどんどん取り入れてて。あと、ライブに関して言うと、曲をノンストップで繋いでいくようになって、DJ的に曲をつないだり、バンドとして演奏したり、どちらのスタイルもあるライブにしようとしてます。なので、最近は毎回曲のつなぎ方をすごく考えてますね。

武志 つなぎ、カッコよかったです。

rent ありがとうございます(笑)。YJC LAB.もすごくカッコよかったです。自分も最近パッドを使い始めてるんで、そういうところもよかったし、あとハイハットも……。

古谷 ああ、ハイハットは生でやってますね。

rent そう、あのシステムがカッコいいと思いました。楽しそうだったし、観てる側としても気持ちよかったです。

―さっき、武志さんが「ちょうど僕たちも自分たちの曲をリミックスしてた」と話していたのは、「街の中で(YJC LAB. mix)」のことですか? このリミックスではドラムンベース/ジャングル的なアプローチをしていますよね。


souta そう、「ドラムンベースだ!」って思いました(笑)。ドラムンベースが鳴り始めると、わかりやすく湧いちゃいますね。

―令和の時代にはあんまりないですもんね。

souta そうですね。ようやくNewJeansとかがナチュラルにドラムンベースを使うようになってきてますけど、ジャンルとしてはまだマイナーで。でも、すごくいいジャンルだと思います。

武志 歪んだギターが入れやすいのもいいですよね。ロックとの相性がいい。

souta そうですよね! でも、YJCみたいに、シティポップとか、ゆったりしたテンションの曲にドラムンベースが乗る気持ちよさもありますよね。自分たちもそういうことをやりたい気持ちはあるんですけど、今はなんとなくロックバンドのテンションでやってるので、バラードとかスローテンポな譜割りにドラムンベースを乗せる曲もいつかやってみたいなとは思ってます。

古谷 でも、既存のボーカルに合わないっていう悩みもあって。ボーカルはけっこう後ろノリで、ビートは前へ前へと行く感じだから、そこがちょっと難しくて。


souta でも、すごくカッコいいと思います。スローな楽曲が似合うボーカリストは羨ましいですね。メロウな表現ができるボーカリストだからこそ成り立つというか。自分はけっこう声を張るタイプなので、自分には出せない色やトーンがあると思います。

DJ的な視点とともに「ライブを意識して曲をつくる」

―表現の違いこそあれど、両者ともにバンドありきのクラブミュージックという点では同じ方向を向いてますよね。

古谷 そうですね。僕らの場合は、吉見(和起)がDJ的な視点でアレンジをやってるんですけど、彼はメンバーの楽しさをすごく気にしていて、ライブにおいても生演奏がしっかり入ってるほうがメンバーは楽しいだろうなって考えてくれてるんですよ。そういうこともあって演奏が映えるようなアレンジを意識してつくってる気がするし、それがバンド感につながってるのかもしれない。

souta 僕らはミクスチャーロックが起点にあって、自分たちのより深いルーツでもあるゲームミュージックをナチュラルにミクスチャーロックに取り入れる感じになってますね。

YJC LAB.×Tyrkouazが語る、“バンド発クラブミュージック”の魅力と可能性

YJC LAB.(Photo by Yuuki Oohashi)

YJC LAB.×Tyrkouazが語る、“バンド発クラブミュージック”の魅力と可能性

Tyrkouaz(Photo by Yuuki Oohashi)

―みなさんのようなアプローチのパフォーマンスをしているバンドはそこまで多くないし、ライブでの見せ方は悩みどころなんじゃないですか。

武志 本当にその通りで(笑)。編成がバンドっぽくないのに、バンドっぽい煽り方をしていいのか、とか。


souta 僕らも同じです。DJのようなつなぎ方をしつつ、自分はフロントマンとして前に立つので、わりとロックバンドっぽいスタンスなんですよね。以前はどっちかというと曲重視で、自分はあまり前に出ないようにしてたんですけど、今は逆に存在感を立たせるようにしたり、いろいろやってます。

rent 自分たちは普段、ライブハウスで活動しているんですけど、お客さんの中には1人でひたすら踊って帰る人もけっこういるんですよ。そういう自由に踊る人たちと熱いパッションでロックバンド的に盛り上がる人たちがうまく共存できたらいいなと思ってますね。でも、その辺はシーンによって違うのかもしれない。このジャンルならみんな手を上げるし、このジャンルなら体を揺らすし、このジャンルならモッシュする、みたいな。でも、自分たちはどこにも属してない活動をしてるので、その辺はずっと試行錯誤ですね。

古谷 我々も変にジャンルを横断しちゃったせいで、ノリ方がちょっと難しいのかも(笑)。

武志 CDとかで聴く分にはいいけど、ライブってなると一貫性が出しにくくて。

rent 大変なのはわかってるけど、茨の道を選んで進みたくなりますよね(笑)。

―これはもう、自分たちで新しいスタイルを構築していくしかないですよね。
どこの界隈に行っても、「俺らはこうだ」というものを堂々と見せていくしかない。

rent イノベーターですね(笑)。

―オリジナルなことをやってますからね。だからこそ、Tyrkouazなんかは特に、相談できる先輩があまりいなさそう。

souta (古谷と武志を見ながら)今日、まさに相談したいです(笑)。

一同 (笑)

rent こういう課題を共有できる存在って、本当にいないから。

―では、何か聞いてみたいことがあればどうぞ。

souta さっきの話の続きになりますけど、お客さんに対するアプローチはまさに今悩んでるところですね。

武志 YJCも今は明確なフロントマンがいないので、そこが難しくて。フロントマンが前に出てきてパフォーマンスしてくれたら、それだけでお客さんが一緒に踊ってくれたりするし、伝わりやすいと思うんですけど。

―そういう意味では今、吉見さんがフロントマン的な役割をしているんじゃないですか?

武志 そうですね。ただ、本人は「俺は本職じゃないから」って線を引いてて。慣れてないだけだと思うんですけど。

souta 確かにYAJICO GIRLっていう背景がある上でYJC LAB.があるんですもんね。Tyrkouazは、メインの客層っていうのがないんですよ。本当にそれぞれというか。でも、最近になってようやく追っかけ的な人たちが現れて、今年の夏からTikTokを頑張り始めたんですけど、その頃から客層が変わってきたんですよ。ファンっぽいお客さんが増えてきたというか。それまではいい意味でさっぱりした感じのお客さんが多くて。当日券でふらっと観に来てさっと帰る、みたいな。

古谷 我々の客層も割と近いと思います。

武志 それを意識したのかどうか、最近の曲の作り方にちょっと変化があって、「ライブを意識して曲をつくる」っていう言葉が吉見から出たことがあって、(今年2月にリリースしたアルバム『EUPHORIA DLX』収録の)「ユーフォリア」とか「Ebi Fry」はそういう意識でつくってましたね。

souta コール&レスポンスが入ったり。

武志 そうです。

rent 僕たちの「Windy Surf」にも〈ラララ〉で歌うフレーズが元々あるんですけど、最近はそれがコール&レスポンスっぽくなってきたので、セトリの最後のほうに入れることが増えてきました。でも、最初はそんなことは想定してなかったので、ライブの1曲目にやることが多かったんですけど、あとになってから「これってコール&レスポンスできるよね」って周りから言われて、「あ、そうなんだ」って(笑)。そこからだんだんみんなで歌う感じになったっていう。だから、今のところはまだ、ライブとかコール&レスポンスを意識して作った曲はつくったことはないですね。あくまでも曲主体で発信してる感じです。

古谷 それはいわゆる、ライブで曲が育つってやつじゃないですか。意図してなくても自然にコール&レスポンスが起こるっていうのはめっちゃ理想的だと思いますよ。

FRIENDSHIP.は「なんか面白いことやってるな」ってアーティストが多い

―さて、次にみなさんが共演する場は、「SHIBUYA SOUND RIVERSE 2025」になります。これはFRIENDSHIP.のショーケースイベントですが、アーティスト目線でFRIENDSHIP.という場所に対してどういうことを感じていますか。YJC LAB.は、YAJICO GIRLも含めてFRIENDSHIP.とは付き合いが長いですよね。

古谷 そうですね。FRIENDSHIP.は音楽的に尖った人たちが多い印象です。

武志 昔から一緒に対バンしてて、「なんか面白いことやってるな」って感じた人たちがFRIENDSHIP.に所属してた、みたいなことが多くて。揺らぎとか、ベルマインツとかもそうですけど、やりたいことが明確にあるアーティストが多くていいですよね。ライブを観るのが楽しみです。「今、どんなライブしてるんだろう?」っていうシンプルな好奇心があります。

rent 今回の出演者でいうと、くゆるのメンバー全員、僕が通ってた大学の軽音サークルの友達なんですよ。もっと言うと、ギタリストのウエダリュウタには「ethergaze」って曲にフィーチャリングで参加してもらったこともあって。なので、もしかしたら今回この曲はやるかもしれないですね。

―YAJICO GIRLとしては、2022年にも出演されてますよね。「SSR」はどんなイベントなんですか。

古谷 ……今、真っ先に思い浮かんだのがあまりよくないことだったんですけど、転換が大変そうなバンドが多かったなって(笑)。それだけ音楽性が尖ってるというか、こだわりの強い人たちが多かったのか、イベントとしてはめっちゃおもしろかったけど、転換はめっちゃ押してたと思います(笑)。

―出演アーティストの特殊性を説明するにはかなりわかりやすいですね(笑)。一方、Tyrkouazは今回が初出演です。

souta 今回のラインナップを見ただけでも、他にはないイベントだと思いました。それぞれの個性がすごく光ってる。

rent うん、個人的にも激アツな組み合わせだと思います。各方面で尖ってるバンドが集まってて、豪華だなって。

―今回、特に注目してる出演者は?

rent 実は以前、SPARK!!SOUND!!SHOW!!のメンバーが僕らの自主企画を観に来てくれて、今回ついに対バンできるので嬉しいです。あと、個人的にはEnfantsもめちゃくちゃ好きで、前に対バンしたことが一度あるんですけど、また一緒にできるのが嬉しいです。本当に尊敬してるバンドです。

―この日は得るものが多そうですね。

rent そうですね。いろいろと吸収したいです。あとは転換を頑張ります(笑)。

―あはは! 古谷さんと武志さんが今回注目してるバンドは?

武志 今回のEPはEnfantsのベースの(中原)健仁さんからアンプをお借りしてレコーディングしたんで、聴いてもらえたら嬉しいですね。

古谷 僕は揺らぎですね。僕たちが関西で活動してた頃にもよく対バンしてたんですけど、ジャンル的な違いもあってしばらく一緒にやってなくて。でも、今回久々に共演するのですごく楽しみです。

―当日、Tyrkouazはどんな見せ方をしていきますか。

souta ある意味、僕らがいちばん正攻法で臨めるイベントだと思ってます。ジャンルが偏っていないし、どのバンドも凛としているから、自分たちも流されずに、「これがTyrkouazです!」というライブができる気がしてます。

―YJCはどうですか。

武志 4人で話し合ってセットリストを決めたんですけど、こういうイベントだし、尖ったセットにしても受け止めてもらえるんじゃないかって話も最初はあって。でも最終的には、ライブとして丁寧に見せられるセットリストにしました。

古谷 この編成で出るライブとしては、これまででいちばん大きい規模になるので、ある程度会場の大きさも意識しながら臨めたらと思ってます。

YJC LAB.×Tyrkouazが語る、“バンド発クラブミュージック”の魅力と可能性

Photo by Yuuki Oohashi

―では最後に、この日来てくださるお客さんに向けてメッセージをお願いします。

souta 「SSR」に来るお客さんは本当に音楽が好きな方が多いと思うので、自分たちはコアなパフォーマンスをしつつ、音楽の面白さもしっかり伝えられるようなライブをしたいです。あと、初めてTyrkouazを見るという人も多いと思うので、自己紹介になるようないいライブができたらなと思ってます。

rent このラインナップを観に来るお客さんには、ぜひTyrkouazを観てもらいたいですね。きっと気に入ってもらえるんじゃないかと思います。僕も観たいバンドがいっぱい出るので、タイテが被ってるかもしれないですけど(笑)、ぜひ僕らのライブも観てほしいです。

古谷 YAJICO GIRLから知ってくれてる人もいると思うんですけど、YJC LAB.ではまた違うことをやってるのでそれもぜひ観てほしいですし、LIQUIDROOMの1組目ということで出演時間は早いけど見逃さないでほしいです。

武志 LIQUIDROOMということで編成的にも映えると思うし、1組目という出順とも相性がいい形態だと思ってるので、しっかり空気を作りたいですね。

YJC LAB.×Tyrkouazが語る、“バンド発クラブミュージック”の魅力と可能性


【SSR2025】SHIBUYA SOUND RIVERSE
9月28日(日)OPEN/START 12:30
東京・恵比寿Ebisu LIQUIDROOM、KATA、LIQUID LOFT、Time Out Cafe & Diner

<LIQUIDROOM> SPARK!!SOUND!!SHOW!! | ODD Foot Works | Enfants | DURDN | 揺らぎ | エルスウェア紀行 | YJC LAB.
<KATA> Gateballers | aldo van eyck | Blume popo | Tyrkouaz | ベルマインツ|くゆる | GeGece
<LIQUID LOFT> 阿部芙蓉美 | ゆうらん船 | Foi | 鳥兎-uto- | kiwano | Rol3ert | 楓幸枝
<TimeOut Café & Diner> JunIzawa | VivaOla | SPENSR | Tamuraryo | WAZGOGG, Koshun Nakao | KEISUKE SAITO

YJC LAB.×Tyrkouazが語る、“バンド発クラブミュージック”の魅力と可能性


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YAJICO GIRL「YJC LAB. 02」
配信中

1. Life Goes On - YJC LAB. mix
2. Better - YJC LAB. mix
3.  幽霊 - YJC LAB. mix
4. 街の中で - YJC LAB. mix

Subscription&DL
https://YAJICOGIRL.lnk.to/YJCLAB.02

Tyrkouaz「MEIQ」
配信中

Subscription&DL
https://friendship.lnk.to/meiq_tyrkouaz
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