―ピアノを弾き始めたのはいつだったんでしょう?
Friqtao:父親がピアノを弾いていて、1歳離れた兄とふたりでその姿に憧れていたら、父が僕が4~5歳の時に兄と一緒にピアノ教室に入れてくれたんです。そのうち兄がすごく上手くなって悔しくなってピアノ教室を辞めて、ギターをやり始めました。7~8歳から17歳ぐらいまでギターをやっていて、その期間中に兄がイギリスに留学して、全寮制の音楽学校でピアノを生き生きと弾いている姿を羨ましく思っていたら親に「あなたも同じ学校に行ったら」と言われてその音楽学校に入学したんです。そこではクラシックギターを専攻していたんですが、結局ちょくちょくピアノも弾いていました。
―そこまでピアノに惹きつけられた理由は何だったのでしょう?
Friqtao:初めて自転車に乗れた時やサッカーボールを蹴った時のことを体は覚えていますよね。マッスルメモリーというやつです。自分が音楽の道に飛び込んだきっかけはピアノだったので、どうしてもピアノを弾く喜びが忘れられなかったのだと思います。
―最初に好きになったアーティストは誰でしたか?
Friqtao:たくさんのアーティストを好きになったんですが、一人挙げるとなるとマイケル・ジャクソンです。
―幅広い曲をピアノでカバーしていますが、リスナーとしても雑多に楽曲を聴くんでしょうか?
Friqtao:聴くジャンルに全くこだわりはないですね。僕にとって音楽は食事やアートと一緒で、食べ物もまずは食べてみて美味しいか美味しくないか判断しますよね。美味しかったら追究すればいい。まずは聴いてみる。
駅のピアノからTikTokへ バズが生んだ新たな道
―駅のストリートピアノで演奏し始めたのは、いつどういう形だったんでしょう?
Friqtao:イギリスの大学で美術史を習っていたんですが、1年どこかに必ず留学するという大学のシステムがあって、僕は母国のパリを選び、1年間パリで仕事しながら学ぶという期間がありました。パリは街中が音楽が溢れているので、駅やショッピングセンター、道端といったさまざまなところにピアノが置いてあります。僕はピアノに対して中毒的なところがあるので(笑)、通勤で使う駅にピアノが置いてあると弾かずにはいられなかった。会社に遅刻しそうになっても弾いちゃうんです。そのうち人がどんどん増えていって「FacebookとかInstagramとかTikTokはやってないの?」と聞かれるようになりました。一切やってなかったので「やってないんです」と答えていたんですが、10人ぐらいに言われたので思い切ってTikTokを始めました。人にどう思われてもよくて、自分の演奏を作品に残すにはいいのかなって。3回目か4回目に投稿したのが何気なく弾いたハリー・スタイルズの「As It Was」で、それがものすごくバイラルしたんです。仕事から帰ったらフォロワー数が一気に増えて、コメントも何千と来てました。
―カバー曲がバズる前からミュージシャンになりたいと思っていたんですか?
Friqtao:大学で美術史を専攻していたので、将来的には美術品のオークションの仕事や博物館や美術館で働くのかなと想像したらちょっと違うかなと思ったんですよね。子供の頃の夢はサッカー選手だったんですが、20代で選手になれてないとなかなか厳しい。曲はずっと作っていたのでそれをみんなに聴いてほしいという漠然とした気持ちがありました。運よくTikTokによってカバー動画はバイラルしましたが、最終的には自分の曲としてちゃんと残していきたいという気持ちが膨らんでいった。だから実際にそれができるようになって夢のようです。そのために相当な努力を重ねました。
―特にどんな努力をしたんでしょう?
Friqtao:SNS時代においてたくさんの人がアーティストになりたいとか有名になりたいという気持ちを持っている中で、一番重要なのはブランド力があるかどうかだと思いました。どういうストーリーがあって、どういう人で、どういうビジョンがあるか。僕の同世代はR&Bやヒップホップ、エレクトロなどを発信していることが多いですが、インストの楽曲を発信するケースはそんなに多くない。しかも僕はストリートっぽい見た目なので、こういう見た目でインストの曲を出すことで意外性があるんじゃないかと。
―その努力の結果リリースされることになったデビュー曲「Run away」はどういう風に生まれていったんでしょう?
Friqtao:僕のバズったカバー動画のひとつにカニエ・ウェストの「Runaway」の動画があって、あの曲はひとつのキーを淡々と弾いていて、それが長く続いたのちに曲が展開されていきます。とてもシンプルなことをやっているのに、みんながワクワクする曲になっているのがとても面白いと思いました。僕の「Run away」も「Runaway」のようにひとつのキーを長く弾くアプローチで始まります。僕が「Runaway」のカバーでバズったことを知っている人は「あの曲のカバーかな」と思うと思うんですが、そこから自分の曲に展開していくことで驚きを与えたかったんです。
@friqtao Run away - OUT on Friday the 12th of September #Runway #publicpiano #friqtao ♬ original sound - q
―シンプルで美しく繊細なメロディの曲ですが、何かイメージはあったんでしょうか?
Friqtao:ある日即興で演奏してて、同じキーを100回以上弾いてたら生まれてきたんです。「Runaway」には逃げるっていう意味があるので、草原で何かから逃げるために猛ダッシュをしている情景を浮かべながら作りました。ピアノの音にブーメランのように投げてもまた返ってくるようなエフェクトをかけたのがこだわったポイントです。それをかけることでドライな音ではなく、夢心地のような雰囲気が出ました。左手はずっと同じリズムを弾いて、右手では遊んでいますね。
 
                    
                デビューEP『Lifestream』に込めた”人生の流れ”
―初のEPには1曲目に収録されている「Lifestream」と同じタイトルが付いていて、ライブ配信がデビューのきっかけだったことが伝わるタイトルです。
Friqtao:ハリー・スタイルズの「As It Was」がバズってから、一年で320日間くらいライブ配信をしていた中で人との交流を大事にしていたということがまずひとつ。LifeとStreamという単語の組み合わせには人生の小川という意味があって、いろいろな川が混ざり合うのが人生です。そこで生まれてくる感情──例えば、初めて自転車に乗れた時の感情や母親の手料理を食べてる時のちょっとした安心感、初恋、風が顔に当たった時の心地よさ、そういった喜びも悲しみもあらゆる感情を感じてほしいという気持ちでこのタイトルにしました。
―「Woke up in Japan」はジブリ作品にインスパイアされたそうですね。
Friqtao:小さい頃からジブリ映画が大好きです。画の美しさはもちろん、音楽にも惹かれます。僕は今回が初来日なのでこの曲を書いた時はまだ日本に行ったことがなかったんですが、ジブリの世界に飛び込んでみたくて「朝、目が覚めてジブリの世界にいたらどんな気持ちになるんだろう?」と想像して作曲し、このタイトルを付けました。数日前、初めて日本に到着し日本で目が覚めたので願いが叶ってとても気持ちが良かったです(笑)。
―『インターステラー』や『ハリー・ポッター』といった映画音楽もカバーしていますが、ジブリ以外の映画作品からインスピレーションをもらうことも多いんですか?
Friqtao:フランスでヒットした『Intouchables/最強のふたり』という映画の劇判はとてもピアノが美しくて影響を受けています。ハンス・ジマーが代表的ですが、ピアノで映像に壮大な音楽を付けることはいつかやってみたいことのひとつです。
@friqtao Interstellar #interstellar #hanszimmer #publicpiano #friqtao ♬ original sound - q
―既に特異な存在感を放っていますが、どういうアーティストになりたいと思っていますか?
Friqtao:僕の世代でインストをやることに大きな可能性を感じています。まずはツアーをやれるようになりたいと思っているのですが、古典的なピアノのライブは、ステージにピアノが置いてあってみんなが席に座ってじっと静かに聴くようなものが多いです。
 
                    
                 
                    
                Friqtao(フリクタオ)
EP『Lifestream』
Avant Garden
配信中
配信リンク:https://orcd.co/lifestreamep
 
                         
                             
                                         
                                         
                                         
                                         
                                         
                                         
                                         
                                         
                                         
                                 
                                 
                                 
                                 
                                 
                                 
                                 
                                 
                                 
                     
                     
                     
                     
                     
                     
                     
                     
                     
                     
                     
                    

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