ダニとデボラのグルジェル母娘を中心としたダニ&デボラ・クアルテート(以下、DDG4)が、12月11日にブルーノート東京でライブを行う。”Coffee&Music”と題された今回の来日公演のタイミングは、同名コンピレーションの第3弾に合わせたもの。
また、2025年は、マイケル・ジャクソンビートルズなどのカヴァーばかりを収録したDDG4の『NEON』の発表から10周年ということで、同アルバムの収録曲も披露される予定だ。メールでのインタビューには、ヴォーカル/作曲などを担当するダニが応えてくれた。

―シリーズ第3弾の『Coffee&Music/NOVOS COMPOSITORES』はDDG4のドラマーで、あなたのパートナーでもあるビッグ・ハベーロ(Thiago”Big” Rabello)のプロデュースですね。彼がプロデュースしたのは、今回のコンピレーション全体の音楽性と関連していると推察しますが、その点を含めて、彼がプロデュースすることになったいきさつや理由を教えてください。

ビッグ・ハベーロと私は、ダ・パ・ヴィラーダ・スタジオおよびプロダクション会社を運営しています。私たちはここサンパウロで20年間に渡り、あらゆるジャンルのミュージシャンを迎え入れ、幅広い音楽スタイルの作品に携わってきました。ビッグ・ハベーロはドラマーであるだけでなく、とても才能あるプロデューサーであり、エンジニアでもあります。彼はDDG4のすべてのアルバムをプロデュースしているだけでなく、ブラジルの音楽シーンで多くのアーティスト、たとえばマリア・ガドゥやダニ・ブラック、アミルトン・ヂ・オランダなどと一緒に仕事してきましたし、これまでに色々なプロジェクトでラテン・グラミー賞を4回受賞しています。私たちは日本のランブリング・レコーズと長年のパートナーシップを築いていて、ブラジルと日本を繋ぐ活動をより広げるために力を合わせています。2019年、ランブリング・レコーズからビッグに、”Coffee&Music”のシリーズの第3弾のプロデュースを依頼された際、今回は”ノーヴォス・コンポジトーレス”版として制作するのが最適だと考え、さまざまな要素を取り入れることにしました。ちなみに今回私はアーティスティック・ディレクターとして、とりわけ彼と二人でアーティストや楽曲の選定に取り組みました。

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ダニ&デボラ・クアルテート

―『Coffee&Music/NOVOS COMPOSITORES』の最後を飾る「Meet me for coffee」は、ダニさんが作った曲ですね。
歌詞には、日本語の”こんばんは”も出てきます。

この曲は、日曜日の夕方に”Coffee&Music”のシリーズの企画監修者で、鎌倉の”カフェ・ヴィヴモン・ディモンシュ(café vivement dimanche)”の店主である堀内隆志さんのカフェで、彼と一緒にコーヒーを飲むということを描いたものです。私たちは日本のことをずっと恋しく思っていたのですが、 2019年末から世界的なコロナ禍が始まり、しばらく日本へ行けないことが分かりました。そんなときに私が感じたのが、”サウダージ(saudade)”という感情です。これは、誰かや何かを恋しく思うときに使うブラジル・ポルトガルの言葉で、とても温かい愛情が込められています。”Meet me for coffee”は、私たちがカフェ・ヴィヴモン・ディモンシュで、他のお客さんたちと”こんばんは”と挨拶しながら、”一緒にコーヒーか、お茶を飲もうよ”と言っているような気持ちを表した曲です。

―第一弾シングルは、ト・ブランヂオリーニ(Tó Brandileone)の「Manhã」とフレデリコ・エリオドロ(Frederico Heliodoro)の「Coffee Place」のカップリングですね。この2曲が選ばれた理由を教えてください。ややエレクトロ色が濃い「Coffee Place」は、『Coffee&Music/NOVOS COMPOSITORES』全体のサウンドの傾向と繋がってるように思いますが。

ト・ブランヂオリーニとフレデリコ・エリオドロは、これまでのツアーで私たちと一緒に日本に来たことがあります。彼らはカフェ・ヴィヴモン・ディモンシュやランブリング・レコーズとも特別な関係を持っており、今回のアルバムのために特別にこの2曲を書き下ろしてくれました。ビッグ・ハベーロは、『Coffee&Music/NOVOS COMPOSITORES』をより活気に満ちた、現代的なものにするために、エレクトリック・サウンドのテイストを加えました。
そしてそのサウンドは、楽曲たちの持つ雰囲気と完璧にマッチしていると私は思います。

ダニ・グルジェルは2007年からサンパウロの若手作曲家をゲストに迎えた”ダニ・グルジェル&ノーヴォス・コンポジトーレス(新しい作曲家たち)”というコンサートを定期的に行い、そのメンバーをベースにしたソロ名義のアルバムを発表してきた。シンコ・ア・セーコ(5A Seco)という5人組としてもアルバムを発表している前記のト・ブランヂオリーニや、彼と同じく『Coffee&Music/NOVOS COMPOSITORES』に参加しているタチアナ・パーハ(Tatiana Parra)などが、このノーヴォス・コンポジトーレスを通じて知名度を上げたシンガー・ソングライターだ。

ーダニさんが始めたノーヴォス・コンポジトーレス関連のプロジェクトについて改めて教えてください。

私が最初のプロジェクトをプロデュースし始めた頃、ブラジルの多くのシンガーたちは、エリス・レジーナが60年代後期から70年代にかけて歌っていた有名なブラジルのポピュラー音楽、MPB(Música Popular Brasileira)のカヴァーを録音していました。ですけど、私はエリスが歌ったMPBのカヴァーをそのまま録音することより、むしろ当時の彼女がどんなソングライターの曲を選んでいたのかを理解しようとしました。当時エリスが曲を取り上げた作曲家たちは、まだキャリアを始めたばかりの新進作曲家だったのですが、今ではそんなMPBの多くがブラジル音楽の”古典”と呼ばれています。そこで私は、エリスのやり方そのものから学び、自分自身にとっての”新しい人たち”を探すことにしました。そして私は、新世代の作曲家たちとコンサート・シリーズを始め、その活動は私がソロ名義で発表した2枚のアルバム『Nosso』(2008)と『Agora』(2009)に発展しました。以来、ノーヴォス・コンポジトーレスと呼ばれた新進作曲家の多くは、約20年のキャリアを積み重ねて立派なアーティストとなり、今ではブラジルの若手の手本のような存在になっています。私は、そんな才能豊かな人たちを選べたことを本当に嬉しく思っています。

ー『Coffee&Music/NOVOS COMPOSITORES』には、タチアナ・パーハによるスティングの「Englishman in New York」が収められていますね。
”コーヒーと音楽”をコンセプトにしたコンピレーションに、紅茶の本場である英国人のスティングがニューヨークでの体験をもとにした、<I don't drink coffee, I take tea my dear>という一節で始まるこの曲のカヴァーが入っていることに、すごく洒落っ気を感じました。

ビッグ・ハベーロと私は、参加アーティスト全員と一緒に選曲したのですが、タチアナには多くのオリジナル曲が並ぶ中、カヴァーで彩りを添えてもらうために参加してもらいました。ただし、単にカヴァーを選曲するのではなく、最初から”センスのある選択”にしたかったのです。私は、このカヴァーの、”お茶(tea)”に関する歌詞のくだりも大好きです。私たちは日本茶が大好きで、ほうじ茶、緑茶、玄米茶など、どれもお気に入りですから。

―あなたと、『Coffee&Music/NOVOS COMPOSITORES』にオリジナル曲が3曲収録されているト・ブランヂオリーニは、高校の同級生だったそうですが、デボラは『Tó Brandileone』(2007)でキーボードを演奏していますし、彼は過去のDDG4の来日公演にも同行しています。ですから、ト・ブランヂオリーニはDDG4の音楽的ファミリーの一員と言ってもいいと思いますが、あなたから見たヴォーカリストやソングライターとしての彼の魅力はどんなところですか?

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ト・ブランヂオリーニ

ト・ブランヂオリーニは本当に素晴らしいソングライターで、その点が私にとって最も魅力的なところです。私は、トの曲を歌うのが大好きですし、彼は他のアーティストへの作曲家としても大きな成功を収めています。また、トは私の最初のバンドのメンバーでもあり、07年に発表したEPではギタリストを務めていました。

―そのト・ブランヂオリーニは、12月のDDG4のブルーノート東京公演にもゲストとして同行しますね。今回のDDG4の来日公演は、どんなステージになるのでしょう?



今回の来日公演は『NEON』のリリース10周年を祝うと同時に、『Coffee&Music/NOVOS COMPOSITORES』と、DDG4の新曲「Rilerá」の発表も記念しています。このコンサートは日本のために特別に構成されたもので、世界のどこでも同じ形では行われません。
ですから、ぜひ観客の皆さんにも一緒に歌って欲しい。特に「Rilerá」のコーラスを一緒に歌ってもらえると嬉しいです!

―その12月3日に配信リリースされる「Rilerá」を聞かせてもらいました。この ”自由”を意味する曲名の「Rilerá」には、メンバーの子供たちもコーラスで参加しています。この新曲は、現在制作中のDDG4のニュー・アルバムに繋がっているようですね。

「Rilerá」は、大人であることの枠や制約から自分を解き放ち、子どもたちのように自由に創造することを指しています。さらに言うと、「Rilerá」とは、まったく新しいものを生み出すことを恐れず、心を穏やかにして創作に向き合うという心のあり方でもあります。このことは、私たちが子どもたちから学んだ大切な教えです。この精神を、来年リリース予定のニュー・アルバムの制作にも生かしています。

<リリース情報>

『コーヒー&ミュージック ノーボス・コンポジトーレス』
発売中
価格:2970円(税込)
配信 https://orcd.co/coffeeandmusic
=収録曲=
1. Manhã/Tó Brandileone
2. Ao sabor de café/Jessica Gaspar
3. Coffee Place/Frederico Heliodoro
4. Aquele chá/Leandro Léo
5. Se esqueci de te esquecer/Tó Brandileone
6 Asilo/TóBrandileone
7 Lovely Rita/Tatiana Parra
8. Mr. Kaldi/Frederico Heliodoro
9. Café contigo/Leandro Léo
10. Englishman in New York/Tatiana Parra
11. Meet me for coffee/Dani Gurgel

http://www.rambling.ne.jp/catalog/cam-novos-compositores/

『NEON』
発売中
li.sten.to/6bsrwn1t
=収録曲=
1. Kiss from a Rose  (オリジナル:シール)
2. Sweet Child OMine (オリジナル:ガンズ・アンド・ ローゼズ)
3. Human Nature (オリジナル:マイケル・ジャクソン)
4. September (オリジナル:アース・ウィンド&ファイアー )
5. Sir Duke (オリジナル:スティーヴィー・ワンダー
6. Express Yourself (オリジナル:マドンナ
7. Smells Like Teen Spirit (オリジナル:ニルヴァーナ
8. Get Back (オリジナル:ビートルズ)
9. Rock With You (オリジナル:マイケル・ジャクソン)
10. Every Little Thing She Does is Magic (オリジナル:スティング)

<ライブ情報>

DANI & DEBORA GURGEL QUARTETO with TÓ BRANDILEONE "Coffee & Music"
2025年12月11日(木)BLUE NOTE TOKYO
[1st]Open5:00pm Start6:00pm [2nd]Open7:45pm Start8:30pm
https://www.bluenote.co.jp/jp/artists/dani-debora/

ダニ&デボラ・グルジェル・クアルテート:
ダニ・グルジェル(ヴォーカル)
デボラ・グルジェル(ピアノ)
シヂエル・ヴィエイラ(ベース)
チアゴ・ハベーロ(ドラムス)

Guest:
ト・ブランヂリオーニ(ヴォーカル、ギター)

後援:駐日ブラジル大使館
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