中国は近年、愛国思想をより強めており、2021年9月から使われている新しい教科書には習近平国家主席をたたえる内容が盛り込まれたという。これには、小学1年生から愛国主義者を育てる狙いがあるようだ。


 こうした動きは日本好きな中国人にとっては「肩身が狭い」思いのようで、中国のQ&Aサイト・知乎にこのほど「愛国者なのに日本に魅力を感じてしまうのだが、どうしたら良い?」と質問するスレッドが立てられた。

 スレ主は、自分は愛国者だと強調しているが、同時に幼いころから日本アニメを見て育ち、大きくなってからは日本ドラマも見るようになって、ますます日本に対する憧れの気持ちが強くなっているという。寄せられたコメントには、「愛国とは、中国以外の国すべてを憎むことではないはず」、「君が日本を好きになろうと、韓国を好きになろうと何の問題もない」など、愛国主義とほかの国に好感を持つのは別の問題だ、との回答が目立った。

 しかしそれは建前で、実際には日本を好きだと公言しづらい雰囲気があるのは確かなようだ。「本当のことを言うと売国奴と言われるが、噓を言うわけにもいかないので、回答しない」という人もいれば、「日本を好きなのは分かるが、国が日本関連の事物を禁止したら国の言うことに従うべきなのは分かっているね?」と釘を刺す人もいた。

 正論が通じない社会になっているためか、分かりやすく例えを使う人もいて、「日本が好きだからといって、侵略者のために道案内をするわけではない」と主張した中国人ユーザーは、「日本の良いところも悪いところも直視するのは良いことのはずだ」と訴えていた。日本に留学しているという中国人ユーザーは、「愛国は目隠しするということではない」として、日本を実際に自分の目で見て欲しいと伝えていた。

 このスレッドには極端な愛国者の姿はなく、日本好きの人が集まっていたようだが、本音と建前のはざまで困惑している様子が伝わってくる。自分の好きなことを安心して公言できる社会が理想的と言えるが、中国の現状にはそれを許さない雰囲気があるようだ。(編集担当:村山健二)(イメージ写真提供:123RF)
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