深セン証券取引所の創業板への上場を目指す、広州市聚賽龍工程塑料(301131/深セン)が2日、新規公開(IPO)に向けた公募を開始する。1195万株を発行予定で、公募価格は30.00元。
同社は1998年設立の民営企業で、2016年に株式会社化した。改質プラスチックの研究開発、生産、販売を主業務としており、PP、ABS、PC、PBT、PET、HIPS、PPO、PPSなどを材料とし、導電、導磁、抗静電気、導熱、抗菌、難燃、耐スプレーなど様々な機能性を付加した改質プラスチック製品を手掛けている。製品は家電製品、自動車工業、電子通信、医療・ケア用品などの分野で広く利用されており、主な顧客には美的、海信、東風汽車、トヨタなどを含む。売上構成では、PP(ポリプロピレン)改質プラスチック製品が6割前後を占めており、売上のほぼ100%が中国国内で、そのうち50%前後が広東省となっている。
21世紀に入って以降、世界の家電、自動車、電子通信、新エネルギーの各産業で中国へのシフトが進んだこと、中国経済の急速な発展により、現在中国は世界最大のプラスチック材料市場となっている。プラスチック材料の用途が既存産業から新興産業やハイテク産業に広がるにつれて様々な特性を持たせた改質プラスチックの需要は日増しに高まっており、中国国内で一定の規模を持つ企業による改質プラスチックの生産量は2010年の705万トンから19年には1955万トンまで増え、年平均12%のペースで成長した。
また、中国のプラスチック応用率は先進国より依然として低く、プラスチックと鋼鉄が世界平均で5:5、米国は7:3であるのに対し、中国は3:7となっており、中国において改質プラスチックを含むプラスチック材料の需要の伸びしろがなおも大きいことがうかがえる。また、新エネルギー車分野では車体の軽量化が航続距離を大きく左右することから、軽量で丈夫なプラスチック材料が求められており、同社を含む高性能プラスチック業界にとっては新たな成長のエンジンとなり得る。
一方で、中国内ではプラスチック生産企業が非常に多く、競争が激しくなっている。同社の2019年における改質プラスチック市場シェアは0.61%に留まっており、製品の技術レベル向上、製品ラインナップの充実と新たな市場、顧客の開拓による競争力の強化、シェアの拡大が同社にとって大きな課題だ。また、同社では2020年の新型コロナ感染拡大期に医療用マスクが不足した際に、マスク用改質PP製品の生産を拡大したが、感染の収束に伴い需要が減少して損失が生じており、今後家電や自動車などの分野で市場シェアを高めなければ、利益が生み出せないリスクがある。
2021年12月期の売上高は13億308万元(前期比17.59%増)、純利益は6409万元(同16.73%減)。(編集担当:今関忠馬)(イメージ写真提供:123RF)