深セン証券取引所の創業板への上場を目指している、深セン市菲菱科思通信技術(301191/深セン)が5月17日、新規公開(IPO)に向けた公募を開始する。1334万株を発行予定で、公募価格は72元。
公募終了後、速やかに上場する見込みだ。

 同社は1999年設立の民営企業で、2016年に株式会社化した。ネットワーク設備の研究開発、生産、販売を主業務とし、ODMおよびOEM形式にてネットワーク設備ブランドと提携し、スイッチングハブ、ルーター、無線製品、通信設備コンポーネントなどの研究開発、製造サービスを提供している。製品の主なターゲットはプロバイダー、行政、金融、教育、エネルギー、電力、交通、中小企業、病院などの法人、産業向けで、個人消費市場向け製品も手掛けている。20年における同社の市場シェアは、スイッチングハブが1.38%、ルーターが1.05%となっている。

 電子機器製造受託(EMS)市場は、EMS企業のサービス能力向上に伴いコンシューマーエレクトロニクス、ネットワーク通信、自動車電子をはじめとするさまざまな分野にサービス提供範囲が広がり、成長を続けている。2019年の世界におけるEMS市場規模は4642億米ドルで前年比16%増加しており、無線ネットワーク、モバイル決済、情報セキュリティ、IoTなどの応用技術の発展、電子製品の世代交代や技術革新などに伴ってさらに成長し、22年には6748億ドルに達するとみられている。その中で中国の存在は大きく、中国を含むアジア太平洋地域のEMS市場規模が世界全体の約7割を占めている。

 また、同社が手掛けるネットワーク設備業界も、クラウドコンピューティング、ビッグデータ、SNS、IoTといった新興技術により新たな発展のチャンスを迎えるとともに、中国政府が「インターネット+」「工業4.0」「新型インフラ建設」などの産業奨励政策を打ち出していることで、持続的な成長を実現している。2021年1~6月期の中国のスイッチングハブ市場規模は20億8300万ドルで前年同期比17.06%増、企業向けルーター市場は3億5800万ドルで同17.90%増となった。

 同社は高効率な開発、設計能力、厳しい品質管理体系による製品品質の安定性、顧客のニーズに合わせた多品種小ロット生産が可能であること、大手顧客および半導体サプライヤーと長期的な提携関係を築いていることなどを強みとしている。一方で、経営規模が小さく資金調達に限度があり、ハイエンドな人材確保が難しいこと、生産、経営拠点をリースで賄っており、高額なリース代により生産コストが上昇していることなどがボトルネックとなっている。
また、売上の8割前後がH3Cテクノロジーズに集中していること、材料価格の上昇、国際貿易摩擦などが経営リスクだ。

 2021年12月期の売上高は22億782万元(前期比45.89%増)、純利益は1億6886万元(同75.54%増)。22年1~3月期の売上高は11億9258万元(前年同期比28.86%減)、純利益は6694万元(同81.18%増)。(編集担当:今関忠馬)(イメージ写真提供:123RF)
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