深セン証券取引所の創業板への上場を目指している、金禄電子科技(301282/深セン)が8月16日、新規公開(IPO)に向けた公募を開始する。3779万株を発行予定で、公募価格は30.38元。
公募終了後、速やかに上場する見込みだ。
 
 同社は2006年設立の民営企業で、19年に株式会社化して現社名となった。PCB(印刷基板)の研究開発、生産、販売を主業務としており、自動車電子、通信電子、工業制御、コンシューマーエレクトロニクス、医療機器などの分野に広く利用されている。特に新エネルギー自動車向けPCB市場に力を入れ、電池管理システム(BMS)、電動モーター制御装置、DC/DCコンバーター、車載充電器、ADAS(先進運転支援システム)、充電スポットなどに用いるPCBを手掛けている。新エネルギー自動車向け電池世界最大手の寧徳時代にとって最大のPCBサプライヤーとなっており、BMS分野で高い競争力を持つ。
 
 広東省と湖北省に生産拠点を持ち、年産220万平方メートルのPCBを生産する能力を持ち、今後520万平方メートルまで拡大する計画だ。寧徳時代をはじめ、中国、イタリア、英国、ドイツ、フランス、韓国、米国、インド、イスラエル、日本、香港台湾などに多くの顧客を持っている。2021年12月期の売上構成は自動車電子向けPCBが46.11%、通信電子用PCBが25.83%、工業制御用PCBが12.51%、コンシューマーエレクトロニクスが10.24%だ。
 
 世界のPCB市場規模は2016年の542億米ドルから19年には613億ドルまで成長し、24年には758億ドルに達する見込みだ。このうち中国製PCBが占める割合は00年の8%から19年には54%と過半数に達し、今や中国は世界最大のPCB生産国となっている。中国の市場規模は10年の202億ドルから19年には329億ドルまで増え、24年には418億ドルに達する見込みだ。
 
 その中で、同社が力を入れている自動車電子向けPCB市場規模は2019年に70億ドルとなり、24年には87億ドルに達するとみられる。
インターネットの普及、エンターテインメントの発展、省エネ化、安全性能向上といったトレンドに伴い自動車のインテリジェント化、電子化が進んでおり、1台あたりに用いるPCBの量は日増しに多くなっている。さらに、自動車製造コストの65%を占める純電気自動車(EV)の普及が急速に進んでいることが、自動車電子向けPCBの需要拡大に拍車をかけている。

 同社は2016年より寧徳時代のサプライヤーとなり、BMS用PCBで業界をリードするなど、新エネ車分野で高い実力を持っていること、新エネ車分野ではテスラ、BMW、ダイムラー、小鵬、蔚来、フォルクスワーゲン、トヨタなど、化石燃料車でもBMW、アウディ、クライスラー、吉利、現代、日産などの著名ブランドに製品が供給されるなど、優れた顧客リソースを持っていること、高い研究開発力と品質管理力を持つことなどを強みとする一方で、海外のリーディングカンパニーや中国国内の上場企業に比べると経営規模が小さいこと、資金調達手段が限られていることなどがボトルネックとなっている。
 
 また、業界の特性上常に新しい技術開発が求められること、流動資産の25%程度を占める在庫の評価額低下、銅版などの原材料価格高騰、廃水や廃ガス、固形廃棄物などの廃棄物の厳格な処理が求められること、新型コロナの感染拡大による川下産業の停滞といった経営上のリスクが存在する。
 
 2021年12月期の売上高は13億2752万元(前期比67.59%増)、純利益は1億28万元(同48.80%増)。22年1~6月期の売上高は7億4587万元(前年同期比29.49%増)、純利益は5884万元(同26.71%増)。(編集担当:今関忠馬)(イメージ写真提供:123RF)
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