日本経営管理教育協会が見る中国 第34回-笠原維信(日本経営管理教育協会副会長)

1.北京オリンピックを契機に新旧開発

 ひとつは先進都市型の新しい施設整備で、鳥の巣を中心とする運動施設、王府井の大型商業施設、またCBD(国貿易ビル、テレビ局を中心とする高層ビル街)の開発である。もうひとつは、老舗商店街、文化街、グルメ街など、伝統文化、地域資源を活かした街づくりである。
2008年10月に北京、天津の老舗商店街を視察し、その実情を垣間見た。

2.北京で500年前の商店街が生まれ変わり

 天安門の南に「前門」が、さらに南に「箭楼」(せんろう)がある。ここは紫禁城の遺跡で、観光名所だ。箭楼から前門大街を南に下り、西に折れると「大柵欄」という明代(1488年)から伝わる商店街がある。約2キロにわたる大がかりな再開発を行い、北京の新名所となった。

 ここの特徴は清代から伝わる老舗が多いことで、北京ダックで有名な「全聚徳」、清朝皇帝の漢方医だった「同仁堂」、康熙帝自筆の額がある山西風味の料理店「都一処」の本店、この建物は清朝時代のものである。

 また古い映画劇場や、影絵の劇場もあり、浅草を感じさせる。大柵欄の西には「瑠璃廠」(るりしょう)という文化街があり、ここも書画、骨董、文房四宝で有名な所だ。

3.「天津古文化街」と「天津南市食品街」

 天津古文化街は、政府特選の文化商店街である。「津門故里」(写真参照)の大きな額のある門をくぐると、天津特産の泥人形、切り紙、年画などの店が500mの間に軒を連ねている。中央広場には6本の大きな提灯がぶら下がっていて、近くに古い気象台もあり、「中国特色商業街・古文化街」の石碑がある。

 年画の店がある。
年画とは春節に掛ける吉祥画のことで、天津の年画は「楊柳青」という。楊柳青年画は300年以上の歴史があり、中国4大年画のひとつとして有名である。

 「天津南市食品街」は、地元の特産物を売っている。天津甘栗、狗不理包子、麻花など天津百味といわれるグルメ街である。

 「狗不理」(クオプリ)の本店で食事した。ここは清代(1858年)に創業された有名な包子(パオズ、肉まんの一種)の専門店である。門前の石碑に店名の由来、創業者のニックネーム(狗子・犬の子)であると記されている。

 創業者は、天津郊外の農家の出身、14歳のとき天津に出て食堂で修業、独立して店を持ち、そこで開発したのがこの包子である。色、香、形、味がよく評判となった。食べてみるとたしかに絶品である。今日では天津3大名物のひとつで、天津、北京の大柵欄を始め、多くの支店がある。

4.伝統を活かすまちづくり

 中国の大都市は開発が進み、古い町並みが消え始めると、新旧調和する街づくりが求められ、北京市でも古い商店街や胡同(路地)の保存、再生に繋がっている。


 東京都の商店街施策は、地域資源の活用が重点となっており、日本橋、浅草、品川、板橋など、江戸時代の宿場町、門前町の賑わいを取りもどす街づくりが進められている。

 北京の商店街振興も伝統文化再生の方針に沿うものであり、外国人観光客にとって「老北京」に触れられる魅力あるスポットになりつつある。

  写真は天津の古文化街。(執筆者:笠原維信・日本経営管理教育協会副会長)

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