日本経営管理教育協会が見る中国 第43回-水野隆張(日本経営管理教育協会営業部長) 
      
◆「6S」が基本

 工場や工事の現場での改革・改善では「3S」や「5S」、さらには「6S」といった技法が役立つとされている。整理(SEIRI)・整頓(SEITON)・清掃(SEISO)といった「3S」に清潔(SEIKETSU)・躾(SHITSUKE)を加えた「5S」、更に安全(SAFTY)を加えた「6S」が基本と言われている。


 これらの事柄は、生産性の向上、製品の品質の改善、従業員のやる気を引き出す原動力でもある。

 中国の製造業でも写真に見られるように「6S」活動に力を入れ始めている。しかし現実の運用面で必ずしもうまく行っているとはいえないように見受けられる。かって中国は、町や工場などの至る所にスローガンを目に見える形で掲示してあった。今日的にいうと「可視化、見える化」を実行していたともいえる。

 スローガン倒れにならないようにするためには、長期に亘って習慣化された仕事の仕方や物の考え方などを大きく変革させる必要がある。物の考え方を変えるには、トップ自らが考え方を変え、リーダーとしての役割を本気で果たすことである。

◆「KZ法」の試み

 技法の一つの試みとして、「KZ法」を中国の工場・現場でも採用してみてはどうであろうか?「KZ法」とは日本のコンサルタントの柿内幸夫氏が10数年の経験から試行錯誤の末に完成させた方法である。比較的簡単な方法で製造業の中堅又は中小企業の総合的な改善活動に優れた効果を生み出す方法と言われている。

 先ず社長以下各部門の責任者や関係者を30名以下の人数のプロジェクトチームを結成する。工場の稼働時間の中で、仕事を3時間停止する。メンバーを製造現場に集め、現場にある1か月以内に必要としない製品、仕掛品、原材料、設備、道具などにチームメンバーに渡したそれぞれ30枚のラベルが全て無くなるまで貼り付けさせる。
ラベルの貼り付けが終了したら、貼り付けられたものを全て屋外に持ち出して、なくてもよいもの、捨てられないがすぐには要らないもの、要るものの3つに分類する。

 雑然とものが溢れかえっていた現場から、不要なものを取り除くことによって驚異的にすっきりした現場に変わる。社長以下各部門の責任者が居る目の前で事前から事後へ、3時間の間に見える形で、示されると正に強いインパクトを与えることになる。

 この方法は改革を動かすトリガーを引く方法であり、このイベントだけで自然にすべての問題が解決するわけではない。会社として改革を実現していく仕掛けは別途必須であるが、適当な間隔をおいてこの方法を実行するとよいであろう。

◆中国製造業の役割

 世界同時大不況といわれる時代に、世界の工場といわれる中国の製造業は、低価格だけを武器にするのではなく、適正な機能、品質やデザインなど、全世界の顧客が求める商品を適正価格で、供給することによって自社従業員や取引先によりよい賃金を支払えるようにして欲しい。

 写真は中国の工場に見かける「現場管理6S」の標語看板。(執筆者:水野隆張・日本経営管理教育協会営業部長)
編集部おすすめ