10年前に中国瀋陽の街頭で中国象棋(シャンチー)を初めて目にした。興味をおぼえて、瀋陽の運動用具店で駒と盤を買い、入門書も買って独習した。
中国象棋の特色
1.円型木駒を使用する。駒は漢字1文字表記。
2.盤は横9線、縦10線。線の上を駒が動く。これは囲碁の影響らしい。
3.使用する駒は、師(将)、仕(士)、相(象)、馬、車、炮(パオ)、兵(卒)。駒数は16枚、3列に配置。師は日本将棋の王、士は銀、車は飛車、兵は歩に相当する。相は斜2路に移動、馬は前後左右の八方に跳ぶ。
4.炮(パオ)という独特の駒がある。炮は縦横自由に動き、駒1つ飛び越えて相手の駒を取るという強力な駒。古代戦の投石器に由来する。
5.師と士は、9宮という中央手前の指定された場所から外に出られない。
6.中央に河がある。3段目に並んだ兵が前進し、河を越えると成り駒になる。
日本の将棋とどう違うか
象棋は、飛車2枚、炮2枚、桂馬は8方跳びと、攻撃力の強い駒が多いため、攻防の激しい急戦になりやすい。見損じがあるとすぐ詰まされる。取り駒は使えないので、ゲームが進むにつれて盤から駒が消えていく。
日本の将棋は、飛び道具は、飛車と角1枚、後は足の遅い駒なので、じっくり陣形を組む持久戦になりやすい。巨砲戦と歩兵戦との違いといえる。日本の将棋は、取った駒を使えるという日本独特のルールがあり、戦術に奥行きとパワーを与えている。
将棋、象棋、チェスのルーツは同じ
象棋と将棋は、紀元前の古代インドのチャトランガという戦争ゲームに発し、西洋に伝わったものがチェスとなり、中国、日本に伝わったのが象棋、将棋なので、ルーツは同じだ。現行の中国象棋は北宋時代、日本将棋は鎌倉時代(13世紀)に成立したといわれている。
チェスと象棋は、15世紀までは駒の構成はほぼ同じだったのだが、チェスは、象棋の象をビショップ(角と同じ)、士をクイーン(縦横斜めに行ける強力な駒)に変えた。そのためチェスは、全部攻撃駒ということになり、象棋よりも攻撃力の強いゲームとなった。チェスの駒は、ルーク(飛車)、ナイト(八方桂馬)、ビショップ(角行)、クイーン(飛車プラス角行)、キング(王将)にポーン(歩兵)という構成になっている。チェスと象棋は攻撃力が強いことで近い関係にある。足の遅い駒が多いが、持ち駒を使える日本の将棋は異質だ。
中国象棋(シャンチー)の普及を
日本では、象棋の愛好者は少なく、定石書も見かけない。中国象棋、チェスを知ることは、ゲームのレパートリーが広がり楽しみが増えるだけでなく、現地人との交流にも役立つ。各国の遊戯文化への理解が深まる。
象棋の本格的な定石書の出版、PCソフトの開発、道場の開設など、日本での広報普及に力を入れてほしいものである。(執筆者:笠原維信・日本経営管理教育協会副会長 編集担当:水野陽子)
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