2010年4月1日、ソロデビュー20周年の記念日を迎えた曾我泰久(そが やすひさ)。インタビュー後編では、ユニット活動や今後の予定をご紹介します。


――ソロ活動以外に、多くのミュージシャンとコラボレーションされていますね。2009年にCDで発表した「同級生」という曲は、「杉真理さん」との共作になっていますが…。

 杉さんは、大きな刺激を与えてくれる大先輩です。「同級生」は詞をお願いしたら、曲のサビ部分も考えてくださいました。アイディアをいっぱい出して、意見を聞いてくれる杉さんに接していると、音楽のイメージがどんどんふくらんでいく。「音楽はフックが大事。曲を聞いた時にひっかかる部分がなければ、ポップスのマジックはない」と教えてくださって、なるほど!と思えることに気づかせてくれた。J-POP界を切り開いてきた大御所で、心から音楽を愛している方ですね。

――2月には、日本を代表するジャズピアニスト「野口久和さん」とジャズライヴをされましたね。

 おじいちゃん、おばあちゃんが聞いてくれる音楽って何かなと考えた時、僕は昭和初期のジャズだろうと思うんです。例えばエノケンあたりの曲。そういった曲をライヴで披露しました。
老人ホームなどの施設に行って、昭和初期のジャズを歌いたいという思いもあります。僕の世代でそういうジャンルを取り上げるミュージシャンは少ないですし、勉強になる。音楽は各世代に向ける切り口を持っていないと、難しい時代になっていると思うんですよね。昔のようにテレビから音楽が流れて、子どもからお年寄りまで歌える曲って今ないでしょう。僕の音楽は真ん中にソロの音があって、上の世代の方に届けられるのがジャズライヴではないか、と思っています。そして下の世代に届けたいのが、去年結成したThe Paisleys(ザ・ペイズリーズ)の音楽!

――どんなバンドなんですか?

 サイケデリックをテーマにやろうと思っていましたが、全員歌えて華やかな音を出せるので、“サイケをやるパワーポップバンド”にしました。オリジナル曲を作り、ベイ・シティ・ローラーズやクリームなど青春時代に聞いた曲もカバーしています。大好きなビートルズにはあえて触れない所が、面白い。3ピースバンドで、まずベーシストの風祭東くんに出会って、サイケに賛同してくれた。そして歌えるドラマーを探している時、20数年前にテレビ共演した「ザ・ブドウカン」というバンドを思い出して、あのドラマ―しかいないと勝手に決めたんです。すごく歌が上手だったと記憶にあって(笑)。それで苦労して情報を探し、ストーカーのようにライヴに押し掛けました(笑)。
それがTHE HIGH LOWSにいた大島賢治くん。いきなり誘って、メンバーになってもらいましたよ。僕はギター担当で、ベースやドラムが絶妙にからんでくる!3人とも歌えるからコーラスも入れて、いろんなことをやってみたくなる。だから3人のパワーが3ではなくて、30位に大きくなっている感覚!楽器で表現するべき音を声でやって、まとまりの強さを実感するとかね。

――今後ペイズリーズは、どんな可能性がありますか?

 熟成させるために、1年間位は月1程度でライヴをやりたい。同じ曲を何度もやると、“こんなに変わる”とわかるはず。音をまとめて結束を強めた後、作品やライヴを広く出していきたいですね。僕を含め3人、ペイズリーズに熱くなっています!

――他のユニットにも参加されていますが、気持ちの切り替えはしていますか?

 特にしていません。でも06年に始めたアポロ・ボーイズは、40日間の全国縦断ツアーなどあって、ソロ活動に大きく影響しました。40代の大人たちがバン車に楽器を積んで運転して廻る、という昔できなかったことを実現したんですよ。新幹線より車移動が楽、ということにも気づきました。その経験があり、ソロツアーも怖くない(笑)。
アポロ・ボーイズの曲はわかりやすくて、“2コーラス目からは誰もが一緒に歌えるメロディ”をモットーに作ってきたので、子どもやお年寄りが歌ってくれると、音楽って捨てたもんじゃないと嬉しかった。ただ衣装が5色のツナギでキャラクター色が強く、音楽をしっかり聞いてもらえないことがあって残念だったかな(笑)。

――では、83年から90年の活動後に休止。03年に再会したThe Good-Bye(ザ・グッバイ)について、教えてください。

 思い入れの深い特別なバンドです。多感な20代に、凝縮された7年間を過ごしました。全てが宝物で、あの時代があったから今がある。でも20年前は、とにかくグッバイから離れたくて独立した。グッバイを見ないように、負けないようにという思いをエネルギーにしていましたね。だけど再会ライヴの1曲目で音を出した瞬間に、固まっていた思いがふわっと溶けて…不思議な体験でした。メンバーの野村義男くんも、同じことを言ってました。グッバイへの思いが強すぎて、仲は良くても義男とはライバルだという意識があったんですよね。
再会ライヴではキレイな景色が見えて、“このライヴやって本当に良かった~”って思えました。今までのグッバイに対する嫌な思いが全て溶け、昇華した感じで、全く予想できない現象でした。その体験があったから、今の僕はグッバイが大好きでいられるんです。メンバー4人、すごく仲良しですよ!そしてグッバイというバンドに、心から感謝しています。独立後10年位は、触れたくなかったけどね(笑)。

――理想的な形で再会できて良かったですね。

 音楽が今楽しい!と思えるのは、再会のおかげもありますね。義男は頑なにギターだけを続けてきた20年。僕はエンターテイメントを求めた20年。お互い尊敬しあってますし、加賀八郎と衛藤浩一も、音楽活動を続けてきました。デビュー30周年にあたる2013年、グッバイは武道館コンサートを目指します!義男との2人ユニット、ON&OFFも続けます。サービス精神旺盛な義男のトークは爆笑もの!

――最後に、ソロ20周年の活動予定を教えてください。


 記念アルバムを制作中です。できたばかりのデモ音源を届けたくて、98年から「Super Rare Trax」シリーズというCDを作りこれまでに8枚、ファンクラブメンバーを中心に聞いてもらってきました。自分の打ち込みだけで音を作ってきたので、20周年に合わせて、バンド演奏で記念のベスト盤を作ることに決めたんです。好きなミュージシャンにお願いしてベースは松原秀樹くん、ドラムは長谷部徹くんが引き受けてくれましたが、2人は幼なともだち。80年代に一緒にANKHというバンドをやっていたんです。2人はトップミュージシャンとして活躍中ですが、出す音がさすがスゴイ!20数年ぶりに演奏を聞いて、ビックリしました。キーボードとアレンジは、グッバイ時代からの付き合いの小野澤篤さんにお願いして、想像以上の仕上がりになりそうです。このアルバムは、応援を続けてくれたファンの方向けにはベストアルバムですが、CDショップに置く予定があり、一般的な感覚では“20年ぶりの新譜”になります。夏のリリースを目指していますし、レコーディングメンバーでライヴをやりたいと思っているので、楽しみにしていてください!それから夏には弾き語りツアーをやり、20周年の締めくくりライヴも計画中。役者としては、6月に『眠れぬ夜の1X8レクイエム』という舞台に出ます。20年を振り返ると、今が一番楽しい。まいてきた種を育てて咲かすことが、大事だと思っています。
いろんな可能性が見えて、楽しくてしょうがない!1つ1つ形にしたいですね。まずは4/29にスタートさせた弾き語りツアー『春風が誘うから』で、“今の曾我泰久の音楽”を伝えます。(取材・文責:饒波貴子)

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