香港証券取引所で5月20日、保利協〓、旭光高新、中芯国際などの株価が1日で約10%、東岳集団や恒芯国際なども約6%暴落した背景に、浙江省温州の仕手筋の大規模な投機があったことが分かった。香港の投資家の「反撃」で、温州側は「大損」をしたとみられている。
理財周報が「知識や見識の不足でまさに大損」などと報じた。(〓は「品」の「口」の位置に「金」)

 発端は1月だった。温州の仕手筋が、ほとんど注目されていなかったパシフィック・プライウッド(PACIFIC PLYWOOD)の株式を大量に買いはじめた。同銘柄は3月上旬、市場の7営業日内に10倍の株価になる動きを見せた。温州の仕手筋が大量の注文を出すことで、株価が異常な上昇を見せた。企業実績などには関係のない投機目的の「マネー・ゲーム」だった。


 温州の仕手筋が当初、「市場で注目を集め、さらに値上がりした時点で売り逃げ」するもくろみだったことは明白だ。ところが、同銘柄株価は5月まで徐々に下落。温州の仕手筋は、事態が悪い方向に推移しているが逃げる決断ができない「温水の中でゆっくり煮られるカエル」状態になったという。

 香港の投資家は5月20日に、同銘柄を大量に売却。いわゆる「空売り」(注)を行ったとされる。パシフィック・プライウッドは同日、60%も大暴落した。
2011年の最高値時と比べると98%も値が下がったことになる。

 温州の仕手筋は、借入金に頼ってパシフィック・プライウッド株を大量購入していたと見られる。いわゆるレバレッジの手法だ。保有していた同銘柄の株価が極端な暴落して資産価値が消失したため、その他に保有していた保利協〓などの銘柄を手放さざるをえなくなり、香港証取では同日、大きく値を下げる銘柄が続出した。

 中国国内の証券取引所ではこれまで、同様の現象が発生したことはない。理財周報は「温州の投資家は、高値に誘導して利益を出すことだけを知っていて、香港では安値に動く際に(空売り)で利益を出せることは分かっていなかったようだ」、「知識や見識の不足でまさに大損」などと批判した。


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◆解説◆
 空売りとは、証券会社など他者から借りた株式を売却し、改めて同じ銘柄の株式を購入して返済する手法。たとえば、借りた株式を1株当たり100円で売却、90円に値下がりした時点で買い戻して貸主に返却すれば、1株当たり10円の利益を出せるなど、値下がり局面で利益を出すことができる。(編集担当:如月隼人)

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