上海市上空で13日、吉祥航空HO1112便が「燃料切れ寸前のカタール航空機を先に着陸させるため、航路を譲れ」との管制の指示を無視した事件には、着陸を急ぐため「燃料切れ寸前」とのうその通報が横行していることや、国有系航空会社が優遇され、民間会社の飛行機は着陸順番が後回しになるなどの、背景が存在しているという。中国新聞社が報じた。


 上海市内には主に国際線が使う浦東空港と、国内線が多い虹橋空港がある。13日は気象条件の悪化で浦東空港が使えず、上空で多くの航空機が虹橋空港への着陸の順番待ちをしていた。カタール航空QTR888便の機長は「燃料切れまであと30分を切った」と管制に緊急事態を通報した。

 管制は、カタール航空機の着陸を優先させるため、同機の前方で着陸態勢に入っていた吉祥航空HO1112便に「着陸をとりやめ、カタール航空機にいったん航路を譲るよう」指示した。吉祥航空機機長は「当機も燃料切れ寸前。あと4分しかもたない」と言い、着陸を強行。2機が短い間隔で着陸するという、危険な事態になったという。

 着陸後、カタール航空機には30分を上回る燃料が残っており、緊急事態を宣言するべきでなかったことが分った。吉祥航空機には1時間分以上の燃料が残っていた。

 同日は、カタール航空機以外にも「燃料切れ寸前」を宣言する航空機があった。「順番待ちの列に並ぶ」ことを嫌がり、燃料について虚偽の通報をすることが、常態化しているという。

 さらに、順番待ちの場合には中国国際航空、中国東方航空、中国南方航空の、いわゆる国有系三大航空会社の飛行機が優先されることが一般的で、問題を起こした新興の民間航空会社である吉祥航空機などは、後回しにされる場合が多いという。
記事によると、13日の事件では吉祥航空機機長が「日ごろからの怒りを爆発させた」可能性があるという。

 また各航空会社は、燃料消費が少なかった場合、機長らに報奨金を支払っているとされる。報奨金ほしさに、吉祥航空HO1112便の機長は、着陸を強行した可能性がある。

 中国の民間系航空会社は特に、「さまざまな手段でコスト削減」をしているという。中国の航空会社は利益を出しにくい状態が長期間続いており、特に2008年のリーマン・ショック以後は、経営環境が一段と厳しくなった。国有系会社は政府による多額の財政支援を受けたが、民間会社の場合、支援は特にない。2010年には東星航空が倒産するなどの事態も発生した。

 中国政府・民用航空局華東地区管理局は29日、問題を起こしたHO1112便機長に対する「中国国内での民間機操縦免許取り消し」の処分を発表した。同機長は韓国籍であるため、韓国政府にも通報したという。(編集担当:如月隼人)

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