韓国で記録的ヒット!『建築学概論』イ・ヨンジュ監督インタビュー
初恋の切なさを描いた、韓国の美しい恋愛映画『建築学概論』がついに日本上陸。3月にジャパンプレミアとして上映された「第5回沖縄国際映画祭」出席のため来日した、イ・ヨンジュ監督に見どころなどを語ってもらった。(写真は筆者撮影)<br><br>【関連写真】<br>・<a href="http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2013&d=0508&f=entertainment_0508_024.shtml&pt=large" target="_blank">クロード・ガニオン監督「映画祭開催で沖縄は世界から注目される」</a>(2013/05/08)<br>・<a href="http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2013&d=0505&f=entertainment_0505_002.shtml&pt=large" target="_blank">佐藤麻衣、ドラマ・バラエティ・司会で活躍しアジアの懸け橋実践中</a>(2013/05/05)<br>・<a href="http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2013&d=0425&f=entertainment_0425_005.shtml&pt=large" target="_blank">なつかしい青春テイストに共感!台湾映画『ポニーとミニーの初恋』</a>(2013/04/25)<br>・<a href="http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2013&d=0423&f=entertainment_0423_025.shtml&pt=large" target="_blank">ゴリ監督、糸満を舞台にヒーロー映画制作!4日間でクランクアップ</a>(2013/04/23)<br>・<a href="http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2013&d=0420&f=entertainment_0420_014.shtml&pt=large" target="_blank">沖縄国際映画祭:観客大賞受賞!台湾映画『デビーの幸せな毎日』</a>(2013/04/20)<br>"(サーチナ) 画像(1枚)
 初恋の切なさを描いた、韓国の美しい恋愛映画『建築学概論』がついに日本上陸。韓国公開時には、『私の頭の中の消しゴム』や『私たちの幸せな時間』といった過去の名作の動員記録を更新し、大ヒット。
恋愛映画の最高傑作、と韓国の人々が認めた作品だ。日本では5月18日、新宿武蔵野館ほかで公開がスタートするが、ジャパンプレミアとして3月の「第5回沖縄国際映画祭」にて先行上映された。映画祭出席のため来日した、イ・ヨンジュ監督に見どころなどを聞いた。(写真は筆者撮影)

――「沖縄国際映画祭」に出席した感想からお願いします。

 母を始めとした家族と一緒に来たので、印象深い映画祭になりました。会場の近くにある野球場を見て、大好きな村上春樹さんを思い出しました。村上さんは野球観戦中に小説家になろうと思ったそうですし、空っぽの野球場が出てくるエッセイもあります。だから僕も実際に球場に行って、野球観戦してきましたよ。沖縄の思い出になりましたし、舞台挨拶で観客のみなさんにあいさつできたことも、とても楽しかったです。

――『建築学概論』は大人の男女が共感できる、素敵な作品ですね。タイトルからはラブストーリーのイメージがしませんが、韓国でもこのタイトルだったのでしょうか?

 同じです。私がつけましたが、実はタイトルを考えるのは苦手。
マーケティング面から見ると、向いていないタイトルかもしれませんね。でも大学時代に建築学概論を学んでいた僕は、2003年に脚本の初稿を書き始め、やはりこのタイトルを使っていました。いずれ変更しても良いだろうと漠然と思っていましたが、結局ピッタリくるのは最初と変わらないこのタイトルだったのです。

――脚本も手がけたイ監督が、映像化するにあたって一番こだわった点はどこでしょう?

 こだわりよりも、不安が先立っていました。監督というのは、イメージ通りの映像を撮りたいもの。現場で思ったように撮れない状況になるのは避けたいので、イメージを貫くための進行に苦労しました。キャストの良い演技を引き出す、環境作りも大変でしたね。この作品で映画デビューしたチョ・ジョンソクが演じた、男性主人公・スンミンの親友・ナプトゥクは特に思い入れのあるキャラクターで、ジョンソクには完璧な準備と演技を要求しました。それが本人に大きなプレッシャーを感じさせたようです。

――コミカルな男性で、ジョンソクの存在感が光っていました!

 韓国でも爆笑を誘っていたのですが、沖縄の観客のみなさんはあまり笑ってくれなくて、ちょっとショックでしたよ(笑)。日本のほかの地域の方はいかがでしょうか。

――建築士としてのキャリアを持つイ監督は、この作品にご自身のエピソードを取り入れたのでしょうか?

 初恋というキーワードは、僕にはあまり関係ありません。
僕は初恋の相手としっかり恋愛できたんです(笑)。でも建築に関連した内容は関わっています。映画のセットとして実際に家を建てたのですが、建築学を学んでいた時の同期生に、スーパーバイザーを担当してもらいました。彼は現在も設計士として活躍中ですが、僕があれこれ注文して喧嘩ばかりしていましたよ(笑)。

――オム・テウンとハン・ガイン、キャリアのある2人のスターが主演をつとめましたが、どんな印象を持ちましたか?

 2人のスケジュールが忙し過ぎて、事前打ち合わせができずに心配でしたが、撮影しながら打ち解けていきました。ガインは細やかな神経を持った女性で、テウンは楽天的。持っている性格が、役にマッチしていたと思っています。そしてテウンが母親に、ガインが父親に抱いている思いがそのまま役に活かされた。台本を読んで個人的に共感できる役だったので出演を決めた、と言われました。裏話としては寝転ぶテウンにガインが寄り添うシーンで、テウンが本当に眠ってしまったこと。いびきが聞こえてNGになりました。ガインは撮影当日には朝4時頃起きて準備万端で取り組む真面目なタイプで、ツンとしていることもあれば気さくな面もある魅力的な女優です。


――テウンとガイン演じる現代の男女と若い頃の2人が交差しますが、見ている内に区別がつかなくなっていく所に、この作品の素晴らしさを感じました。撮影は現代と過去、分けていたのでしょうか?

 最も苦労したポイントです。テウンとガインのスケジュールがつまっていたので、順序良くまとめた撮影ができませんでした。現代を数カット撮ったら過去に戻るという繰り返しで、調子づいた時に同じ設定が続けられなくて、集中できずに悩むこともありました。

――過去を演じた、若い2人も魅力的でした。

 イ・ジェフンは抜群の才能を持つ男優です。それが全身からにじみ出ていて、前作とはガラリと変わったこの作品の役を見事に演じ切った。スジは10代とまだ若く、映画は初めてなので心配していましたがどんどん馴染んで、全力で取り組んでいました。強さを感じさせる女性でした。K-POPユニットMiss Aのメンバーとしても活躍している彼女が現場に来る日は、スタッフがみんな元気になって頑張っていました。現場を明るくするムードメーカーになってくれたので、監督としてうれしかったですね(笑)。ジェフンがスジを気遣う面も、たくさんありました。


――良かったと納得できる反面、考えてしまうラストシーンでもありました。韓国ではどんな声が届きましたか?

 同じような反応でした。現実的な選択をしたハッピーエンドだという感覚ですね。

――上映を楽しみにしている日本のファンに、メッセージをお願いします。

 脚本を書いている時から、日本の方たちが好きになってくれるストーリーになると思っていました。韓国人の感情表現や情緒で描いていますが、日本人の方も理解してくださると感じていたのです。僕は日本のアニメをよく見ていますが、この作品は『海が聞こえる』のテイストがどこかにある。たくさんの日本の方に認めていただけたらと、期待しています。(取材・文責:饒波貴子)
編集部おすすめ