衝撃だった。想像をはるかに超えていた。
Mayday(メイデイ、五月天)のライブ映像を中心にした映画『MAYDAY 3D LIVE「NOWHERE ノアの箱舟(MAYDAY 五月天 諾亜方舟 3D)』だ。17日(日曜)に東京のTOHOシネマズ 六本木ヒルズで開催されたプレミアム試写会に足を運んだ。Maydayの5人も上映前に舞台に姿を見せ、あいさつ。つめかけたファンと、「熱く・温かい気持ち」が融け合った。同作品は2014年春からの日本全国順次公開が予定されている。(写真はサーチナ編集部撮影)

■Mayday登場、flumpool登場で“はじける”会場

 会場に入ったとたん、何か違う雰囲気を感じた。コンサート会場と同じ“ドキドキ感”ではない。Maydayの舞台あいさつは予告されていた。だから、開演時間が近づくにつれ、ファンの期待は高まる。しかし、“狂騒”ではない。意外に静かだ。そう、これは「ワクワク感」だ。
これから自分の目の前に現れるMaydayとの時間を共有する。そして彼らが全身全霊を込めて作った映像に触れる。そんな得難い経験を心の奥底に刻みこもうと待ち受ける。ファンの静かな、しかし熱い気持ちが伝わって来た。

 そして開演。Maydayが登場。さすがにファンははじけた。歓声が会場にこだまする。Mayday全員が日本語であいさつした。以前からと同様に、もっとも流暢なのはモンスターだ。しかしそれ以外のメンバーの日本語も、かなり上達している。各メンバーが日本語を「特訓中」という説明に“掛け値なし”と納得した。


 コメントを求められたアシンはまず「こんなに多くのファンと一緒で興奮、そして緊張しています」と話した。

 そして予告編の上映、続いてMaydayと公私にわたっての交友があるロンドンブーツの田村淳、GLAYのコメントVTRの紹介と続いた。

 flumpoolの登場だ。花束を持って駆けつけた。記念すべき「MAYDAY 五月天 諾亜方舟 3D」のジャパンプレミア試写会への祝福。会場は熱狂の渦と化した。

■Maydayメンバー、CD曲選びで熱くなりすぎケンカ

 Maydayは13日に発売されたばかりのアルバム『Mayday×五月天 the Best of 1999-2013』にまつわるエピソードを紹介。とにかく選曲に苦労したという。15年にわたるMaydayの成長の歴史を伝えようと考え、「各年の発表曲を1曲ずつ、計15曲」を収録することになったが、メンバーそれぞれの曲に対する思い入れもあり、激論を繰り返すことになってしまったという。

 ラチがあかなくなり、結局は「“比較的民主的”な方法、つまりケンカで決めました」(モンスター)という。今でこそ笑って話せるが、相当に激しい応酬があったことは容易に想像できる。

 5人全員が一流のアーティストだ。
日本のリスナーに何をまず伝えるのか。信念と信念がぶつかりあった。しかし結論が出た後になれば、「民主的なケンカ」と、さらりとジョークにできる。それぞれが強い個性を持ちながらしっかりと結束している“Mayday力”の源泉を見たような気がした。

■衝撃・圧倒・度肝を抜かれる圧倒の3D映像

 さて、いよいよ『MAYDAY 3D LIVE「NOWHERE ノアの箱舟』の上映だ。ちなみに原語の「諾亜方舟」とは「ノアの方舟」の中国語表記。2011年から13年にかけて71公演を行い228万2000人の聴衆を動員(ヨーロッパ公演を除く)した記録映像が中心だ。

 ライブ映像とは別のストーリー性も取り入れ、彼らの人類や地球に対する想いも表現する作品に仕上がっている。しかし特に焦点を当てているのはインターネットを通じて計20万枚のチケットを「秒殺完売」した北京の国家体育場(ナショナル・スタジアム、愛称は鳥巣=バード・ネスト)でのライブ映像だ。

 「衝撃だった。度肝を抜かれた」と告白せねばならない。楽曲がすごい。
演奏がすごい。演出がすごい。そして、Maydayとファンの一体感がすごい。しかも、演奏中の彼らにどこまでも迫るカメラワーク。ステージの上のMaydayから聴衆が、そして会場がどのように見えているかもはっきりと分かる。3D映像の威力だ。演奏する5人の遠近感も、手に取るように分かる。出演者しか分からないはずのステージの実録が明らかにされた。

 「筆舌に尽くしがたい映像」としか書きようがないのだが、ひとつだけ指摘しておこう。紹介されたステージでは、舞台が高くせり上がる演出も多用されている。演奏するモンスターとストーンの畳半畳分もない立ち位置だけが、10メートルほども持ち上がるシーンがある。

■どんな場合でも魂を集中、やはりMaydayは「常人」でない!

 安全上の工夫はあるようだが、たとえ「高所恐怖症」でないとしても、身がすくんでしまう高さだ。
ところが、モンスターもストーンも全く意に介していない。一心不乱に激烈なソロを繰り広げる。どうしたら、あんなことができるのか。音楽だけに魂を集中させている。「やはり常人ではない」と深く感じ入ってしまった。

 この上映会では会場で蛍光棒も配られた。主催者側のコントロールにより、上映会場内で一斉に青や緑、黄色の光が点滅する。眼前で繰り広げられるコンサート会場で10万人ファンが振る蛍光棒と同期している。自分もMaydayがライブ演奏をするその場にいるような感覚に包まれる。

 122分間に及ぶ上映が終了した。強烈ではあるが甘美きわまりない長い夢を見て目がさめたような気分だ。頭の中では、今接したばかりの映像とサウンドが繰り返されている。
これほどまでに、見る者の心をかきたてる音楽の映像は、本当にまれなのではないだろうか。

 Maydayをまだよくご存知ない読者の皆さんにひとつだけ追記しておこう。Maydayは「台湾出身の、アジアを席巻するスーパー・バンド」だ。しかし、「アジアのトップ」という言葉にとらわれすぎると、予想を裏切られることになる。彼らはすでに、何人(なんぴと)も到達したことのない境地を切り開きはじめている。「道」は、Maydayが歩んだ後にできていく。

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■女性ファン「日本本格進出、今後も期待しています!」

 話を当日の会場に戻そう。集まったファンの一部に話を聞いて見た。

 まずは女性の2人連れ。Maydayの2枚目のアルバム「愛情万歳」の時期からのファンという。「お歳は?」というぶしつけな質問にも、「(自分らが)学生のころから好きだったので、近ごろ30代になっちゃいました」と、笑いながら答えていただいた。コンサートのために「台湾に行ったこともあります」という、かなりディープなファンだ。

 Maydayの日本本格進出には「期待しています!」という。ファンとして強く願っているのは「武道館ライブを実現させてあげたい」ことだ。Maydayのメンバーが以前から言っていた「夢」をかなえさせてあげたいという。

 アルバム『Mayday×五月天 the Best of 1999-2013』については、台湾で以前に発売されたCDとは、ちょっと違うアレンジに気づいたという。そこが新鮮で楽しめた。「海外版で同じ曲を聴いている人も、買った方がいいですよ」と、熱烈に推薦してくれた。

 ちなみに、彼女らのうちの1人は愛知県在住という。このプレミアム試写会のために、東京に駆けつけた。

■男性ファン「flumpoolの共演、よいことです」

 会場につめかけた人の8割以上は女性だった。しかし、男性ファンも負けてはいない。東京都立川市在住の40代男性は、「台湾のミュージシャンについて、男女を問わず関心があります」と話してくれた。

 Maydayに注目したのは数年前。サウンド面でも「これは、日本人好みだ」と思った。もちろん、好きになった。だから、「日本人ファンが増えてほしい」と願っている。

 彼によると、台湾のミュージシャンが日本で知られるようになる場合、ドラマ出演がきっかけになる場合が多かった。Maydayの場合は違うパターンで、純粋に音楽で日本に浸透しつつある。

 音楽だけで勝負できる存在であり、日本の人気バンドであるflumpoolとも共演を重ねている。「よいことだと思います。そのようにして知名度が上がるわけですから」と、とにかく多くの日本人にMaydayの魅力を知ってほしいとの考えだ。

■少女ファン「母が教えてくれたMayday、じっくり聴かなきゃ!」

 中学2年生という女の子もいた。「母がMaydayを大好きなので、教えてもらいました」という。もちろん、自分も大好きになった。言葉を選びながら答えてくれる彼女を、母親は微笑みながら見守っている。

 「映画を見て、感動しました。母が買った『ノアの方舟』のライブCDがあるから、もういっぺん、じっくりと聴いてみなきゃ」という。

 Maydayは「僕たちは老人になってもステージを続けます。ファンの皆さんはその時になったら、孫を連れて来て下さいね」とも発言している。世代を超えたファン獲得を、彼らはすでに、現実のものにしつつあるようだ。(編集担当:如月隼人)
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