サービス貿易協定に反対する学生らが繰り返すスローガンの「退回服貿(トゥエイホェイ フーマオ=サービス貿易撤回)」が、日本人に「ほえほえくま」と聞こえたことから、学生側を支持する日本人が、「主張する熊」のイラストを作ったとされている。
「台湾(中華民国)国旗を振る熊」、「スーパーマンのように、台湾国旗のデザインのマントを着用した熊」、「熊の着ぐるみの少女が日本と台湾国旗を持ち、『加油(がんばれ)』の文字を加えたイラスト」、「中国大陸を象徴すると見られるパンダを蹴(け)り倒す熊」など、さまざまなイラストが公開された。
台湾メディアは「ほえほえくま」の由来を解説し、「吼吼熊」などと翻訳して紹介。日本側の動きについて「絵の得意な日本のネットユーザーのグッドアイデア」、「多くのほえほえくまの図案を製作して台湾の公民運動を支持」、「多くの台湾のネットユーザーが、『日本は台湾の真の友だ』と表明している」などと報じた。
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◆解説◆
中国大陸とのサービス貿易協定は、原発問題とならび台湾世論を2分する大問題だ。サービス貿易協定については、当初から賛否両論があり、激しい議論が戦わされてきた。反対側が問題視するのは、協定の内容だけでなく、馬英九政権側の協定締結に向けた進め方の不透明さや強引さだ。具体的には、政権側は野党との話し合いにもとづき2013年9月時点で「条文ごとに審議し、条文ごとに評決する。一括評決はしない」と表明したが、14年3月になり「一括評決はしない」との前言を翻したなどがある。
議場を占拠した学生側は議場内で取材に応じるなどで、「行政権が大きすぎ、三権分立の立法院による監督機能が効力を失った」、「国民党の議員が多く、多くの委員会で強制的に主導している」、「台湾の民主主義は国民党の強力なコントロールのもと、基本的に効力を失った」などと主張。原発問題にも言及し(国民党は推進派)、サービス貿易協定など個別の問題だけでなく、国民党が民主主義を踏みにじったことがそもそもの問題点との考えを示した。
馬英九政権については、多くの人が不満を持つ状態が続いている。2013年秋ごろから馬総統に対する支持率が10%に満たない状態だ。
なお、中国語の標準語(普通話)では「退回」の発音が一般に、カナ表記では「トゥイフイ」に近い音になる。台湾の標準語である「国語(グオユー)」も、かつて官僚らが用いていた「北京官話」が起源であり、大陸側の「普通話」とおおむね同じ言葉だが、発音に古い特徴を比較的多く残しており、「退回」も「トゥエイホェイ」に近い音になることが多い。(編集担当:如月隼人)
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