「全能神」はキリスト教系の新興宗教で、1991年ごろに成立したとされる。「東方閃電」、「実際神」とも呼ばれる。中国共産党を「巨大な赤い龍」と呼び、政権を打倒し自らが支配する新国家の樹立を主張している。共産党は新興宗教を認めていないが、「全能神」は特に警戒している宗教勢力のひとつ。「全能神」は貧しい信者に経済的支援をするので、勢力拡大の背景には貧富の差の拡大があるとされる。信者の脱退を厳禁し、脱退した信者や子が殺害されたとされる事件も発生している。
5月28日の事件で被告とされた5人は、たまたまマクドナルド店内にいた36歳の女性、呉碩燕さんを勧誘し、電話番号を聞き出そうとした。呉さんが応じなかったので、殴りかかった。呉さんを引き倒して全身をけったりアルミ製のパイプで頭部を殴りつけるなどで死亡させた。呉さんは夫と息子と食事をした後だった。
被告の弁護人である高成弁護士は「事実ははっきりししており証拠も十分にある」、「被告は後悔の情を示しておらず、積極的に損害賠償をしているわけでもない」として、「法律上、刑を軽くする要素はない。厳しい処罰となるだろう」と述べた。
同事件で殺害に加わった容疑者は6人。リーダーとされるのは張立冬被告。その他は張被告の娘2人と息子1人、さらに家族関係はない2人とされる。張被告の息子は刑事責任を問える年齢に達していないとの理由で、起訴されなかった。
中国では、当局が身柄拘束中の容疑者に対するメディアの取材を許可することがある。張被告は身柄拘束後にテレビ局のインタビューに答え、呉さんに暴行を加えた理由について「あの女は悪魔だ。邪悪な霊だ」、「殺すことを目的として殴った」、「(罪を問われることは)恐くない。私は神を信じている」と述べた。(編集担当:如月隼人)
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