文化大革命時代を代表する舞台作品の「白毛女」(歌劇版)が11月6日から12月17日にかけて中国各地で上演される。中国共産党の革命拠点となった陝西省延安での初演70周年を記念するためとされる。
芸術指導は習近平国家主席夫人である彭麗媛さんが担当。中国メディアの西部網などが報じた。

 「白毛女」の原型は華北地方に伝わっていた民間伝承。1945年に中国共産党が運営する魯迅芸術学院のスタッフが歌劇化し、革命精神と合致する作品の「革命板様劇(革命模範劇)」とされた。毛沢東夫人の江青は元女優だったこともあり、革命模範劇関連を含め、文芸活動には深くかかわった。

 1960年代に始まった文化大革命期に、革命模範劇として上演が許されたのはわずか8作品に「白毛女」も含まれていた。
江青も「白毛女」を好んだと思われ、主題歌を歌った録音が残されている。「白毛女」は多くの中国人にとって「紅歌(革命歌)」と同様の意味をもつ文芸作品だ。

 歌劇版「白毛女」のヒロインは、歴代のトップ歌手が務めてきた。初代・白毛女は王昆、2代・白毛女は郭蘭英というように。第3代となると「絶対」と言える歌手は見当たらなくなったが、彭麗媛さんはその1人とされている。今回の公演では1979年生まれの雷佳さんがヒロインを務める。


 今公演の芸術指導は習近平国家主席夫人の彭麗媛さんがを担当することになった。彭さんは白毛女のヒロインを務めた経歴でも分かるように、「国民的歌手」と言える存在だ。習近平国家主席と結婚したのは1987年で、習主席が2008年に国家副主席に就任するころまでは、彭さんの知名度の方がずっと高かった。

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◆解説◆
 中国では2010年ごろから、共産党重慶市委員会の薄熙来書記(当時)が、文化大革命期にまで盛んに歌われた楽曲を改めて歌う「紅歌活動」を推進した。同活動は、習近平国家副主席(当時)に出世の先を越された薄書記が、文化大革命と同様の「大衆動員」の方法で権力を奪取しようとした動きの一環とされている。

 文化大革命を否定する中国共産党にとって、容認できない「奪権闘争」だった。
薄書記は党籍を剥奪され、職権乱用や汚職の罪で起訴されて無期懲役が言い渡された。権力闘争が露骨に表面化したショッキングな出来事だったが、習近平政権が、しかも彭麗媛さんまでかかわって「白毛女」の全国公演を行う背景には、政権側による「薄熙来事件はすでに過去のもの」とのアピールが込められている可能性がある。(編集担当:如月隼人)(写真は西部網<http://www.cnwest.com/>の5日付報道の画面キャプチャ)


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