中国では医療保険が完備していないため、重病になっても治療を受けられないなどの悲劇が大量に発生している。中国メディアの環球網、新浪網などは7日、難病に苦しむ14歳少年の両親が治療の断念を考えたが、少年は「死にたくない」と訴えたと伝えた。
少年は4歳の時に発症した。10年間の治療で両親は借金を重ね、新たに借金をするあてもないという。

 少年は4歳の時、非ホジキンリンパ腫という病気を発症した。一家は農村部に住んでいた。その時、現金収入に乏しいので父も母も、こどもの教育費用をためようと、故郷を離れて都市部で仕事をしていた。詳しくは伝えられていないが、農村部出身者が都市部に行っても、清掃作業や工事現場の作業員など、日本風に言えば「3K(きつい・きけん・きたない)」と言った、割のよくない仕事しか得られないことが一般的だ。故郷に残った祖父母が、孫の面倒を見ることがおおい。

 ある程度は余裕ある生活ができるようになるはずだったが、少年の発病で状況は暗転した。医者は、骨髄移植を提案した。しかし、貧しい一家にとって、費用がかかる骨髄移植を受けさせるのは極めて難しい。両親は、投薬治療を求めた。父親によると、薬の副作用で息子が苦しむ様子を見ているのは、本当につらかった。
しかし少年は「ボクは学校に行きたいんだ。だから、きっと治すんだ」と言って、頑張っていたという。

 骨髄移植で病状は大いに改善した。父も母も安心した。ところが12歳になったとき、少年の首の部分に大きなこぶができた。病院で診察を受けたところ、非ホジキンリンパ腫の再発と分かった。

 7年間の治療で、それまでに貯金した30万元(約521万円)は使い果たしていた。しかし、息子の病状はよくない。父と母は病院で、付き添うことにした。少年は化学療法を6回、手術を1回受けた。2014年9月には治療が終了。ようやく健康を取り戻せた。
同じ年齢の他の子と比べると体は小さい。恐らく病気の影響と思われるが、父も母も「ようやくこれで、終わった」と思った。

 ところが2015年12月、また発症してしまった。医師に「この病気を根本的に治せる可能性があるのは、骨髄移植しかありません。化学療法では再発する可能性が大きいのです」との説明を受けた。

 病院側は、化学療法を続けて、病状が改善したら骨髄移植をする治療計画を作成した。両親は何も言わなかったが、治療のために借金を重ね、新たな借金のできるあてはない。骨髄移植を受ける金策は無理だ。

 その晩、病室で息子に付き添っていた父親は眠れなかった。ずっと考えていた。見ると、息子も眠っていなかった。父親の方を見ていた。
父親は息子に、「なあ。病院を出て家に帰った方がいいと思わないかい?」と声をかけた。

 息子は長い間、何も言わなかった。そして消え入りそうな声で「おとうさん。ボク、死にたくないよ。生きていたいよ。学校に戻って授業に出たいよ」と言ったという。

 父親によると、息子に「それはできない」などと言うことは、とても言えなかった。そして、息子があんなに頑張っているのに比べて、自分はなんとだらしないのかと、心から恥ずかしく思ったという。

 父親によると、「再び学校に行く」という息子の夢をなんとかかなえてやりたいが、新たに借金をするのは本当に難しい。本当に、どうしてよいかわからないという。

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 中国では、治療費が払えないために、病院を出て自宅に戻り、死を迎える人が相当数いる。
母子家庭に育った息子が難病になり、母親に恋人ができたので2人に結婚式をさせてから、自分のために治療費を使うのはやめて、2人で幸せな家庭を作ってほしいと書置きをして、姿を消してしまった悲劇も伝えられている。(編集担当:如月隼人)(写真は新浪網の7日付報道の画面キャプチャー)


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