中国メディア/ポータルサイトの新浪網は23日、「彭麗媛はどのように『大使』を務めるのか?」と題する記事を掲載した。彭さんは習近平国家主席の夫人で、世界保健機関(WHO)の結核とエイズ予防の親善大使などを務めている。
新浪網は「メディアが疑問に釈明」と説明した。彭さんの活動への批判の声が存在することを反映した可能性がある。

 記事は、世界結核デーの前日の23日、彭さんが北京市郊外の建設工事現場を訪れ、作業員に健康関連の記念品を手渡すなどの慰問活動をしたと紹介。彭さんは2004年以来、慈善関連や青少年の犯罪防止、エイズや結核の予防、禁煙など多くの分野でイメージ大使や親善大使を務めている。

 HIVに感染した幼児の食事を手伝ったり、一緒に遊ぶなどの映像が公開されたことも多い。記事は、WHOの陳馮富珍代表(マーガレット・チャン、香港出身)が2011年、彭さんをジュネーブのWHO本部に招いて結核・エイズ予防の親善大使に任命した際に、「あなたの名声をお借りして、WHOの結核やエイズに対する取り組みを、さらに推進したい」と述べたと紹介した。

 記事は、彭さんが夫である習主席の外遊に同行して、訪問先で恵まれない児童のための施設や小児病院などを訪れて、子どもたちと交流する活動を続けていると紹介した。

 国の指導者の夫人が公益活動に従事することは、そう珍しいことではない。しかし中国の、“ファーストテディ”はこのところ、あまり表舞台に出てこなかった。毛沢東夫人の江青が権力を追い求めて、「文化大革命」という政治的大災害を引き起こした記憶も強烈だ。それだけに、彭さんの活動に対しても批判的な見方がくすぶっている可能性がある。

 彭さんは、文革時代の「模範劇」である「白毛女」が2015年11月から12月にかけて中国各地で公演された際にも芸術監督を務めた。
同舞台は、映画化されることも決まった。

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◆解説◆
 よく知られているように、彭麗媛さんは中国の「国民的歌手」だ。夫の習近平国家主席が2007年に共産党の中央政治局常務委員に就任するころまでは、彭の知名度の方が圧倒的に高かった。

 彭さんの歌手としての履歴も、エリートコースだった。18歳の時に軍所属の歌手になったが、中国では軍所属の音楽家の地位が高い。時期により異なるが、給与が一般の歌舞団などの団員の2倍程度はあった場合もある。その後は軍所属の文芸団体への就職人気がそれ以前よりは衰えたが、主に「軍人になると拘束が厳しく、海外留学なども困難になる」との理由であり、軍に所属する音楽家の地位や権威が低下したわけではない。

 また彭さんは、門下生に著名歌手を多数輩出している「名伯楽」として知られる声楽教師の金鉄霖氏に師事している点でも、歌手として「王道中の王道」を歩いてきたと言える。

 どの職業でも同様ではあるが、ソリストの歌手や演奏家は「才能がなければ地位を築けない。才能だけでも地位を築けない」という傾向が極端だ。運もあるが、それ以上に人間関係構築の巧みさが鍵になる場合が珍しくない。賢く立ち回り、極端に言えば「えげつない」権謀術数とも無縁ではいられない、つまり“政治力”が重要な意味を持つ職業と言ってよい。


 したがって、彭さんは習近平主席にとって、仕事の面でも得難い相談相手になっていると想像することも可能だ。(編集担当:如月隼人)(イメージ写真提供:CNSPHOTO)


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