新華社によると、中国中央軍事委員会は最近になり「軍隊と武装警察部隊が全面的に有償サービス活動を停止することにかんする通知」を発表した。3年以内に、営利活動をすべてやめさせるという。


 中国では1980年代から、社会全体に「金儲け重視」の風潮が広まるにともなって、各地の軍部隊が営利事業に取り組む例が増えた。当時の軍は余剰人員が極めて多く、軍の資源や資産を民生用に放出する現象は、経済発展のために有利な面があったが、軍の営利活動が不正の温床になる問題も深刻化した。

 現在、軍や軍が行っている「有償サービス事業」として最も代表的なのは、軍が運営する病院での主に地方政府関係者を対象とする診察・治療の受け入れ、軍の学校での研修、さらに軍所属の研究機関での委託研究、倉庫や埠頭の使用、出版、映像や音響などの文芸作品関連がある。

 中央軍事委員会が2015年に行った工作会議で、習近平同委主席(共産党総書記、国家主席)は、軍による有償サービスを全面停止する考えを明らかにしたという。

 新華社によると、中央軍事委員会は今回の「通知」で、3年間前後の時間をかけて、軍と軍が管轄する武装警察が行っている「有償サービス」をやめさせる。今後は、現在から3年以上の契約を結ぶことは認めない。さらに、契約期間が残っている場合でも、解約できるものはただちに解約させる方針という。

 中国ではこのところ、軍事関連技術の向上に、民間企業の力を生かす「軍民融合発展」が強調されてきた。「通知」は、軍が引き受けてきた「社会保障任務」については、「軍民融合発展」のシステムに組み込んでいくと主張した。

 具体的内容は示していないが、地方政府の関係者と家族は、軍関係の医療機関を利用することが極めて多かったために、「特権が撤廃される」との動揺を防ぐために特記したとも考えられる。

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◆解説◆
 「軍は商売をしていない」という、先進国なら実態はともかくとして、考え方としてはあまりにも当然なことを改めて強調せねばならないところに、中国軍(実際には共産党軍)の遅れた体質が示されたと言える。

 習近平政権が、腐敗撲滅や、今回の「軍の商売禁止」を打ち出した背景に、地位を利用して利益を追求する風潮に「抑制」がかからなくなり、一般庶民の共産党を見る目も極めて厳しくなったことについての危機感があることは間違いない。


 しかし、「既得権益」をつぶしにかかるのは、政権担当者として極めて大きなリスクがある。過去の歴史を見ても、官界で「清」と「濁」の抗争が激化した場合、勝利するのは「濁」の側だったことが多い。

 習近平氏が、2012年秋に中国共産党総書記に就任したことで政権担当者の座を得たとすれば、(国家主席就任は13年3月)、すでに3年半の時間が経過したことになる。1期5年間の半ばを過ぎた。しかし、どこまで進めれば本人も周囲も国民も納得できる状態になるのか、ゴールは見えない状態だ。(編集担当:如月隼人)(イメージ写真提供:123RF)


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