中国は、自動車分野に特化した「Internet of Vehicles」(IoV)に関して、「LTE V2X」技術を通信手段とし、「5850~5925MHz」の周波数帯を割り当てる方向で調整に入った。米国や日本が採用しているDSRC(Dedicated Short Range Communications:狭域通信)とは異なる独自路線に踏み出す。
工業和信息化部(工業情報化部)が6月27日にIoV規格に関する管理ルール案を公布。7月27日まで意見を求めている。

 同ルール案では、「IoV直接通信」に関して、「信号機や道路標識などの路側インフラと車載設備間の無線通信を通じ、車と車の間、車と道路の間、人と車の間の直接通信と情報交換を実現すること」と定義づけしている。

 「5850~5925MHz」周波数帯で路側通信インフラを使用する場合は、無線通信当局への申請を義務化する。使用許可を得て路側通信インフラを設置・使用する企業は、所在地の省、自治区、直轄市の担当当局に無線ステーション運営免許の取得を申請しなければならないという。半面、免許未取得の場合は、無線電波の発信を厳禁するとともに、電波利用環境も保護しない――と規定した。

 無線機器の技術要件について、(1)動作周波数範囲:5905-5925MHz、(2)チャネル帯域幅:10MHz、または、20MHz。(3)送信電力制限:車、または、携帯無線機器はポートあたり23dBm。路側無線装置はポートごとに26dBmの周波数帯域5915-5925を使用し、ポートあたり23dBmに5905-5925MHz、または、5905-5915MHzの周波数帯域を使用する。最大アンテナゲインは3dBi。(4)キャリア周波数許容差は、0.2×10-6、(5)隣接チャネル漏洩電力比:31dB以上。

 この公表に合わせるように、通信キャリア世界最大手の中国移動(チャイナ・モバイル)が、テレマティクス事業を手がける新会社「中移智行網楽科技有限公司(中移智行)」の設立を宣言した。
中国移動とドイツ・テレコムが2015年3月に合弁で立ち上げた自動車向け通信会社である「中移独電網絡科技有限公司」と、中国移動のカスタマーサービス部を前身とする「中国移動通信集団政企客戸分公司」が共同で設立する。創設宣言に合わせて、中移智行の運営プラットフォーム「OSCAR」を対外公表した。

 中国移動は、自動車向け通信サービス分野で2017年には、華為技術(ファーウェイ)、上海汽車集団と提携し、スマートモビリティサービスやセルラーV2Xの分野で事業協力を開始している。また、自動運転の開発連合「アポロ計画」を推進するIT大手の百度(バイドゥ)とも、今年6月14日に事業協定を締結している。新設する中移智行は27日、百度AIオープンプラットフォームとの技術提携に向けた覚書を交わした。自動運転の基幹技術となるAIを活用したダイナミックマップ(3次元地図)の開発などで協力していくとしている。

 中国では国家主導のプロジェクトとして、街全体を自動運転車につなげる「自動運転シティ」の構想を実現する6つの実験都市を設置している。今年から動き出したこのプロジェクトは、将来的には都市インフラそのものを国外に輸出することをめざす長期計画になっている。「自動運転シティ」は北京の郊外などで都市インフラを1から作っており、インフラが整備された先進国では真似のできない実験を進めている。今回のルール案で示された「路側インフラと車載設備間の無線通信」という定義も、米国で進む自律型の自動運転車とは一線を画しているようだ。中国は「中国型」といえる自動運転社会に向けて一歩を踏み出した。(イメージ写真提供:123RF)


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