コーヒー自家焙煎に手軽さで新風 外食店向けに下処理済み豆と専用焙煎機 ネスレが新事業
ジェローム・プジェ本部長㊤と橋本研吾部長(ネスレ日本)
ネスレ日本がコーヒー焙煎ビジネスに乗り出した。昨年から欧州で展開している新ブランド「ROASTELIER by NESCAFE(ローステリア バイ ネスカフェ)」を導入し、3月23日、外食店などに向けて、独自焙煎機の貸し出し(リース)と厳選コーヒー生豆を独自技術でプレロースト(事前焙煎)したプライムロースト豆の提供を開始した。


この日、メディア体験会に登壇したジェローム・プジェ常務執行役員飲料事業本部長は「プロの方々向けのソリューションで、長きにわたるコーヒーへの情熱と専門知識、焙煎のノウハウなどを組み合わせた最先端技術となる」と胸を張る。この革新の肝は海外で製造されるプライムロースト豆となる。

通常の焙煎では、火入れから4、5分でコーヒー豆がポップコーンのように音をたてながら膨らむ「一爆(いちはぜ)」が生じるが、プライムロースト豆は、一爆の手前で焙煎を停止(プレロースト)し、ネスレ独自のプライムロースト技術によって水分量を調節し品質が一定に保たれたものとなる。これにより自家焙煎に“手軽さ”という新風を巻き起こす。

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ジェローム・プジェ本部長㊤と橋本研吾部長(ネスレ日本) 橋本研吾飲料事業本部アウトオブホームビジネス部部長は「大型焙煎機の場合、まず1時間くらいかけて焙煎機を温める必要がある。さらに生豆は農作物なので季節によっても質が変わり、それに火加減と焙煎時間を合わせないといけない。その手間を省くため焙煎の最終工程を残した」と語る。

プライムロースト豆各製品のパッケージにはQRコードが印字されており、QRコードを焙煎機で読み取ると、コーヒー豆ごとに最大6通りの焙煎レシピが選択可能となる。

製品は「ブラジル」(750g)、「コロンビア」(同)、「エチオピア」(500g)のシングルオリジンコーヒー3品を定番とし、10月までの期間限定コーヒーとしてアフリカ産の「ブルンジ」を用意。「今後、徐々にラインアップを整え選ぶ楽しさも打ち出していく」という。

焙煎機は、プライムロースト豆専用で生豆には対応していない。幅・奥行・高さともに約1mのコンパクトサイズで、1回当たり最大250gの小ロットで焙煎することができ所用時間は約10分となる。


焙煎時に発生する煙や「チャフ」と呼ばれる生豆の外側についている薄皮は自動吸引されるため排煙用の工事は不要で、必要な手入れは毎日20分程度の清掃のみ。

コーヒーの焙煎が眺められる設計となっているほか、焙煎中にコーヒーがはぜる音や焙煎の香りを楽しめるようになっており、「『店内焙煎中』という本格感を演出するインテリアの一つにもなる」。店内演出用に疑似焙煎のデモンストレーションも行うことができる。

通常、焙煎したてのコーヒーは香りを強く感じられるが、味わいも楽しみたい場合は、時期によって異なるが4、5日間程度を目安に保管してから飲むことが推奨される。

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ブランドアンバサダーに就任したバリスタの粕谷哲氏(ROASTELIER by NESCAFE)
ブランドアンバサダーに就任したバリスタの粕谷哲氏(ROASTELIER by NESCAFE) その点、プライムロースト豆は、コーヒー抽出の世界大会「World Brewers Cup」で世界チャンピオンに輝いたバリスタの粕谷哲氏が監修し「焙煎したてでしか味わえない香りと味の広がり、そして時間が経つにつれ変化する味わいの両方が楽しめる」。

焙煎機はフィルターをセットに月額税込み4万4千円でリース。コーヒー豆は非公表だが「一杯のコーヒーを500円程度で売っていただくお店をターゲットにした価格帯で、1日約2㎏程度のご利用を契約の目安にしている」。

東京・大阪など都心部にあるコーヒーショップやベーカリーに向けて提案し、今年50台の導入を目標に掲げる。

3月27日には「ローステリア バイ ネスカフェ」の世界感が体験できる旗艦店「ROASTELIER by NESCAFE三宮」(神戸市)がオープンした。

同店で出されるすべてのコーヒーメニューレシピを監修する粕谷哲氏は「焙煎したてのコーヒーで新しい楽しみ方を提供するという思いが、コーヒーの多様性を尊重する私の考えとマッチした」と語る。
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