食品業界に「スタートアップ」により新たなビジネスモデルを構築しようとする動きが増えてきた。新技術やアイデアにより従来のビジネスモデルを超えた事業で成長を目指そうというもので、コロナの影響で営業戦略の転換が迫られていることも背景となっている。
スタートアップとは、先進的な技術やアイデアにより従来のビジネスモデルの概念を超えたプロジェクトや企業のことを指す。新たな価値を創造するため早くから対応してきた企業もあれば、新規事業に向けて組織改革を図ったばかりの企業もあり、対応には温度差がある。

新規事業の矛先はヘルスケア領域や環境領域、大豆ミートなどプラントベース食品・飲料などに向けられ、スタートアップ企業と連携するため、提携や資本参加など対応はまちまち。オープンイノベーションによって、スタートアップとの連携を図る動きも目立ってきた。

昨年9月にスタートした、世界中のスタートアップと協働して食の新たな価値の創出を目指すグローバル・オープンイノベーション・プログラム「Food Tech Studio-Bites!」。

今までに不二製油グループ本社や日清食品ホールディングス、伊藤園、ユーハイム、ニチレイ、大塚ホールディングス、カゴメ、ハウス食品グループ、フジッコなどのパートナー企業のほか地方自治体も参加しており、フードテックに関連する世界各国のベンチャー企業と連携しながら新たなビジネス創出を目指している。

キリンホールディングスは今年4月、ベンチャーキャピタルのグローバル・ブレインと共同設立したCVCファンドを通じ、代替肉開発スタートアップ日本のDAIZへ出資したと発表した。DAIZは2015年設立のスタートアップ企業で、発芽に関する特許技術と独自の製法を掛け合わせ、無添加で肉に近い食感を展開している。

味の素社は、今年4月1日付で食品事業本部内にZ世代事業創造部を新設した。Z世代(Gen-Z。1995~2009年生まれ)の価値観などを追求し、スタートアップや大学などと新たな価値を共創することで事業化を推進し、今年度中にZ世代向け新製品または新サービスを展開する計画だ。

カゴメは、フードテック関連の新素材開発や新サービスを検討している。
昨年10月に「新規事業開発ラボ」と「事業開発室」(トップ直轄)を新設し、オープンイノベーションを通じて新素材や食のパーソナライゼーションといった新サービスなど、テクノロジーを活用して食分野に新たな価値を創造しようとしている。既にプラントベースドフードブランド「2foods(トゥーフーズ)」を展開するスタートアップ企業のTWO(東京都渋谷区)と業務提携し、製品・サービスの企画開発や内食・中食・外食ユーザーへの商品提案などを計画している。
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