コカ・コーラが植物性飲料参入へオーツ麦ミルクを選んだ理由 そしてなぜパッケージには「ナマケモノ」なのか?
高木正子シニアマネジャー(日本コカ・コーラ)
コカ・コーラシステムは3月からオーツミルク「GO:GOOD おいしいオーツ麦ミルク」3品を関東中部エリア(東京・神奈川・千葉・埼玉・群馬・栃木・茨城・山梨・静岡・新潟・愛知・岐阜・三重)限定で発売開始し、現在はECや専門店でも販売している。

同商品は、レモンサワー専門ブランド「檸檬堂」に代表される“ホワイトスペース”商品の1つ。


コカ・コーラシステムでは、飲料事業を主軸としつつ新たな可能性の探索としてホワイトスペースと称し清涼飲料水以外の新領域開拓を加速している。

販売エリアや販売チャネルを絞り込んだスモールスタートから開始し、そこで芽が出てきたものを大きく育てていく考えで、その成功例が「檸檬堂」となる。

今回、「おいしいオーツ麦ミルク」の開発にあたり着目したのがチルド飲料・植物性飲料というホワイトスペース。チルド飲料は過去からいくつかトライしているが、オーツミルクは日本初の試みだった。

植物性飲料参入にあたり市場規模の大きい豆乳やアーモンドミルクも検討し、最終的に世界的なトレンドなどを踏まえてオーツミルクに決定した。

その一番の決め手は味わいにあったという。

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高木正子シニアマネジャー(日本コカ・コーラ) 取材に応じた日本コカ・コーラの高木正子マーケティング本部ニュートリションカテゴリーシニアマネジャーは「ものすごくおいしいというのが一番の理由。牛乳に近いクリーミーさを持ち合わせ、植物性飲料特有のたんぱく質が口の中にねっとり残る感じもなく、とても飲みやすい」と語る。

砂糖を加えずに感じられる穀物由来の甘さも特長。

原料のオーツ麦を酵素処理で糖化させて自然の甘さを引き出し、製造面ではコカ・コーラグローバルで培われたノウハウと知見を活用した。

「酵素処理は各社で異なる。オーツ麦各品種との相性もあり、素材と酵素処理の組み合わせで味わいが全く異なってしまう。
コカ・コーラは様々な国でテストしており、そのナレッジを活かしておいしさを実現した」と説明する。

オーツミルク全般でみられる動きとしても、健康のために味わいを若干我慢して飲むという飲まれ方ではなく「おいしいから飲む」がメインとなっていると指摘する。「英国・米国・アジアで調査した結果、『おいしいから飲む』の声が6割を超えた」という。

このような味覚への高評価からオーツミルクは植物性飲料の中でも有望株となっている。

「世界的に18年から20年までの新製品導入数をみてもオーツミルクが断トツで、規模はまだ小さいものの他のカテゴリーと比べても伸び率が高く伸び放題の市場」との見方を示す。

BBCが報じたオックスフォード大学専門機関の調査結果を引き、オーツミルクが牛乳や他の植物性ミルクよりも環境にやさしい素材であることにも触れる。

「オーツミルクはCO2排出量・土地の使用面積・水の使用量の3つ全てにおいて低いのが特徴で、豆乳よりもCO2排出量が低く、アーモンドミルクよりも水の使用量が少なくて済む。土地に関してはオーツ麦を育てた後の土壌がより豊かになるという報告もあり、農薬を使わずに寒い地域でも育つため植物として強い」と述べる。

「おいしいオーツ麦ミルク」は、高品質で適正農業規範に則り化学肥料の使用を厳格に制限した環境で育てられフルトレーサビリティーを含む7項目をクリアした北欧産のオーツ麦を使用。日本人の味覚に合わせて国内製造されコレステロールゼロに仕立てられている。

植物繊維豊富な「なめらかプレーン」(200㎖・1ℓ)、カフェラテや調理などに好適で泡立ちする「こっくり濃いめ」(1ℓ)、エスプレッソを入れた「オーツカフェラテ」(200㎖)の3品を取り揃えて幅広い層に向けてアピールしている。

発売から約半年が経った今、「オーツカフェラテ」が牽引役となって植物性飲料の新規ユーザーとされる男性層や40代以下を多く獲得している。


「50代などご高齢な女性に飲まれるカテゴリーだが、『健康になりたいから飲む』というよりも日常の味わいを楽しむ選択肢の1つとして飲まれ、男性比率40%・40代以下の比率63%と、どの植物性飲料と比べても異なる層を獲得できた点がこの半年やってきた中で一番特徴的な反応」と振り返る。

オーツミルクへの参入を決めたのが20年。そこから21年3月の発売まで、コロナ禍による生活者の価値観の変化を反映させて製品とブランディングを詰めていった。

「大きな価値観の変化が起こっている中、どうしたら一番消費者の心に寄り添えるかを考えた」という。

その結果、編み出されたのがナマケモノをデザインしたパッケージや「なまけることは、いいことだ。」のスローガン。

このスローガンには「仕事と家庭が別物であったのが今や渾然一体となり、家庭での気分転換シーンも増えた。そうした中で、日常のささやかな幸せに気がつくなど自分の時間を大切にしようというメッセージを込めた」。

コカ・コーラが植物性飲料参入へオーツ麦ミルクを選んだ理由 そしてなぜパッケージには「ナマケモノ」なのか?
「なめらかプレーン」と「オーツカフェラテ」。いずれも200㎖サイズ(コカ・コーラシステム)
「なめらかプレーン」と「オーツカフェラテ」。いずれも200㎖サイズ(コカ・コーラシステム) ナマケモノのデザインは、コカ・コーラらしさも意識。

「成分訴求がメインの売場の中で、ライフスタイルに合わせて自分に合うものだと感じてもらえればコカ・コーラらしくできると考えた。オーツミルクの目的買いが少ない中で、この推しの弱いゆるキャラで確実に目をひくようにしたのが見た目の一番大きな差別化だと考えている」。

コミュニケーションでは、チルド専業メーカーにはない幅広いタッチポイントを活用。
大手レストランチェーンとのコラボや入浴後の気分転換として銭湯でのサンプリングも実施した。今後については、オーツミルクであることをより分かりやすく伝えるパッケージに刷新して11月から順次差し替えていく。

「どんどん新しいことにトライして社内でも『第二の檸檬堂を目指そう』と言っている。関東の導入店では物凄くいいスタートを切り、今後、物流を構築してテスト・ラーニングを経てどんどん拡大していきたい」と意欲をのぞかせる。

《参考》オックスフォード大学専門機関の調査結果を報じたBBCの植物性飲料に関する記事

https://www.bbc.com/news/scienceーenvironmentー46654042
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