
4月21日、同社を含む9社が連携し、国内で初めて、非食品用途 PET樹脂を、市販される飲料用ペットボトルに再生することが発表された。
PETボトルリサイクル推進機議会の「PETボトルリサイクル年次報告書2024」によると、PET樹脂生産・輸入量(約173万トン)の約4割を占めるペットボトル(約64万トン)はボトルtoボトルなどで資源循環が進んでいるのに対し、残りの約6割(約109万トン)を占めるペットボトル以外のシートやフィルム、繊維などの非食品用途PET樹脂は、資源循環が遅れている。
非食品用途PET樹脂の多くは、もともと使われていた製品よりも品質的劣るものに利用するカスケード利用や焼却処分(サーマルリカバリー)されている。
左から米本友華R&D本部研究開発推進部主務と中谷正樹R&D本部パッケージイノベーション研究所リサーチフェロー 今回、非食品用途PET樹脂を資源循環させる。
この日、発表会に臨んだ米本友華R&D本部研究開発推進部主務は「PET樹脂の資源を循環させる社会を実現するためには、ペットボトルのみに閉じた形ではなく、ペットボトル以外の形態も含めPET樹脂全体で循環させていく」と語る。
ペットリファインテクノロジーのケミカルリサイクルを導入して、PET樹脂全体の資源循環を実現していく。
ケミカルリサイクルは、化学的再生法と呼ばれ使用済みペットボトルをPET樹脂の分子レベルまで分解する。
一方、メカニカルリサイクルは物理的再生法と呼ばれ、使用済みペットボトルを選別・粉砕したフレーク(薄片)をアルカリ洗浄し高温・真空下にさらして樹脂に染み込んだ汚染物質を吸い出す手法となる。
メカニカルリサイクルの再生ペットボトルの原料は現状、食品用途ペットボトルに限られる。
ケミカルリサイクルにおいても再生ペットボトルの原料は食品用途ペットボトルに限られていたが、今回新たに、工業用フィルム、化粧品ボトル、自販機用商品サンプルといった非食品用途PET樹脂を原料に追加した。
中谷正樹R&D本部パッケージイノベーション研究所リサーチフェローは「前例がなく、非食品用途PET樹脂を食品用途ペットボトルに再生させる際の食品安全性の担保や試験方法、どのような基準で対応したらよいかなどが不明瞭であり、その部分にキリンの技術が関与し、食品安全性を確保する上での考え方や評価方法を構築した」と述べる。
ペットボトルを回収する過程で混入の恐れのある不純物の除去を確認して食品安全性を確保した。
「有機系の不純物については、追加のサンプルをいくつか足して、工場の生産も過酷な条件で行った上で不純物が除去できていることを確認した。

これにより「残り約6割の非食品用途PET樹脂の資源循環に光が射す。言い換えればケミカルリサイクルに筋道をつけた」という。
今回連携した9社は以下の通り。
キリンホールディングス、JEPLAN、TDK、村田製作所、花王、ファンケル、キリンビバレッジ、ペットリファインテクノロジー、アサヒ飲料。
原料については、TDKと村田製作所が、電子部品を製造する際に使用された工業用PETフィルムの端材をリサイクル原料として供給。
化粧品ボトルは、花王とファンケルが店頭で回収した使用済みの化粧品ボトルを供給する。
自販売用商品サンプルは、キリンビバレッジで商品入れ替え時に不要となったものを供給。

キリンビバレッジは4月から「キリン メッツ」と「キリンレモン」のペットボトルの一部に採用。両ブランドの年間製造数量約500万ケースのうち10%弱への採用を予定している。
花王は5月から化粧品ボトルの一部に再生PET樹脂を一部採用し製造を開始する。アサヒ飲料は 10 月以降の採用を予定し、ファンケルにおいても採用に向けた検討をしていく。
なお、ペットリファインテクノロジーによると、同社ケミカルリサイクルでのPET樹脂製造におけるCO2排出量は、石油由来の原料からの製造と比較し約47%削減につながる。