コメの高値がパン粉業界にも影響を及ぼしている。ご飯とパンであれば主食同士、その関連性は想像しやすいが、なぜパン粉が影響を受けるのか。


その一因が、全生産量の9割を業務用が占めるという業界構造である。全国パン粉工業協同組合連合会によると、今年3月までのパン粉生産量は前年比3.1%減。このうち業務用は2.7%減で、21年以降4年連続で増加を続けてきたが、今年はここまで減少で推移する。

「スーパーや惣菜店、弁当店のおかずから揚げ物が減っている」。同組合の小澤幸市理事長(富士パン粉工業社長)はそう指摘する。主食であるコメの価格が上昇し、それ以外の食材がとばっちりを受けた格好だ。

例えば、パン粉を使ったメニューの代表ともいえるトンカツ。より安価な鶏肉を使ったチキンカツに代わるだけならパン粉の使用量が減ることはないが、唐揚げや照り焼きに置き換えられるケースが増えた。

副菜の一つとして扱われていたコロッケもまるごと1個ではなく、半分に切ったものを目にするようになった。トンカツがメーンとなる定食やカツ丼も「サイズはひと回り小さくなっている」(小澤理事長)という。中食だけでなく外食においても全般的にメニュー価格が上昇したため、パン粉メーカーの得意先であるトンカツ専門店の客数が落ちている。

一方、家庭用のパン粉も苦戦する。
中食・外食へのシフトが続き、家庭用の消費量はコロナ禍で内食需要が拡大した2020年を除き、この10年間低迷している。

さらに、ここに来てコメを含めた物価高で安価なPBの支持が強まり、特にNB商品が苦戦を強いられている。PBとNBの両方を製造するメーカーにとっては、利幅の大きいNBの売上が落ちることで、全社の利益率が減少を余儀なくされる。

フライスターの関全男社長は「消費者は肉や魚の値段には敏感だが、パン粉についてはそこまで価格を意識していない。パン粉の値段が上がったからフライを作るのをやめようということにはならない」と説明。安価で販売する必要はないとの考えを示す。

パン粉業界では様々なコストアップが進行した3年ほど前から、従来のように小麦粉と連動した価格設定を見直す動きが強まった。今年に入ってからも多くの企業が粉価とは関係なく値上げの方向で動いていたが、その間にも油脂やイーストなどの副原料、包装資材、人件費などが次々と値上がりし、人手不足をカバーするための設備投資も困難な状況だ。

既存の設備を更新するだけでも数年前に比べるとコストは2倍以上に上がっており、省人化のための新規設備を導入するならそれ以上の費用が必要となる。小澤理事長は「今の収益構造では、とても追いつかない」と懸念を示す。今まで以上に適正価格での販売が不可欠な状況となっている。
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