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5年連続5度目の出場となる大谷(ドジャース)。昨年のオールスターでは自身初の本塁打を放った

MLBでは日本時間7月16日、プロ野球では7月23、24日に開催される夢の祭典。

日米の野球に精通する野球評論家のお股ニキ氏が注目選手や注目対決を一挙紹介!

■大谷よりもジャッジよりも打つスイッチ捕手

歴史的なパフォーマンスを見せるMLBの二大スター、大谷翔平(ドジャース)とアーロン・ジャッジ(ヤンキース)。今年のオールスターでは、昨季MVPのふたりがそろってリーグ最多得票で選出されたが、ほかにも注目すべき選手が非常に多い。

「知名度優先で選ばれることもある日本のオールスターと違い、今まさに全盛期のトップ選手ばかり集まるのがMLBのオールスターです。今年も豪華なメンバーが選ばれています」

お股ニキ氏がこう語るスター軍団の中には、来春のWBCで日本の強敵となりえる選手が多い。まずは大谷の味方となるナ・リーグの野手から紹介しよう。

ドジャースの同僚であるウィル・スミスやフレディ・フリーマン、ライバルのパドレスからマニー・マチャド、さらに、2年前に前人未到の「40本塁打・70盗塁」を達成したロナルド・アクーニャ・ジュニア(ブレーブス)ら、日本のファンにもおなじみの名前が並ぶ中、お股ニキ氏がほれ込んでいるのは二塁手のケテル・マルテ(Dバックス)だ。

「全盛期の山田哲人(ヤクルト)のように体の回転をうまく使って長打が打てる選手です。昨季36本塁打で今季もすでに19本塁打。MLBでは日本と違ってスイッチヒッターの強打者が何人もいますが、その代表格と言えます」

ナ・リーグでは打点1位の鈴木誠也(カブス)も注目されたが、同じDH部門に大谷がいる影響もあってか、残念ながら選外に。ただ、カブスの同僚からは「PCA」の愛称を持つピート・クロウ=アームストロングとカイル・タッカーという外野手ふたりが選出された。

「PCAは周東佑京(ソフトバンク)を連想させる瞬発力に優れたアスリートタイプ。盗塁王も狙えるのに長打も打てる。まだ23歳と若く、将来性も有望です。

そして、タッカーは『最後の4割打者、テッド・ウィリアムズ(元レッドソックス)の再来』と高校時代から呼ばれてきた逸材。勝負強く、昨季まで所属していたアストロズでは打点王のタイトルを獲得したことも」

一方、ア・リーグの注目はカル・ローリー(マリナーズ)。大谷、ジャッジを抑え、両リーグ最多35本塁打を放つ強打の捕手だ。

「『大谷vsジャッジ』で盛り上がる今のMLBにおいて、今季前半戦のローリーの爆発ぶりはすさまじい。サッカーでいえば全盛期の『リオネル・メッシvsクリスティアーノ・ロナウド』時代に得点王レースでトップを走るようなものです。

しかもスイッチヒッターで、左右でタイプが違います。右では打率も長打も期待でき、左では打率よりも一発に期待が持てます」

日米オールスター「伝説の瞬間」は生まれるか?【MLB編】
前半戦で大谷やジャッジをも上回る35本塁打を記録したローリー(マリナーズ)。ホームランダービーにも出場予定だ

前半戦で大谷やジャッジをも上回る35本塁打を記録したローリー(マリナーズ)。ホームランダービーにも出場予定だ

捕手としての守備力も申し分ないという。

「フレーミングもブロッキング技術も高く、彼が正捕手になってからマリナーズ投手陣が良くなっており、リードのうまさもうかがえます。ウィル・スミスやJ・T・リアルミュート(フィリーズ)と共に、WBCではアメリカの正捕手候補と言えます」

■先発投手は最高の栄誉

続いて、注目の投手陣を見ていこう。日本人では山本由伸(ドジャース)と菊池雄星(エンゼルス)が選ばれたが、ほかにもMLBを代表する投手ばかりが名を連ねている。

「ナ・リーグでは、昨季の新人王でWBC参戦を表明しているポール・スキーンズ(パイレーツ)のほか、総合力の高いザック・ウィーラー(フィリーズ)やローガン・ウェブ(ジャイアンツ)、昨季サイ・ヤング賞のクリス・セール(ブレーブス)らが先発の有力候補。

15球団からたったひとりだけ選ばれる先発は最高の栄誉ですが、レギュラーシーズンの登板間隔にも左右されるため、実力だけでなく運も必要です」

確かに、日本人で先発を務めたことがあるのはドジャース1年目の野茂英雄と、エンゼルス時代の大谷翔平だけという点からもその難しさがわかる。では、ア・リーグの先発候補は誰か?

「今季サイ・ヤング賞候補のひとりで現在防御率1位のハンター・ブラウン(アストロズ)、2度目のトミー・ジョン手術から復活して最多勝争いに挑むジェイコブ・デグロム(レンジャーズ)ら実績十分の投手は何人もいます。ただ、その中でも頭ひとつ抜けた存在なのがタリク・スクーバル(タイガース)です」

日米オールスター「伝説の瞬間」は生まれるか?【MLB編】
昨年、最多勝・最優秀防御率・最多奪三振の投手3冠を達成し、満票でサイ・ヤング賞を受賞したスクーバル(タイガース)

昨年、最多勝・最優秀防御率・最多奪三振の投手3冠を達成し、満票でサイ・ヤング賞を受賞したスクーバル(タイガース)

スクーバルは昨季ア・リーグのサイ・ヤング賞投手。今季も順調に勝ち星を重ね、勝ち星や奪三振数など各部門でリーグ上位につけている。まさに〝現役最強左腕〟だ。

「圧巻だったのは5月のガーディアンズ戦。わずか94球で無四球完封を演じました。最後の94球目に自己最速の165キロを計測しましたが、まさに異次元です。2年連続サイ・ヤング賞受賞の期待も大きく、登板間隔で問題がなければア・リーグ先発の最有力候補です」

もしスクーバルが先発すれば、初回からいきなり「ナ・リーグ1番大谷」との夢の対決が実現することになる。

「共に全盛期の大谷とスクーバルの対戦ほど楽しみなマッチアップはありません。そこで大谷が先頭打者アーチを放つ、なんてことがあれば、MLBの歴史に新たな伝説として刻まれるはずです」

2試合制の日本と違い、たった1試合だけのMLBオールスター。それゆえステータスは高く、選手たちも少ない出番の中で最高の結果を出そうとする。

「日本のオールスターではパフォーマンスが重視され、プレー強度を落とすことも散見されますが、MLBではまずありえません。真剣勝負だからこそ、見る者を惹きつける。

スクーバルは先発でなくとも大谷との対戦の可能性はありますし、ア・リーグ捕手は先ほど紹介したローリーが有力。彼がどんなリードをするかも含め、来年のWBC前哨戦としても注目です」

昨年はオールスター初アーチを放った大谷。今年はそれ以上の伝説を期待したい。

*成績は日本時間7月8日時点

文/オグマナオト 写真/時事通信社

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