2026年が始まりました。遅くなりましたが、皆さん本年もよろしくお願い致します。
元日のニューイヤー駅伝に始まり、箱根駅伝、高校サッカーやラグビーと、年明け早々からスポーツが日常を彩っています。今年はスポーツファンにとって、まさにビッグイベントが続く一年になります。
6月から7月にかけては、FIFAワールドカップが史上初めてアメリカ・カナダ・メキシコの3カ国共催で開催されます。前回大会で日本が優勝し、日本列島が熱狂したワールド・ベースボール・クラシックも控えています。そして9月からは、32年ぶりの国内開催となる愛知・名古屋アジア競技大会、さらにアジアパラ競技大会もスタートします。
こうした豪華なラインナップの中で、今回注目したいのが、2月6日に開幕するミラノ・コルティナ冬季オリンピックです。
南国・宮崎育ちの私は、正直なところ寒さが得意ではありません。現役時代も怪我のリスクを考え、スキーやスケートに親しむことはほとんどありませんでした。
それでも、8歳の頃からオリンピックに魅了されてきた私は、夏季も冬季も分け隔てなく、同じ熱量で五輪を見続けてきました。自国開催だった98年長野五輪でのスピードスケート清水宏保(しみず・ひろやす)さんの金メダルや、スキージャンプ団体の日本チーム金メダルはいまも強く印象に残っています。
私が初めてオリンピックを現地で取材したのも、実は冬季五輪でした。2018年の平昌大会です。
韓国国内でも寒さが厳しい場所として有名な平昌は、2月は夜間にマイナス20℃近くまで冷え込むことも。しっかり防寒対策をして現地入りしましたが、それでもかなり寒かったです
実際に現地に立つと、想像を超える寒さに驚きながらも、初めて体験する冬季五輪の現場取材に、気づけば没頭していました。
そこで私が最も衝撃を受けたのが、冬季競技が持つ「不確実性」でした。
私が戦ってきた競泳は、言ってみれば極めて安定した環境下で行なわれる競技です。水温が常に一定に保たれた、無風の室内プールでの開催がほとんど。隣のレーンとの境界は明確で、他者に進路を妨げられることもありません。基本的には実力が結果に反映されやすく、強い選手ほど本番でも力を発揮する可能性が高い。番狂わせが起きにくい競技だと言えます。
一方、冬季競技の舞台となるフィールドは、刻一刻と表情を変える雪山と氷上です。ほんの一瞬の風の変化、エッジがミリ単位でずれただけで、積み上げてきた準備や自信も、一瞬で崩れ去る可能性がある。
その不確実性は、時に残酷でありながら、同時に強烈な感動を生み出す要因でもあります。
平昌では、強風や視界不良によってスケジュール変更が相次ぎました。分刻みで正確に進行する大会運営に慣れていた私にとって、天候の回復を待ちながら、いつ始まるとも知れない本番に向けて、何時間も、時には数日間も集中力を保ち続ける選手たちの姿は衝撃的でした。
競技力だけではどうにもならない状況の中で、心と身体の状態を保ち続ける。技術や体力と同じくらい、目の前の環境を受け入れ、適応する力が求められている。選手たちの精神的なタフさと対応力の高さこそ、私が平昌で最も印象に残った部分でした。
スノーボード「ビッグエア」の会場にて。この日も曇天と強風で、競技開始時間が遅れました
平昌の競技の中で忘れられないのは、羽生結弦(はにゅう・ゆづる)選手の執念の金メダル、そして小平奈緒(こだいら・なお)選手の冷静かつ緻密な準備が結実した金メダルです。羽生選手は直前の怪我で十分にトレーニングが積めていない中、最後まで演技をやりきり、滑り終わった直後の鬼気迫る表情と、その後の身体中のエネルギーをすべて出し尽くしたような姿に、強い感動を覚えました。
フィギュアスケート男子フリーの最終滑走グループが場内に紹介されているシーン。羽生選手が金メダルを獲得した瞬間の興奮と感動は、今も強く私の心に残っています
小平選手の滑りからは、緻密なトレーニングと技術の積み重ねから生まれる、完璧さの中に宿る職人のような凄みを感じました。
そう考えると、前回の北京オリンピックは、やはり少し特殊な大会だったと言えるかもしれません。コロナ禍の影響で厳しい行動制限が設けられ、無観客に近い環境で行なわれた大会でした。冬季五輪が本来持っている「空気感」や「臨場感」を、私たちが十分に共有できた大会だったとは言い切れません。
もちろん、それは選手たちの責任ではありません。限られた環境の中で最高のパフォーマンスを発揮しようとする姿勢は、これまで以上に尊いものでした。実際、北京ではスノーボード平野歩夢(ひらの・あゆむ)選手の圧巻の滑り、スキージャンプ小林陵侑(こばやし・りょうゆう)選手の安定した強さ、スピードスケート髙木美帆(たかぎ・みほ)選手の複数メダル獲得など、日本人選手の印象的な活躍が数多くありました。
そして彼らは、次のミラノ・コルティナ冬季オリンピックでも、再びリンクや雪上に立つことになります。
さらに私が注目したいのが、怪我から復帰し今シーズン絶好調のモーグル堀島行真(ほりしま・いくま)選手です。彼とはJOCのアスリート委員会でもご一緒しましたし、24年パリ五輪では現地で偶然出会い、夏季五輪からも刺激を得ようとする姿に、五輪にかける強い思いを感じました。是非頂点を目指してベストパフォーマンスに期待したいところです。
パリ五輪がコロナ禍を乗り越え、「フルスペックのオリンピック」として五輪の魅力を再び世界に発信したように、ミラノ・コルティナ五輪でも観客の歓声や選手同士の交流、街全体の熱気が戻ってくるはずです。始まってから盛り上がるのを待つのではなく、始まる前から知り、注目し、楽しむ。
不確実な舞台だからこそ生まれる一瞬の輝きを、皆さんとともに見届けたいと思います。TEAM JAPANを、ぜひ一緒に応援していきましょう。
文/松田丈志 写真提供/Cloud9



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