想定以上の過激な反響に大困惑も、開発者の現役弁護士が明かす〝本当の狙い〟とは(写真はイメージです)
「口コミ被害は受忍すべき」とする裁判所の論理は、自らが指弾される当事者になっても揺るがないのか? 現役弁護士がAIを駆使し、全国の裁判官を実名で格付けする 『裁判官マップ』を独力開発した。司法の世界に一石を投じる 「実験」の真意に迫る!
【裁判官を格付け! 「実験場」の真意】今年3月14日、日本の司法史上、類を見ないウェブサイトが産声を上げた。
公権力の行使者を飲食店のようにレーティングの対象とする仕組みは、公開直後から法曹界に静かな波紋を広げた。
ローンチから約1ヵ月、口コミは1900件超に達している。ブラックボックス化した司法の透明化につながるとの評価がある一方、判決への不満に端を発した逆恨みや、個人攻撃に近い誹謗中傷も散見されるのが実情だ。
運営者はサイバーアーツ法律事務所の田中一哉弁護士。AIを駆使し、自らシステムを構築してローンチまでこぎ着けた。司法の一翼を担う弁護士が、なぜ自ら〝劇薬〟とも言えるシステムを世に問うたのか。その真意に迫る。
――今回、このシステムを作った直接の動機とは?
田中 私は主にSNSやGoogleマップ上の誹謗中傷・デマに対する「削除請求」や「発信者情報開示請求」を受任しています。
不当な口コミは零細店にとって死活問題ですが、裁判所に足を運ぶたびに感じるのは、裁判官の〝感度〟の圧倒的な低さです。
「たかが口コミ」「読む人は真に受けない」。
裁判官が原告となるような裁判でも、これまでと同じように「消す必要はない」という判決が出せるのであれば、裁判官側は一貫した考えを持っていると理解できます。
しかし、ここで「消すべきだ」という判決が出れば、裁判官の判断は原告の属性によって変わるダブルスタンダードということになります。
つまり裁判官マップは、裁判官が果たして〝筋を通せるのか〟を見極めるための一種の実験場なのです。
田中一哉弁護士
――構想そのものはいつ頃からあったのでしょうか?
田中 アイデアを思いついたのは一昨年の秋ですが、実際に作り始めたのは今年の2月からです。実はこの間、プログラム言語も勉強し、試行錯誤していましたが、思い描くサイトの構築は難しかった。
――それが、わずかひと月ほどで公開にまで至りました。この短期間での進展には、画期的な何かがあった?
田中 すべてはAIのおかげです。2月にリリースされた最新のプログラム生成AIを試したところ、その性能は驚異的でした。緻密な設計図などなくとも、こちらの場当たり的な要望に応じ、プログラムを即座に書き換えてくれる。AIの支援がなければ、このプロジェクトはアイデアのままお蔵入りしていたはずです。
ローンチ1ヵ月で口コミは1900件を超えた。全国2500人の裁判官の細かいデータが閲覧可能。判決のほか、異動や退官などの情報もこまめに更新される
――単なる「口コミ」にとどまらず、裁判官の経歴なども網羅されています。この膨大な情報の集積において、何を最も重要視したのでしょうか。
田中 初めは「口コミだけでいいかな」と思っていました。しかし、それでは書き込んだ人の主観的な評価だけになり、公平じゃない。
そこで、できるだけ多角的に裁判官を評価できるよう、経歴、過去の判決や論文なども参照できるようにした。
これこそ、人力では永遠に終わらない作業でしたが、その収集と分類をAIに任せることでスムーズに進みました。
【過激化する口コミへの対策】――公開直後から、「X」を中心に議論が噴出しました。中には批判的な意見もあったようですが......。
田中 「裁判官への圧力になりかねない」といった批判もありますが、逆に「司法に対する民主的統制に役立つ」とか「野放しだった司法が監視できる」といった肯定的な評価もあります。
ただ、自分としては「裁判官への圧力」や「裁判の民主化」などと、大それたことを考えてはいません。
――実際には予想を上回る反応が起きているように見えます。この現状を、運営者としてどう受け止めていますか。
田中 正直、ここまでの反響は想定外でした。「弁護士仲間の間で話題になるかもな」程度に考えていたのですが、SNSで拡散され、一般の方にまで広く浸透している現状には困惑もあります。
また、バズった影響か、口コミの内容が想定より過激化しており、対策が必要だと感じています。実際、注目度の高い判決が出ると、その裁判に関わった裁判官へ一気に口コミが集中してしまう。このままでは世間の関心が大きい事件の際、書き込みが制御不能なほど過熱しかねません。
対策のひとつはAIによる投稿内容のレビューです。中傷に当たると判断すれば、確認画面で「この投稿にはこんな問題点がありますが、大丈夫ですか?」とAIが念押しするフローの構築を考えています。
ニュースになるなど注目度の高い判決については、AIによる担当者の紹介や判決の経緯などの説明がつく
現状では裁判官への誹謗中傷に近いコメントが目立つ。表現の自由を損なわない範囲での対策が求められる
――投稿の自由を尊重すれば、誹謗中傷のリスクと表裏一体です。
田中 そうした対応は検閲に近くなるので、できる限りやりたくないんです。また、投稿を禁止するという形にすると、どこまでは大丈夫かを試すような人が出てきて、いたちごっこになる可能性もあります。
今のAIは、設定次第で非常に人間らしい振る舞いが可能です。問題点の指摘についても、柔らかく注意して、投稿者に冷静になってもらえる仕組みにしたいですね。
【〝推しの裁判官〟を見つける場に】――今後どのような形で内容を深化させていく予定ですか。
田中 今現在、サイトの枠組みはできていますが、その中身の充実はまだまだです。先ほど申し上げた裁判例についても、現段階で6万7000件ほど掲載していますが、解説がつけられているのはまだ約3700件です。
この解説もAIに書いてもらっていますが、もっと充実させたいですね。
――この裁判官マップが浸透した先、日本の裁判の風景が変わると思いますか?
田中 理想は裁判官の判断にダブルスタンダードがないこと。つまり、当事者が誰であれ「憲法と法律、そして良心」のみに従って判決が下されているという証明です。
一方、わずかながら、市民と裁判所との関わり方が変わってほしいという期待はあります。
本来、裁判は公開ですが、現実には傍聴席は閑散とし、縁遠い存在です。
――外からの視線が司法の組織を変える力になる?
田中 はい。裁判所は民主的統制が利きづらい仕組みの中にあります。逆にその閉鎖的な仕組みゆえに、裁判官は「自分たちが世間にどう見られているか」という民意を、内実では非常に気にしていると個人的には思います。
裁判官マップのアクセス数が増え、正当な評価としての口コミが集まれば、それは組織の壁を越えて、個々の裁判官に直接響くはずです。
今の裁判所は、上級審の顔色をうかがう「前例踏襲」の側面が強い。しかし、もし外部からの可視化された評価があれば、前例をなぞるだけではない、自分の良心に従った判決を書くことへの心理的な後ろ盾になるかもしれない。
結果として、そうした独自の気概を持った裁判官の仕事ぶりが、組織の中でも無視できない評価として人事に影響を及ぼしていく。そんな、不条理のない構造に変わっていくことを、私はひとりの実務家として切に願います。
過去の判例をなぞる「前例踏襲」に一石を投じる狙いもある裁判官マップ。果たして司法に変化をもたらせるか
* * *
公開からおよそひと月が経過した裁判官マップには、世間で注目された札幌高裁のクマ駆除ハンターを巡る判決や、東京地裁の不貞行為の定義に関する判断などに対し、多くの口コミが寄せられている。
だが、現状、その内容はSNS上の〝炎上〟に近いものも少なくない。投稿者同士のののしり合いや、判決の背景が読み取れていない感情的な書き込みも散見されるなど、田中氏の理想である「推しの裁判官を探す」という風景には、まだ距離があるのが実情だ。
それでも、市民にとって遠い存在だった裁判官に光を当て、司法のあり方を問うこの試みは、法曹界に大きな一石を投じることは間違いない。
このサイトが単なる不満のはけ口に終わるのか、それとも市民と司法をつなぐ新たなプラットフォームへと育つのか。田中氏の今後のかじ取りと、利用者の良識が試されている。
●田中一哉(たなか・かずや)
サイバーアーツ法律事務所代表。早稲田大学商学部卒、筑波大学大学院工学修士。2007年弁護士登録。ネット事件を専門とする傍ら、26年3月にAIを駆使した『裁判官マップ』を独力で開発、運営
取材・文/植村祐介 イメージ写真/PIXTA
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