【#佐藤優のシン世界地図探索160】2027年の「ノーベル平...の画像はこちら >>

金正恩主席に自動小銃を送り、ヨイショするルカシェンコ・ベラルーシ大統領(写真:AFP=時事)

ウクライナ戦争勃発から世界の構図は激変し、真新しい『シン世界地図』が日々、作り変えられている。この連載ではその世界地図を、作家で元外務省主任分析官、同志社大学客員教授の佐藤優氏が、オシント(OSINT Open Source INTelligence:オープンソースインテリジェンス、公開されている情報)を駆使して探索していく!

*  *  *

――フランスの人口統計学者のエマニュエル・トッドさんが、「今回の米国のイラン攻撃は、ウクライナ戦争でロシアに負けたことを誤魔化すためにやった」と言っています。

今度はイランにも勝てないとなると、米国は世界帝国から地球のイチ地方勢力に落ちぶれる、ということになりますかね?

佐藤 そういうことになります。

――そうなった場合、日米同盟はどうすればいいのですか?

佐藤 太平洋において日本にとっての最大脅威は米国です。

――では、そことは仲良くする。

佐藤 そうです。なので、日米同盟は継続します。しかし、トランプがやっていることが本当に間違っているかどうか、その点はもう一度考えなければなりません。

――なぜですか?

佐藤 まず、47年前の1979年にイラン革命が起きました。それからイランは一貫して、イスラエルを地上から抹消するという政策を持っています。

それを実現するために核開発、弾道ミサイル開発を行なっています。そして、その弾頭ミサイルはすでにイスラエルまで飛んでいます。

――イスラエルの弾道ミサイル防衛システムをすり抜けて、数多くイランのミサイルが着弾しています。

佐藤 だから、あとは核実験をやり、弾道ミサイルに搭載するための小型化した核弾頭を作るだけです。

その方針で47年間やっているんですから、作ったら絶対に使いますよね?

――そりゃもちろん使います。

佐藤 そうしたら、やはりイランの核戦争を阻止して、"長崎で使われた核が最後の実戦使用"という状況を維持しているのは、実はトランプじゃないでしょうか?

――それは佐藤さんの著書『第三次世界大戦を阻止するのはトランプしかいない』(宝島社)でもおっしゃっていますね。その任務をトランプは完遂したのですか?

佐藤 そうです。核戦争を阻止することは、トランプの歴史的使命です。なので、今回のイラン戦争に対してトランプにノーベル平和賞を与えてもいいと思いますよ。核戦争が一度始まってしまえば、今後、他の国も使うようになる可能性があります。

――「やっぱり使うと便利!」と恐ろしいことになりますから。

佐藤 だから、アメリカは超大国から転落するにしても、その置き土産として核拡散だけは防いだ、ということですね。

イランだけでなく、これから核を持って使いそうな国が出てきた場合、核大国が寄ってたかって潰すという流れを作ったわけです。これは人類にとってはプラスじゃないですか?

――はい。すると、アメリカが地方勢力に落ちぶれても、次に核戦争を始めたいという国が現れたら、米露中英仏印、パキスタン、イスラエル、それらが集まって、一気にぶっ潰すという新しい世界システムになるんですね。

佐藤 はい。

そしてそこに北朝鮮が加わるかもしれません。

――その北朝鮮に、ベラルーシのルカチェンコ大統領が自身の作ったライフル銃を献納しました。

佐藤 しかも、サイレンサーが付いているみたいですね。

――はい。で、金正恩総書記は大統領の眼前でガチャンと初弾装填したんですよ。一番やってはいけない行為なんですけど、ルカチェンコ大統領は「さすが、使い慣れていらっしゃる!!」とヨイショしていました。あれはどういうことなんでしょうか?

佐藤 「ロシアの言いなりにはならないぞ」というメッセージですね。北朝鮮とベラルーシが組んで、大国にいい調子で使われないぞと。

――そりゃ、プーチンは嫌な顔をして見てますよね。

佐藤 そうですね。だから、ロシアは非常に突き放した感じですよね。北朝鮮とベラルーシが擦り合わせて、軍事産業での製品の値段を釣り上げてくる可能性がありますから。

それからもうひとつ重要なことがあります。金(ゴールド)で作ったベラルーシの高貴な家の紋章を、金正恩と奥さんと娘さんに献上しているんですよ。これ、娘を後継に認めるという大きな意味があります。

――外交術から見ると、至れり尽くせりで完璧ですね。

佐藤 そうです。これは、非常に重要な動きですよね。やっぱりベラルーシは生き残るのに必死なんですよ。「ロシアの手先、手駒としては使われないぞ」と。そういう意志が北朝鮮とベラルーシをくっつけているんです。

また、その両国を結び付けているものがもうひとつあります。それは、どちらも戦争によって廃墟から生まれて来たという歴史。北は朝鮮戦争、ベラルーシでは一度廃墟になり、そこから復興しました。

いわば自分たちのところを滅茶苦茶にされて、ゼロから発展してきた国です。だから、共通性があるんですね。

今回のことも、暗にアメリカを批判しているように見えて、ロシア、さらに中国も批判しています。そういった大国からの属国扱いを拒絶しているんです。

――そのあたりからか、金総書記の妹さんが日本に対しても言及し始めています。ベラ・北・日の団子三兄弟になるのでしょうか?

佐藤 金正恩、金与正も日米首脳会談に反応して、いろんな条件を付けて日本と関係改善したいと言っていますね。だから、全体に動き出しています。米中露の思惑通りには動かないぞ、と。

――異形の連帯でありますね。

佐藤 皆、生き残りのために必死なんですよ。

――佐藤さんは、トランプとイランの大衆をインテリジェンス分析に向かない対象としています。トランプは理解できますが、イランの大衆に関してははなぜなんですか?

佐藤 イランの体制は、「イスラム主義」という傘がかかっているからまとまっているようなものです。

だから、イスラム革命防衛隊の恐怖政治で統治しているんです。そこで集まる情報、その情報に基づく分析では意味がありません。

――となると、ネタニヤフはトランプとイラン民衆を味方に付けた状態。今回の戦争は最強のイラン攻めになりました、と。

佐藤 だと思いますよ。いずれにせよ、ネタニヤフ首相は失脚して、刑務所に入れられるでしょうけどね。

――なんとまぁ......。

佐藤 ただ、ネタニヤフは生き残りを考え、イランに核を持たせないという大きな仕事をしました。イランは核を持たせたらすぐに使う国ですからね。

だから、核戦争の抑止という点を考えると基本、トランプとネタニヤフの功績は肯定的に評価すべきだと思います。

――すると、来年のノーベル平和賞はトランプとネタニヤフが受賞ということですね?

佐藤 そういうことになるでしょうね。

次回へ続く。

次回の配信は5月22日(金)を予定しています。

取材・文/小峯隆生

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