私学の名門、早稲田ブランドに異変が?

大阪府茨木市にある摂陵(せつりょう)中学・高校が早稲田大学の系属校になったのは2009年のこと。

早大ブランドの関西進出は初めて。
40名の内部進学枠(無試験で早稲田大学へ推薦入学が可能)の確保もあって、設立当時は大きな注目を集めたものだった。

あれから4年―。さぞかし、大阪屈指の名門私立校に成長しているかと思いきや、これが大ハズレ! 大阪市内の学習塾関係者がこう証言する。

「系属校となって初の入試は受験者が殺到すると、誰もが予想していました。ところが、いざフタを開けてみると、高等部の募集人員275名に対して受験者数は43名のみ。しかも、そのうちの36名に合格を出したにもかかわらず、実際に入学した学生はわずかに17名。
中学から上がってきた70名と合わせた計87名でなんとかスタートしたのです」

その後もさえなかった。

「翌2010年度は受験者数こそ236人に増えたものの、合格者数228人で実質倍率はたったの1・04倍。そして、その翌年、翌々年と実質倍率はほぼ横ばいです」(大阪市内の学習塾関係者)

直近の2013年度入試では、受験者こそ413人に増えたものの合格者数は405人と、出願さえすれば入学できる、相変わらずの低空飛行ぶりだ。これでは、とても名門私立校とは呼べない。別の学習塾関係者はこう話す。

「関西の受験生は早稲田というだけで飛びついたりしません、京都大学、大阪大学、神戸大学など国公立大学への志向が強い上に、同じ私学なら、関関同立(関西大学、関西[かんせい]学院大学、同志社大学、立命館大学)を選ぶ傾向が強いんです。
東京で4年間下宿生活をする費用も不要だし、関西の企業は関関同立の出身者が多くを占めているだけに、地元での就活にも有利に働きますからね」

さしもの早稲田ブランドも関西では苦戦中のようだ。

しかも、ここにきて、学校内部のゴタゴタも表面化することに。財政難で教職員の給与がカットされることになり、怒った教職員から大量の退職者が出ているという報道がされたのだ。学費などの収入が伸び悩んだことが原因らしい。


大阪私学教職員組合の担当者は週プレの取材にこう答えた。

「昨年4月、財政難を理由に教職員の給与カットが提示されたことも、例年より中途退職する教職員が多かったことも事実です。
現在、学園側と教職員側が話し合いながら、双方が納得できる着地点を探っているところです。その詳細については交渉中のため、お話しすることができません」

ただ、早稲田摂陵の苦戦は、早稲田ブランドの低迷だけに原因があるわけではないとの指摘も。ある大阪府内の私立高校教員がささやく。

「橋下徹大阪市長のせいもあります。府知事時代に私立高校への助成金を10%もカットしたため、早稲田摂陵だけでなく、府内の私立高校はどこも経営が一気に大変になってしまいました。夏場の教室内のエアコン設定温度を高めにし、光熱費を節約するなどは当たり前、経営難から常勤の教師を採用できず、1年契約の若い教員ばかりを増やしすぎた結果、教育の質の低下が心配される私立高校も少なくありません」

例えば、東京都は私立高校生ひとりに対し、年間34万円の補助金を出している。
ところが、大阪府は補助金をカットした結果、年間27万円のみ。この差額分が減収となり、私立高校の経営を直撃しているのだ。

助成金カットだけではない。全国に先駆けて橋下氏が導入した私立高校の授業料無償化の制度も、経営に痛手を与えているという。

「大阪府では年間58万円までなら、私立高校の授業料は無償となります。ただ、その58万円を超えた分は、生徒ではなく、学校が負担することとされているのです」(大阪府内の私立高校教員)

早稲田摂陵の年間授業料は68万円。
つまり、58万円を超えた分の10万円を学校側が負担しなくてはならないのだ。これでは経営が悪化するのも当然だ。

前出の大阪私学教職員組合の担当者はこう語る。

「橋下市長は、自分が府立の名門・北野高校出身ということもあって、公立高校のレベルアップに熱心です。その表れが3年連続して定員割れした高校は統廃合処分にするという政策。これで公立高校ががむしゃらに生徒集めに走った結果、さらに私立高校の生徒集めは難しくなっているんです」

その橋下市長は早大出身。
系属校の経営不振の原因を早稲田OBがつくっていたとは、なんとも皮肉な話だ。

(取材/ボールルーム)

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