タレントでエッセイストの小島慶子が、世間の気になる話題に独自の視点で斬り込む!
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ラジオで共演するのはテレビとは全然違います。
よく考えたらそんな距離で正対して何時間も会話する相手なんて、いませんよね。それを毎日とか週に1度とか、何十年も続けるのですから、考えようによっては家族や恋人以上の距離感です。
一緒にしゃべっていると、今日は機嫌がいいなとか、なんか意地悪でやだなとか、それこそバイオリズムまで伝わってきちゃう。だから相手のいいところも、いやなところもかなりの深さで感じてしまうのです。
そんなときは進行しながら、しゃべりの面白さでひそかにねじ伏せ合うのがプロの勝負。彼はその工夫をする気力も実力も衰えていたのでしょう。
共演者に言うことを聞かせようと生放送中に暴力を振るうなんて最低のやり方。問題の番組でも、声質、テンポ、存在感など、しゃべり手としての力の差は歴然でした。共演者への嫉妬が根底にあったのかもしれません。
●小島慶子(Kojima Keiko)
タレント、エッセイスト。かつてラジオでメインパーソナリティを務めた経験あり。チームの距離感が近いラジオの制作現場では、出演者同士、およびスタッフと出演者の関係が親密ゆえに、バランスが難しいことも