
9月の中旬といえば、例年10月に発表されるノーベル文学賞に向けて出版業界や読書愛好家界隈がざわついてくる時期である。
「村上春樹は受賞候補に入っているのか。もし入っているのなら受賞の可能性は?」
しかし、今年に限っては事情が違う。
ノーベル文学賞の選考委員の夫で、自らも運営主体のスウェーデン・アカデミーとつながりの深かった写真家・劇作家のジャン・クロード・アルノー氏がアカデミー会員の妻や娘などに行ったセクハラが告発され、前事務局長を含む3人の会員が辞任する大問題となったことは記憶に新しい。その影響で今年はノーベル文学賞の発表は見送りに。2019年に今年の分まで一括して発表されることとなった。
■ノーベル賞の「代わりの賞」の候補に意外な名前がただ、毎年世界的に盛り上がりを見せている同賞。発表がないのは寂しい、と思ったのかどうかは定かではないが、今年限定で新たな文学賞が設立され、その最終候補4人の中に村上春樹氏が名を連ねている。
この賞はスウェーデンのジャーナリスト、アレクサンドラ・パスハリドゥ氏を発起人に同国の文学関係者が立ち上げたNPO「ニュー・アカデミー」が主催するもの。スウェーデンの司書らが作成したリストにある47人の候補者を、全世界3万人以上が参加した投票で村上氏を含む4人に絞り込んだ。
ところで、この賞の大きな特徴は「透明性」である。事実、候補としてノミネートされていた47名の作家の名前はすべて公開されており、ニュー・アカデミーの公式ページ上で見ることができる。これは、選考プロセスが事実上密室になっているノーベル文学賞とは対照的である。