今月15日、“砂の上の祭典”ことFIFAビーチサッカーワールドカップが開幕。合計16チームが世界一の座をかけてアラブ首長国連邦(UAE)のドバイにて熱い戦いを繰り広げる。

 
 当然ながら、日本も世界の頂点を目指して参加する。世界ランク6位につける日本は“王国”ブラジルと共にこれまで全ての大会に出場しており、これが12度目のワールドカップ出場となる。ロシアで開催された前回の2021年大会は初めて決勝まで勝ち上がるも、惜しくも開催国ロシア(ドーピング問題によりロシアサッカー連合で出場)に敗れ準優勝に終わった。
 
 直近では2大会連続でベスト4に入っている日本は、今大会こそ三度目の正直で悲願の優勝を目指す。16日に控えるグループステージ初戦では初出場のコロンビアと対戦し、その後は強豪ベラルーシ、そしてアフリカ王者のセネガルと激突する。
 
 そんなビーチサッカーワールドカップでは“転向組”も少なくない。
11人制サッカーやフットサル経験者が多く、過去には偉大なサッカー選手もプレーしているのだ。今回は砂の上に活躍の場を移した“転向組”たちを紹介しよう。

[写真]=Getty Images
 
■フットサルワールドカップ組

 
 今大会も“別のワールドカップ”の経験者が参戦する。エジプト代表を率いるムスタファ・ロフティ監督と、メキシコ代表のフランシスコ・カティ監督だ。ロフティ監督は元サッカー選手ながらフットサルでも才能を発揮。1996年に初めてエジプトがフットサルワールドカップに出場した際の代表メンバーでもあった。
チームはグループステージで敗退するも、ジーダン監督は初戦のスペイン戦でゴールを記録し、エジプトの記念すべきスコアラーとなった。指導者としては砂上の戦いに挑戦し、母国をビーチサッカーワールドカップ初出場に導いている。
 
 メキシコのフランシスコ・カティ監督も国内リーグでプレーする元サッカー選手だったが、活躍の機会が少なかったこともありビーチサッカーに挑戦。選手として2007年のビーチサッカーワールドカップに出場し決勝でブラジルに敗れるも準優勝に輝いた。さらに2011年、2015年大会も選手として砂上の大舞台に立ったのだが、それだけでは飽き足らずフットサルにも挑戦。選手として2012年のフットサルワールドカップに出場したのだ。
今回は、初めて指導者としてビーチサッカーワールドカップに挑戦する。
 
■歴代のレジェンド

 
 日本に目を向けると、元代表の“レジェンド”であるラモス瑠偉氏が日本ビーチサッカー界の草分けとして1997年の世界選手権に出場し、のちに代表監督を務めてワールドカップでチームにも出場した。そのラモス瑠偉監督の下、ビーチサッカーの国際舞台に立ったのが元日本代表FWの前園真聖だ。2009年のワールドカップに出場し、エルサルバドル戦で2得点するなどグループステージ首位通過に貢献したが、準々決勝でポルトガルの前に惜しくも敗れた。
 
 “サッカーの神様”も砂の上に立っている。元ブラジル代表MFジーコは1994年に鹿島アントラーズでスパイクを抜いだが、ビーチサッカーでは現役を続行。
ビーチサッカーワールドカップの前身となるビーチサッカー世界選手権に出場し、1995年の第1回大会では母国を頂点に導き、自身は得点王と大会MVPを受賞。翌年には大会連覇を果たした。ビーチサッカーの世界大会の歴史はジーコから始まったと言っても過言ではない。
 
 1970~80年代にPSVで活躍したレネとウィリーのファン・デ・ケルクホフ兄弟もビーチサッカーに挑戦した。サッカーのオランダ代表としてFIFAワールドカップアルゼンチン1978に出場し準優勝の立役者となった二人は、ジーコと同じように1995年のビーチサッカー世界選手権に参戦。レネは見事なゴールを決めたが、チームはジーコ擁するブラジルに2-16で敗れるなど、3戦全敗でグループステージで姿を消した。

 
 イタリア代表としてFIFAワールドカップスペイン1982を制した英雄も砂上の戦いに挑戦した。1970~80年代にかけてユヴェントスで活躍したDFクラウディオ・ジェンティーレも1995年のビーチサッカー世界選手権に出場。チームはベスト4まで駒を進めたが、3位決定戦でイングランドに敗れて4位に終わった。
 
■スターが勢ぞろいの2005年大会

 
 FIFA主催として生まれ変わり、記念すべき初開催となった2005年のビーチサッカーワールドカップにはスター選手が数多く参戦した。自国開催で頂点を目指したブラジルでは、FIFAワールドカップアメリカ1994を制した元同国代表FWロマーリオが出場。絶対的な優勝候補だったが、準決勝でポルトガルにPK戦の末に敗れて優勝を逃すことに。
3位決定戦ではロマーリオがハットトリックを達成するなど日本を11-2で退けたが、満足のいく結果とはならなかった。
 
 その大会で頂点に輝いたのがエリック・カントナを擁するフランスだった。サッカー選手時代にはマンチェスター・ユナイテッドで“王様”として活躍したカントナだが、ワールドカップとは無縁のキャリアを送ってきた。FIFAワールドカップアメリカ1994・ヨーロッパ予選最終戦の終了間際に決勝ゴールを許して本大会の出場権を逃すなど、サッカーでは一度も夢の舞台に立つことができなかったのだ。それでも2005年に砂の上でワールドカップに出場したカントナは、準々決勝のスペイン戦でゴールを奪うなど母国の優勝に貢献。記念すべき第1回大会のチャンピオンに輝いた。
 
 そのフランスにベスト8で敗れたスペイン代表には、かつて横浜マリノス(現:横浜F・マリノス)でもプレーしたFWフリオ・サリナスがいた。サッカーのスペイン代表として50キャップ以上を誇り、3度のワールドカップに出場したサリナスは、2005年に42歳にしてビーチサッカーの大舞台に出場したのだ。
 
 同大会ではチェルシーなどで活躍した元ウルグアイ代表MFグスタヴォ・ポジェの姿も見られた。現在ギリシャ代表を率いるポジェは、トッテナムで引退した翌年に砂の上に立つことに。チームは順調にグループステージを突破するも、準々決勝でラモス瑠偉監督率いる日本に敗れてベスト8で散った。
 
このように数々の偉大なスター選手が挑戦してきたビーチサッカーの世界大会。FIFA主催のビーチサッカーワールドカップとなってから12回目を迎える今大会ではどの国が頂点に輝くのか? これまでにないほど実力拮抗の混戦が予想されるビーチサッカーワールドカップに注目したい。

(記事/Footmedia)