ファーストレグは激闘の末に2-2で終了しており、勝てばその時点で決勝進出が決定するという条件でセカンドレグへ突入。試合は立ち上がりからホームチームのペースで進んだが、ドイツ代表GKマヌエル・ノイアーを中心としたバイエルン守備陣の奮闘の前にゴールを奪えない。68分にはカウンターの流れからカナダ代表DFアルフォンソ・デイヴィスが右足で豪快な一撃を沈められ、レアル・マドリードは窮地に陥った。
だが、レアル・マドリードはまたも『サンティアゴ・ベルナベウ』で奇跡を起こしてみせた。88分、ブラジル代表FWヴィニシウス・ジュニオールの放ったミドルシュートはGKの正面へ向かったものの、ノイアーがまさかのファンブル。
試合後、アンチェロッティ監督は「また同じことが起きた。もはやこのクラブではよくあることと言っていい」と率直な思いを口にした。幾度もなくこのような“奇跡”を起こしている背景には、絶え間ない声援を送るファンの姿があることを強調している。
「とてつもない声援で後押ししてくれるファン、素晴らしいスタジアム、信じることをやめない選手たち。皆の力が合わさった、まさに魔法のようなものだ」
「難しい試合で、ビハインドを背負ったときにも、我々には冷静さを失わない強さがあった。そこにはファンの助けがあったことも忘れてはならない。彼らは、私でさえも予想していなかったシーズンを見られるとわかっていたんだ、我々にとって、最もファンタスティックだったのは彼らだ。彼らの姿勢が選手たちにも伝染したんだ」
「今夜ここに来られなかった、あるいはここに来てくれればきっとチームを助けてくれたであろう世界中のファンために、言わなければならないことがある。これが我々の習慣だ。
試合展開にも触れたアンチェロッティ監督は「バイエルンのゴールが決まった後、厳しい場面もあったが、交代選手が入ってすぐ、フレッシュなエネルギーがチームのために役立っていることがわかった」と、交代で入った選手たちの力がピッチに活力をもたらしたと話す。「2点が必要だったマンチェスター・シティ戦と比べられてしまうと、この試合は難しくないと捉える人もいるかもしれない。だが、逆に1点でも決められれば延長戦に持ち込まれていたんだ」と、最後まで気を抜けない時間が続いたと明かしたが、ホセルの同点ゴールが決まった後、アンチェロッティ監督自身は勝利を確信していたようだ。
「我々が1点を取った時点で、絶対に勝ちに行けるし、勝てると思っていた。
また、試合終了間際の劇的な2ゴールで勝利の立役者となったホセルに関しては「レアル・マドリードがどのようなチームなのか、ファンのみんながこの試合をどう考えているのかを、ピッチの上で体現してくれた。今シーズンは出場時間が多かったわけではなかったが、私が必要だと思った時、彼はいつも多くのことをチームにもたらしてくれた。自信を失うこともなく、常にチームのことを考えている選手だ」と称賛。数々のチャンスを生み出すなど攻撃の中心に君臨し、UEFA(欧州サッカー連盟)が選出するPOTM(プレイヤー・オブ・ザ・マッチ)に輝いたヴィニシウスについても、「誰も真似できないようなパフォーマンスで我々にプラスの力をもたらしてくれた。
ラ・リーガでは4試合を残して優勝を決め、CLでも2年ぶりの決勝進出を果たすなど、並のクラブでは真似できないような充実したシーズンを過ごしているレアル・マドリード。だが、アンチェロッティ監督は「多くの困難に見舞われたシーズンだった」と振り返る。その理由を次のような言葉で明かし、多くの選手の躍動があったからこその成功なのだと主張した。
「長期離脱が発表された選手以外にも、常にケガ人がいるような状況だった。ヴィニシウス・ジュニオールだって、ベリンガムだっていなかった時期がある。
なお、これでアンチェロッティ監督は6度目のCL決勝を経験することとなったが、UEFAによるとこれは歴代最多の記録だという。アンチェロッティ監督はミラン時代に3度(2002-03、2004-05、2006-07)、レアル・マドリードを率いても3度(2013-14、2021-22、2023-24)のファイナルを経験。過去5度の決勝において、敗れたのは2004-05シーズンのみ。当時、ミランはリヴァプール相手に前半だけで3点をリードしながら、後半に追いつかれ、PK戦の末に敗れていた。“イスタンブールの奇跡”として語り継がれている一戦だ。この試合以外ではすべて率いたチームを優勝へ導いており、今季はどのような結末を迎えるのかにも注目だ。
2シーズンぶりのCL決勝進出を決めたレアル・マドリードは、6月1日にイングランドの『ウェンブリー・スタジアム』にて、ドルトムント(ドイツ)との決勝戦に臨む。
【ハイライト動画】終盤にホセルが2発!勝負強いレアル・マドリードがCL決勝へ