プレミアリーグ開幕戦で観客からの人種差別発言によって試合が一時中断となる事態が発生した。15日、イギリスメディア『BBC』や同『スカイスポーツ』などが伝えている。


 プレミアリーグ第1節が15日に行われ、リヴァプールとボーンマスが対戦。一時は2点差を追いつかれたものの、4-2でホームのリヴァプールが白星スタートを飾った。

 問題となっているのは前半26分の場面で、ロングスローを入れようとしたボーンマスのアントワーヌ・セメニョが、ピッチサイドにいた車椅子に座ったリヴァプールサポーターから暴言を受けると、そのまますぐにロングスローを投げたセメニョだったが、直後の28分にアンソニー・テイラー主審が試合を止めて両チームの指揮官やキャプテンらに状況を説明する事態となった。

 その後、すぐに試合は再開されたものの、報道によると、47歳の男性が後半開始直前に警察によって連行され、スタジアムから退場させられた後に捜査が行われていることが伝えられている。

 試合後、2得点を挙げたセメニョは自身のインスタグラムで直近で受けた人種差別投稿を共有しながら、「いつになったら終わるんだ…」と投稿したほか、ボーンマスのキャプテンを務めるアダム・スミスは『スカイスポーツ』で「全く受け入れられない。この時代にこんなことが起こるなんて、本当にショックだ。アント(セメニョ)がどのようにしてそれを乗り越えてプレーを続け、あんなゴールを決めたのか理解できない」と語りながら、次のように続けた。

「彼は少し落ち込んでいる。何か対策が必要だ。ひざをついても効果はなかった。僕たちは彼をサポートしているし、きっと大丈夫だと思う。(得点後には)彼に反応して欲しかった。
僕ならすぐにでもそうしただろう。審判に報告してプレーを続けるなんて、彼がどんな人間かを示している。アントはよくやったよ」

 さらに、自身の気持ちについて聞かれたスミスは「怒りの方が強いよ。審判にはすぐに彼を退場させたいと言ったけど、警察が駆けつけて、対応してくれた。リヴァプールの選手たちはアントとチームの他の選手をとてもサポートしてくれたけど、本当に腹が立つよ」と不満を口にした。

「僕たちは長い間このようなことをしてきたけど、誰も理解してくれていない。アントがこんな目に遭わなければならなかったことをただただ残念に思う。国中が見ている中で本当にショックだよ」

 このような事態を受け、FA(イングランドサッカー協会)は「プレミアリーグのリヴァプール対ボーンマス戦中に、観客席の一部から差別行為があったという申し立てが審判員に報告されたことを、とても憂慮している。このような事件は、私たちのフットボールにおいてあってはならないことであり、審判員、各クラブ、関係当局と緊密に連携して、事実関係を明らかにし、適切な措置が講じられるように努めていく」と声明を発表している。

 また、リヴァプールも「プレミアリーグのボーンマス戦中に人種差別的な行為があったという申し立てを認識している。あらゆる形態の人種差別と差別を非難する。社会にもフットボールにもあってはならないことだ。
今夜の疑惑の事件は現在警察の捜査中であり、クラブは捜査に全面的に協力するため、これ以上のコメントはできない」と声明を発表している。

 なお、試合後にはリヴァプールを率いるアルネ・スロット監督もこの問題に言及。「クラブは明確な声明を出した。フットボールでこんなことが起きてはならない。スタジアムで、特にアンフィールドでこんなことがあってはならない。アンフィールドでこんなことが起きてはほしくないから、この件についてはこれからも長く議論していくべきだ。ファンの皆さんは素晴らしく、特にディオゴ(・ジョッタ)への敬意を示して応援してくれていたけど、今回の件でその輝きが少し薄れてしまった」と本拠地で起きた出来事に落胆した様子を見せている。


【ハイライト動画】リヴァプールvsボーンマス

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