一方で、私有地に警告文が掲げられているケースも見受けられる。
罰金ではなく、法律に基づいた「損害賠償」を支払う必要があるかも
駐車場の持ち主は、本当にその額を請求できるものなのか。
「アパートの敷地や駐車場など、私有地での無断駐車は公道と違って道路交通法上の処罰はありません。そのため、『罰金』という形で支払う必要はありませんね」(宮城氏、以下同)
もちろん無断駐車をするつもりはないものの、少しホッとした。「罰金」は国や自治体が法律や条例で定めて初めて発生するため、私人同士では用いられないということだ。しかし、必ずしも金銭を払わなくてよいというわけではないと宮城氏は続ける。
「法律的に無断駐車は不法行為(民法709条)にあたるので、損害賠償を請求することができます。
日本では禁止されている「自力救済」
「日本では、裁判などの司法手続によらず、自己の権利を確保する『自力救済』が禁止されているんです。つまり車両を傷つけてしまうと、刑事罰に問われてしまったり、損害賠償を求められてしまったりする可能性もあるので、注意が必要ですね。仮に無断駐車した車のタイヤの空気を抜いたら、器物損壊罪(刑法261条)にあたる可能性があります」
「食べ放題の店」で食べ残した場合はどうなる?
無断駐車に限らず、飲食店でも追加料金を課す内容の貼り紙を見かけることがある。食べ放題の店で「食べ残した方は5000円をいただきます」といったものだ。これは法的にはどのような扱いになるのか。「食べ放題の店で食べ残しに対し、罰金を取ること自体に法的な問題はありません。大量に残した場合は、他の客に料理を提供する機会を失われてしまった可能性があると判断され、民法709条に該当するかもしれません」
とはいえ、食べ放題の料金に対して、著しく高額な金額の罰金が設定されている場合は問題となり得ることがあるとも付け加える。
逆に、デカ盛り店で見かける「完食したら無料!失敗したら1万円!」といった金額設定には、問題はないのだろうか。
「無料サービスや懸賞金は、景品表示法上の『景品類』に該当します。そのうち、『特定の行為の優劣または正誤によって定める方法』によって、提供される人や金額を決めるものを『懸賞』といいます。最高でも取引価額の20倍(上限10万円)までとされていて、飲食物の代金と懸賞金の合計がこの範囲内に収まっている場合は問題ないと言えるでしょう」
居酒屋やサウナでよく見かけるあの貼り紙は?
また、主に居酒屋のトイレで「嘔吐した場合、清掃費として1万円いただきます」という貼り紙を見かける。「貼り紙自体に客との契約成立を意味する効力はありません。ただ、トラブルを解決する名目で店側とお客が合意するのであれば有効となりえますね」
例えば、紛失した利用者が鍵を交換するスキルを持っていたとする。利用者側で交換した場合、交換費用は徴収されないものなのだろうか。
「自身や知人を通じて自力で鍵を交換した場合でも、そのロッカーが使えなかった分の逸失利益を損害賠償させられる可能性はあります。
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意図せずしてその場のルールを破ってしまった際、罪悪感で言われるがまま支払ってしまいそうにもなる。けれども、“言い値”を鵜呑みにする必要はなく、法律に基づいた裏付けのある金額を財布から出せば良いのだ。こうした正しい知識を持つことが、自分の身を守ることに繋がっていくはず。万が一の時に備えて覚えておきたい。
<取材・文/Mr.tsubaking>
【Mr.tsubaking】
Boogie the マッハモータースのドラマーとして、NHK「大!天才てれびくん」の主題歌を担当し、サエキけんぞうや野宮真貴らのバックバンドも務める。またBS朝日「世界の名画」をはじめ、放送作家としても活動し、Webサイト「世界の美術館」での美術コラムやニュースサイト「TABLO」での珍スポット連載を執筆。