国内で亡くなった外国人の最後の別れをサポート
土葬請負人給料:初任給23万円~(23歳の場合)
この世に生を受けた以上、誰もが避けて通れないが、日常生活でとかくタブー視されがちな「死」。日常的に遺体を扱う葬儀業という仕事も敬遠されやすく人手が不足気味だ。
そんな中、日本国内で逝去した外国人に特化した葬儀サービスを打ち出し、スタッフを集める会社がある。東京・立川に拠点を持つ「燈台舎」だ。同社では、世界各国の宗教に対応し外国人の海外搬送や葬式を行っている。’25年3月某日、埼玉県本庄市の「本庄聖地霊園」で行われたムスリムの土葬研修を覗いてきた。
代表の松木修平氏(44)はこの日、自ら重機に乗って懸命に穴を掘りながら、自社スタッフ2名を前に、仕事の手順や注意点を解説していた。
日本の法律とイスラム教の教えの乖離に悩まされる

そう説明しながら、縦2.5m×横1.5m×深さ1.5mの穴を掘り下げていく。この日は葬儀の予定がなかったが、通常は霊園に併設するシャワー室に移動し、遺体を清めたのちに、同社専用の棺に入れて、遺体を土の中に埋めるという手順だ。

「ご遺族の日本語が流暢でない場合は、役所に代理で埋葬許可証を取りに行ってください。日本では99%以上が火葬なので役所の方が慣れておらず、埋葬用の書類探しに時間を要することも多い。
亡くなるタイミングが読めないのが大変

現在、同社のスタッフは松木氏を入れて4人。この日、研修に参加した女性は、家族の葬儀で燈台舎を利用したことがきっかけで入社したという。仕事上大変な点を聞いた。
「一番は、スケジュールが読めない点です。当然ながら、人が亡くなるタイミングは事前にわかりません。可能な限りご遺族の意向を叶えてあげたいので、連絡を受けた後で急な対応を求められる場面は多くなります。海外とのやりとりも多いので、時差があると連絡を待つために寝不足になってしまうことも……」
現在残るスタッフは女性、何が原動力に?

同社に勤務するスタッフにとっては、何が仕事を続ける原動力になっているのだろう。前出の女性は言う。
「仕事への抵抗感ですか? よく聞かれるんですが、ありません。
その上で、仕事のやりがいについてこう続ける。
「外国の葬送は日本の葬送とは勝手が異なります。その差に戸惑う異国の方を助けられることは純粋に嬉しいです。準備は大変ですが、葬儀を最後までやり遂げた時の達成感や、遺族から感謝される喜びも大きい。例えばご遺体を空輸で母国にお帰しした時、私たちの仕事はそこまででも、後からご遺族が現地の写真や動画をお礼とともにメッセージアプリで送ってくれたりすると嬉しいですね」
外国人労働者の増加に伴い、国内でムスリムの割合は高まっているが、土葬可能な土地は不足している。そんな中で、トータルで土葬をサポートできる業者の需要は、これからさらに高まっていくだろう。
辞めないポイント
①海外の葬式文化が知れる②人の人生を見送った達成感
③異国で困る人の助けになれる
<取材・文/週刊SPA!編集部>
―[珍仕事の[人が辞めない]秘訣]―