現役で東京大学に合格するも…
氷河期世代の試練は社会人になる前から始まっている。1992年、大学受験者数は121万人と史上最多を記録。その後、ゆるやかに下がるも、毎年受験者数70万人超を維持する熾烈な学歴競争社会でもあった。そして優秀な氷河期世代が直面したのがポスドク問題、大学の研究職や教員の非正規増加や低賃金問題だ。
「3人に1人は浪人していた時代ですよね。大学入学当初は、そのなかで自分は勝ち抜いたんだという誇らしい気持ちもありました」
想像もしていなかった厳しい生活
そう語るのは中嶋春樹さん(仮名・43歳)。日本最高峰・東京大学に現役で合格し、卒業後は大学院に進学。念願の研究職に就くも――。「給与は月20万円弱で副業は一切禁止。正直、研究職の生活がここまで厳しいものだとは思っていませんでした。周りを見渡すとうまくいっている人間は実家が裕福な人ばかり。地方出身で一般家庭の自分では研究費の捻出どころか生活の維持すら難しかった」
有期契約だった研究職は2年間で終了。その後は3年ほどライター業で食いつなぎ、研究職への道を模索していた。
バイトに降格で月収9万ダウン

やがて39歳で大学の非常勤講師の仕事が決まるも……。
「副業禁止として正社員からアルバイトに降格。業務は同じなのに給与は手取り25万円から16万円にダウン。非常勤講師の給与を合わせても月収は20万円を切りました」
消費者金融を頼るようになり、借金はいつの間にか100万円近くまで膨らんだ。さらに昨年末、会社の業績悪化で解雇されてしまう。
「今は非常勤講師を月1コマ、町中華店と日雇い労働の3つを掛け持ちしてやっと年収360万。バイト先では高学歴は悪目立ちするし、すべてが裏目に出てる気がしてなりません。土日もほぼ徹夜で働いて、ここ3か月は休日なしですよ。40代になって体にガタも感じているので、働けるうちに働いていないと落ち着かないんです」
外国人から1000円札をむしり取る
「とにかく自分は報われない気持ちが強い」と語る中嶋さん。今では「何かつけ入る隙があれば、誰でもいいからむしり取りたい」というマインドに入ったとか……。「最近も、雨の日の渋谷駅で外国人が自分を巻き込んで転倒したので、英語で『クリーニング代を払え!』と迫ったんです。
みながうらやむ“神童”だった中嶋さん、こんな彼の“未来”を誰が予想できただろう。

※4月15日発売の週刊SPA!特集「[氷河期貧困]の実態」より
―[[氷河期貧困]の実態]―