ときにはケンカの原因になってしまうこともある個々の性格だが、ときにはそれに助けられることもあるかもしれない。今回は、そんなことを考えさせられる体験をしたという植村梨花さん(仮名・当時28歳)に話を聞いた。
自他ともに認める大雑把な性格の梨花さんは、結婚してしばらくすると3歳年上の細かくて用意周到な夫Yさんの性格が鼻につくようになる。子どもを出産したあとは、なおさら。ますます夫にイライラするようになったとか。
用意周到な夫の性格にイライラ
「結婚前は、事前にステキな店やホテルをみつけて予約してくれるなど、大雑把な私にはできない先回りした行動や気遣いに感動したものです。でもそれは彼にとってサプライズでもなんでもなく普通のことで、結婚するとそれは凶器に変わりました」夫のYさんは何事にも細かく、先のことを考えて行動するタイプ。将来のためだと家計簿を付けて、お金の流れをチェック。出産後は、つみたてNISAやiDeCoなどの投資に回すため、ますます節約を意識するよう促されるようになった。
「贅沢がしたいわけではないのですが、割引や半額シールをみつけたら手あたり次第に買ってしまうのが私のクセ。それが唯一の楽しみのようなところもあったので、夫に注意されるとイラっとしてよくケンカになっていました」
GWに「3泊4日旅行」のサプライズ
結婚してから5年。年を重ねるごとに夫との距離を感じるようになっていたときのこと。夫が、「梨花がいつも節約を頑張ってくれているお陰で少し貯金もできたし、今年のGWは旅行しよう」と、旅行をサプライズプレゼントしてくれたのだ。「予想外の出来事で、すごく嬉しかったです。
夫から話を聞いたのは、GWの2週間ほど前のことだった。ホテルにはアメニティもあるし、持ち物は家族3人分の洋服ぐらいだと思っていた梨花さんは、のんびり。旅行の一週間前に夫が黙々と準備をはじめるまで手付かずの状態だった。
「何かあったら」と大量の荷物を準備
「いっしょに準備をすると、またケンカになるかもと思って黙っていたのですが、とにかくどんどん荷物が増えていく。私の想定では大きなボストンバッグ1個とマザーズバッグ1個ぐらいでした。それなのに、大きなボストンバッグ3つがパンパンの状態」夫は「S(息子)は3歳になったばかりだし、何かあったときのため」というが、梨花さんはできるだけ荷物は減らしたい派。子どもの着替えはともかく、オモチャや絵本などもドッサリ。「そんなにいらない」と文句を言ってもきかず、とうとうケンカにも。
「けれど夫は『荷物は自分が持つから』と譲らず、さらに当日の朝には、前々日から凍らせておいたスポーツドリンクや冷却ジェルまくら、冷却ジェルシートに簡易トイレや子どもの好きなおやつ、そして、お気に入りの大きなぬいぐるみまで詰め込んだのです」
突然の高速道路での事故渋滞

「ごもっともだけど、私だってゆっくりしたい。『次のサービスエリアでいい』と、強くトイレを拒否したあと、高速道路で渋滞に巻き込まれたのです。渋滞情報によると、原因は大きな事故で、解消までにはかなり時間がかかりそうな状態。
それでも、これまでこまめにトイレに立ち寄っていたため大人はトイレを我慢できたし、ガソリンにもゆとりがある。ただ、車が動かなくなったことで息子のSくんは不機嫌になり、しばらくすると「トイレに行きたい」とゴネはじめてしまう。
備えの大切さを知り反省
「私が焦っていると、夫が簡易トイレを使うよう指示してきました。夫は使い方も把握していたようで、順を追って説明してくれたのです。トイレが終わると、凍らせたスポーツドリンクを取り出すよう指示してきました。タオルに巻いて渡すと、Sは大喜び」渋滞は解消までに数時間かかったが、大量に持ってきた絵本を読んだり、オモチャでいっしょに遊んだりしたことでSくんもご機嫌のまま。グズったり泣き出したりすることがなかったため、梨花さんもストレスが少なく快適に過ごすことができたとか。
「それは夫が万端に準備してくれたからだと心から感謝し、私も備えられることは事前にきちんとしておこうと反省しました。性格が正反対といってもいいぐらいなので、いっしょに住んでいるとイラっとすることも多く、ついケンカになってしまうこともあります」
それでも梨花さんは、「一進一退ですが、これからは夫の性格も尊敬しつつ歩み寄りたいです」と話してくれた。高速道路の渋滞で歩いてトイレに行くのはNG。子どもがいる場合にはなおさら、簡易トイレや水分補給できるものを備えてほしい。
<TEXT/山内良子>
【山内良子】
フリーライター。