夜職出身女性、引退後の「その後の人生」
売れたら売れるほど延命が可能な夜職だが、短期でスパッと引退を決める人気者も多い。キャリア5年以内、20代前半~30歳を迎える前に潔く業界を去る姿は、歓楽街の住人からすると非常にカッコいいものだ。しかし、業界卒業後の人生は長い。大金を手にし、キャストとしての引き際がキレイであったとしても、今後は“本名での生活”が待っている。「ここからがスタート」であることはたしかで、卒業時が完璧でも源氏名を捨てた後がズタボロなら路頭に迷ってしまうだろう。
早期引退した元キャストの第二の姿は、果たしてどうなっているのだろうか? 今回は3名にインタビューを行ったので、彼女たちの現在をリアルに紹介したいと思う。
ケース①結婚して家庭を持っている
1人目は26歳で授かり婚をし、現在は2人の子どもを育てながらパートに出ているA美さん。夫はそこそこ売り上げに貢献する「元・中太客」で、A美さんからアプローチを始めたそうだ。付き合い始めてからお店へ呼ぶことはなくなり、妊娠発覚後にゴールイン。在籍店には卒業理由を正直に話したという。「毎月ランキングに入るくらいの数字を作っていたから、辞めるのは勇気がいりました。でも、彼のことが好きで水商売を卒業したいと考え始めていたのは事実。
A美さんは夜職を始める前、飲食店の掛け持ちや工場など、あらゆるアルバイトを経験していた。そのため、パートに出たときの時給の安さにはさほど驚かなかったという。思いのほか、あっさりと割り切れたようだ。
たまに夜職時代が懐かしくなるものの、今は夫と子供に囲まれて幸せに暮らしているので、「復帰は絶対にあり得ない」と彼女は語る。
最近は昔の夜職友達が次々と結婚しているそうで、幸せな話を聞くと自分のことのように嬉しくなるらしい。インタビューに応じたA美さんの顔はとてもイキイキしており、筆者も不思議なパワーをもらえた気がした。
ケース②貯めたお金と彼氏のおかげで長~い夏休み
27歳の美女・Y奈さんは昨年に夜職を卒業し、現在はニート生活中。約1年間無職だが、お金にはかなり余裕があるそうで「引きこもりだからお金使わないんですよね」とにこやかに答える。いくら部屋から出ないとはいえ、1人暮らしなら生活費がかかるだろう。その点を追求すると「彼氏に養ってもらっている」とのこと。半同棲状態で、家賃や光熱費、食費はすべて相手持ち。おまけに友達ともほぼ遊ばないらしいので、筆者は貯金が減らない理由を完全に理解した。
傍から見ると羨ましい要素満載でしかないが、Y奈さんは今までの人生が波乱万丈だった。
今のところ夜職を復帰するつもりはなく、今後の予定も特になし。歓楽街が恋しいとも思わないので、もう少しだけ長い夏休みを楽しむ予定だ。
ケース③パパ活からの出戻り計画中

もともと有名歓楽街でキャストをしていたC花さんは、驚きの23歳という若さで夜職を引退した。話によると未成年の頃から地元で飲み屋のアルバイトを始め、トントン拍子で都会に進出。紆余曲折あったが、ずっと売り上げは安定していたそうだ。
きっと、まだまだ現役を続けていても売れっ子でいられただろう。しかし、水商売の効率の悪さに辟易し、さらに「いつかは売れなくなる現実」を非常に恐れてしまった。“旬”がとっくに過ぎたのにも関わらず店に居続けるお局や、あちこちを転々する先輩を見て、早々に手を引くことを選んだのである。
C花さんの潔さには拍手喝采モノだが、悩ましい点はノープランで退職したところ。「貯めたお金で何かやりたいことがあれば」と期待に胸を膨らませていたものの、休職期間中にこれといった発見はなかった。
「いろいろやってみたけど興味が湧くものが一つもなくって。しかも、アレコレ挑戦するとお金もかかるから、貯金も減ってきちゃったんですよね。今は元お客さんからお金を引っ張りながら生活してるので、結果的にパパ活女子になっちゃいました。このままだとヤバイので、一旦夜職に出戻って立て直そうか考えています。ちゃんと期限付きで戻って、30前には絶対卒業したいなぁ」
まだ23歳と若く、可能性に満ち溢れている彼女。たとえ一度目の卒業が失敗しても十分にやり直せる年齢のため、勝手ながら成功を祈るばかりだ。
早期引退は吉か凶か?
早期引退から次のステップへ進めむことができれば、かなり早い段階で人生を充実させることも可能である。夜職という濃い経験を上手に活かすと、私生活の思いがけないシーンで役に立つ場合も多く、年齢よりもはるかに大人びた精神力により、物事が良い方向へ転ぶかもしれない。ただし、人気絶頂のなかで引退すると“夜職マジック”にかかって頭のポヤポヤが抜けず、判断を誤る恐れもある。また、過去の栄光が忘れられない人も少なくはないため、必ずしも早期引退が正しいと言い切れないのが現実だ。
また「やりきってから引退しないともったいない」などの声も多い。高収入こそ夜職の醍醐味なのだから、稼げるうちに稼ぎ切るのも一つの策ではないだろうか。
その後の人生をどう歩むかによって「吉」か、それとも「やめてもったいなかった」となるか、あるいは「やられなければよかった」に繋がることになってしまうか……。いずれにせよ「動き方次第で結末が大きく変わるのだろう」とインタビューを経て筆者は思うのだった。
文/たかなし亜妖
―[元セクシー女優のよもやま話]―
【たかなし亜妖】
元セクシー女優のフリーライター。2016年に女優デビュー後、2018年半ばに引退。ソーシャルゲームのシナリオライターを経て、フリーランスへと独立。WEBコラムから作品レビュー、同人作品やセクシービデオの脚本などあらゆる方面で活躍中。