これまで500人を超えるミリオネアと出会ってきた金泉氏によると、億を稼ぐ人には共通の“稼ぐ力”があるという。その共通点として前回、稼ぐ人の「時間のつくり方」を取り上げたが、今回はつくった時間を“最大限”活用する即断即決の極意について見ていきたい。
(本記事は『億を稼ぐ力 非エリートでもできる習慣と方程式』より一部を抜粋し、再編集したものです)
決断するためのポイントを絞る
「すぐやる」ための即断即決の判断力が必要だと述べましたが、特に、外資系企業で訓練を積んだ人は、その力が顕著なイメージがあります。プライベートの話となりますが、その即決の例を紹介しましょう。
欧州の大手企業に勤めていた夫婦を取材したときの話です。彼らは仕事の都合で日本に帰国することになり、急遽住宅を探す必要に迫られました。そこで、リセールバリューの高そうな東京港区の物件に狙いを定め、オンライン動画が一般的ではない時代にスカイプで内覧し、即決で購入を決めたのです。驚くべきことに、彼らは一度も現地を訪れずに契約しました。
その背景には、時間の制約はもとより、日本とヨーロッパを往復する手間やコストを最小限に抑えたかったという理由があります。彼らは無駄な時間や労力を極端に嫌うため、万が一購入後に後悔したとしても、リセールバリューが高ければ大きな損失にはならないと合理的に判断し、迷うことなく購入を決断したのです。現在、その港区の物件は大きく値上がりしています。
この例は極端に思えるかもしれませんが、稼ぐ人々はそれほどまでに決断が早く、かつ、その決断を裏付ける理由が明解です。
即レスで時間を最大限活用する
決断力という側面から見ると、メールの返信スピードが速いという共通点もあります。彼らは要点を明確にし、余計なやり取りを極力省略、即決するかのごとくメールを返します。現在では、LINEやSlackなどのツールが普及し、さらに簡潔なやり取りが可能になっています。もちろん内容次第ではありますが、「OK」と「NG」の二択で判断するなど、極めてシンプルなコミュニケーションを行うことも可能になってきています。素早いレスポンス=決断は仕事の効率化だけでなく、ビジネスのスピード感を維持する上でも重要なわけです。
だからこそ、彼らは上手に人を使い、自らは二択だけでコミュニケーションが取れる状態をつくり上げようとします。ある程度の裁量は他人に任せつつも、自らが判断をしなければならない状況の際には、相手に二択になるような、メリット・デメリットを整理した質問をするように促します。もちろん、二択になるような質問を考案できる人は限られてくるのですが、逆にいえば、それができるような人は信頼して、仕事を任せる傾向があるようです。

知識・経験の集積が最適な即決につながる

決断の早さは、単なるセンスではなく、知識と経験によっても培われます。優れた経営者が速やかに意思決定できるのは、何も特別な〝勘〟のようなものが備わっているからではありません。業界のトレンドや歴史を熟知しているためです。こうした知識・経験の集積が、短時間での最適な選択につながるのです。
また、こうした決断の早い人たちは基本的に、交渉では強気の姿勢を取ることが多いです。強気といっても相手にデメリットを与えるような威圧的な強気ではなく、自らが参画すれば成功するという自信による強気。彼らは未来の展開を予測しているため、自分たちが勝てるポイント、自分たちがやれることとやれないことの線引きを把握しているがゆえの強気です。
【金泉俊輔】
編集者。1972年生まれ。立教大学経済学部卒業後、扶桑社入社。書店取次営業などを経て、総合週刊誌編集へ。IT、投資、事件、サブカルチャーなどを担当。