ニュースなどで頻繁に取り上げられる「あおり運転」。被害者の精神的苦痛は深刻であり、トラウマにもなりかねない。
自動車損害保険を扱うチューリッヒ保険は『2024年あおり運転実態調査』を実施。あおり運転をされたことがあるドライバーは72.5%であった。昨年の53.5%よりも大幅に上昇し、この半年間でも24.1%と多くのドライバーがあおり運転に遭遇していることがわかった。
今回は、ツーリング旅行中にあおり運転に遭遇し、怖い思いをした新庄隆一さん(仮名・27歳)のエピソードを紹介する。
夏休みにツーリング旅行を計画
都内にある食品メーカーで営業を担当する新庄さんは、夏休みに3泊4日で東北方面のツーリングを計画。途中で温泉宿に泊まりながら、宮城県付近を巡るツーリングを楽しんだ。「20歳で中型免許を取って、これまで3台ほどバイクを乗り継いできました。まとまった休みがある時は、友人たちとスケジュールをあわせて地方にツーリングへ出かけるのが趣味です。特に東北方面の道は信号も車も少ないので、バイクでツーリングするには最適のエリアになっています」
山道で「数キロ煽られるような状態」
これまでも、ツーリングを何度も実行しているが、今年の夏は友人と2人で東京から太平洋沿いを巡って宮城県に入り、新潟に抜けて東京へ戻るルートでツーリングを楽しんだそうだ。ただ、その道中で非常識な車に遭遇し、あわや事故を起こしそうな体験をしてしまったとか。「宮城県から山形県に抜ける際に、山道をツーリングしていたんです。
信号で停車したタイミングでついに観念
あおり運転が社会問題になっているなかで、堂々と新庄さんたちを煽り続けた赤い車。しかも、何を血迷ったのか、危険な追い抜きまで仕掛けてきたのです。「危ないと思い後ろを確認すると、運転席にいたのは普通っぽい若い女性。正直言えばあおり運転をするようなガラの悪い輩ではなかった。めんどうくさいなと思いながらも、路肩に止めて抜かせることもできない山道なので、そのまま走行していたんです。そうしたら、何を血迷ったのか急に追い抜きをかけてきた。われわれのバイクと前の車には、1台分もスペースがないのに、強引に割り込んできたんです。車を運転する人の中には、バイクを軽視するような行動をする人が多いですが、あまりに危険すぎる運転でヒヤリとしました」
急ブレーキをしたことで車列からは離れるも、友人があおり運転のドライバーを追跡してくれた。
「友人はYouTubeで動画配信をしているので、ヘルメットにカメラを装着していた。
「邪魔だから追い抜いた」とはいうものの…
あおり運転に関しては、直ぐに警察に通報することが鉄則。その女性には新庄さんが聞き取りして、友人が警察に電話をしたそうですが意外な展開が待っていたとか。「その女性は、急いでいて邪魔だから追い抜いたと言うんです。でも、抜いたからといって前に車は何台もいるし、何の意味もないだろうと問いかけると、急に泣き出したあげくヒステリックに怒鳴り散らして埒が明かない状態に。相手にできないので、警察が来るのを待って仲介してもらいました」
「普通っぽい若い女性」がなぜ?
新庄さんたちはあおり運転や危険な追い抜きを説明し、動画があるので提出もできると警察に話しました。警察も、女性が加害者の可能性があると考えたようで、聞き込みをした結果、真相が判明する。「女性があおり運転や危険な追い抜きをしたのは、自分は夏休みもなく子どもの世話をしているのに、バイクで遊んでいるわれわれが気にくわなかったという理由で……。ただ、危険な目に合わせるつもりはなく、ついカッとして煽りや追い抜きをしたというのです。警察官も呆れて、訴えるなら調書を作るとアドバイスしてくれました。ただ、日程的にもこんなおかしなドライバーにかまっている時間も無く、とりあえず本人が反省しているのなら、裁判を起こすつもりはないと説明。
あおり運転の犯人を警察に突き出すことに成功したとはいえ、スケジュールは大幅に狂い散々な目にあった。こういったトラブルは誰にでも起きる可能性が高く、バイクを運転する人は注意したほうが良いと説明してくれた。
「地方では、ツーリングで他のエリアからライダーが来るので、邪魔だと苦々しく思っている現地住民が多い。ツーリングに関しては、都心部よりも危険な運転をしてくる人がいると思っていたほうが身のためです」
最近では中高年のリターンライダーも増え、ツーリングをする人が多いだけにトラブルもドンドン増えていきそうだ。
<TEXT/高橋マナブ>
【高橋マナブ】
1979年生まれ。雑誌編集者→IT企業でニュースサイトの立ち上げ→民放テレビ局で番組制作と様々なエンタメ業界を渡り歩く。その後、フリーとなりエンタメ関連の記事執筆、映像編集など行っている